年末年始は救急外来に患者さんが集中
冬場は積雪や路面凍結による転倒、特に年始は餅をのどに詰まらせるなどのニュースをよく目にします。12月と1月は、ほかの月に比べて事故や病気は多いのでしょうか。
東京消防庁によると、都内の2021年の月別救急出動件数は12月が7万462人で3番目、1月が5万9466人で6番目となっており、例年事故や疾患が多い時季といえる傾向にあります。
「特に年末年始は一般診療が休みになる医療機関がほとんどなので、急病やけがなどで受診できる救命救急センターなどの救急外来に患者さんが集中し、混雑や搬送遅れの可能性も高まります。
さらに、救急外来では緊急度の高い患者さんから優先的に診療が行われます。救急車で搬送されたからといって、すぐに治療をしてもらえない可能性もあります」(山口先生)
“万が一”の状況に陥らないためにも、一人ひとりが年末年始に起こりやすいけがや病気を知り、予防を心がける必要があります。
東京消防庁によると、都内の2021年の月別救急出動件数は12月が7万462人で3番目、1月が5万9466人で6番目となっており、例年事故や疾患が多い時季といえる傾向にあります。
「特に年末年始は一般診療が休みになる医療機関がほとんどなので、急病やけがなどで受診できる救命救急センターなどの救急外来に患者さんが集中し、混雑や搬送遅れの可能性も高まります。
さらに、救急外来では緊急度の高い患者さんから優先的に診療が行われます。救急車で搬送されたからといって、すぐに治療をしてもらえない可能性もあります」(山口先生)
“万が一”の状況に陥らないためにも、一人ひとりが年末年始に起こりやすいけがや病気を知り、予防を心がける必要があります。
年末年始に注意したい事故や病気
実際に年末年始に増加がみられ、注意が必要な病気やけがにはどのようなものがあるのか、教えてもらいました。
年末年始、特に正月三が日を中心に餅をのどに詰まらせたことによる窒息死が多発しています。高齢者特有の事故と思われがちですが、15~64歳でも死亡事例があり油断できません。
「餅の硬さと付着しやすさは温度による影響を受けます。温度が高いほど軟らかくなる傾向がみられ、器から口に入った直後の50〜60℃では軟らかく、伸びやすい(付着性が小さい)のですが、餅の温度が外気温や体温などで40℃程度に低下すると硬くなり、付着性も増加します。
この状態が喉に張り付きやすい状態といえ、窒息の大きな要因になります(平成19年度 厚生労働科学研究 食品による窒息の現状把握と原因分析研究)。
また加齢に伴い、嚥下(えんげ)機能や食べ物への集中力の低下に影響を与えることもあります。さらに服用している薬が嚥下機能や注意力の低下に影響を与えることもあります。
餅を食べる時は食べやすい大きさに小さく切って、お茶や汁物と一緒に飲むなどしてのどを潤(うるお)してから、ゆっくりとよく噛んで飲み込むようにしましょう。特にかむ力や飲み込む力が弱い高齢者が餅を食べる際には、まわりの人も注意を払って見守るようにしてください。
また、小児、乳幼児における窒息事故も年末年始に注意が必要です。餅だけでなく、ピーナッツやこんにゃくゼリーといった食べ物のほか、おもちゃなどの詰まらせにも気をつけましょう。高齢者では、薬の包み紙、義歯の詰まらせにも注意してください」(山口先生)
「冬場は家の中でも冷え込みや温度差が生じやすく、入浴時のヒートショックによって脳卒中を起こして意識を失ったことなどが原因の、溺水(できすい)事故が起こりやすい時季です。
厚生労働省の調べでは、2019年に起きた高齢者の入浴中の溺死事故は1月が937人と最も多く、12月の737人が次いでいます。入浴中の急死は心疾患や脳血管障害など、溺水以外が死因と判断される場合もあり、実際に発生した入浴時の事故はさらに多いと推定されます。
寒い時季は食後すぐや飲酒後、医薬品を服用した後の入浴は控えましょう。また、入浴前に脱衣所や浴室を暖めておくなどの対策も忘れずに。特に高齢者の方は入浴する前に同居者にひと声掛けておくことも大切です。同居者側も入浴中は動向に注意を払ってください」(山口先生)
「年末は大掃除を行う人も多いと思います。脚立からの転落や、拭き掃除で濡れて滑りやすくなっている床などでの転倒に注意することが必要です。
また、レンジフードなどの狭い箇所に潜り込んだり、重い荷物を上げ下げしたりなど、ふだんの掃除と違った動きを強いられることも多いので、ぎっくり腰に注意してください」(山口先生)
「部屋を閉め切りがちな冬場は、不十分な換気の中でのガス機器や石油機器などの多用による一酸化炭素中毒への注意も必要です。
一酸化炭素中毒は身近な環境で発生しやすく、多くの人を巻き込む重大災害になる可能性もあります。同じ部屋で気分が悪いという人が出たらほかの人の様子も確認し、処置が遅れないうちに病院へ行き、医師の診断を受けてください。
予防のためには、日頃から換気に注意して、各種機器の点検もしっかり行いましょう。
近年は冬場でもキャンプが人気になっていますが、外の寒さを避けたテント内でのカセットコンロの使用も要注意です。また、エンジンをかけたままの車内で、積雪により排気口などが塞がれてしまい、排気ガスが車内に流入して一酸化炭素中毒を引き起こす事例もあります。
住宅火災の予防も重要です。各種機器の点検に加えて、寝たばこは絶対にしない、させない。ストーブの周りに燃えやすいものを置かない。コンロを使うときは火のそばを離れない。コンセントはほこりを清掃し、不必要なプラグは抜く。この4つの点を習慣づけるようにしましょう」(山口先生)
「年末年始は忘年会や新年会に加えて休みの日が増えることから、つい暴飲暴食をしがちです。酒の一気飲みや飲み過ぎは急性アルコール中毒を招くほか、飲酒や酩酊(めいてい)による転倒・転落や溺水、寒い地域での凍死に加え、吐しゃ物の吸引による窒息死の危険もあります。
急性アルコール中毒に明確な基準はありませんが、血中アルコール濃度が0.02~0.1%程度は『ほろ酔い』と呼ばれるリラックス状態です。0.3%を超えると泥酔期と呼ばれるもうろう状態になり、0.4%を超えると昏睡期という生命に危険を生じさせる可能性がある状態になります。
東京消防庁によると、急性アルコール中毒による搬送者数は年々増加傾向にあり、毎年1万人以上が救急搬送されています。
若年者・女性・高齢者・赤型体質(飲酒後に顔の赤くなるタイプ)の人は、一般的にアルコールの分解が遅いため、急性アルコール中毒のリスクが高まります。忘年会などでお酒を飲む機会が増える時季ですが、くれぐれも飲み過ぎは控えましょう。
また、アルコール多飲に伴う低血糖やアルコール性ケトアシドーシス、暴飲暴食による高血糖によって引き起こされる、高浸透圧性高血糖状態や、糖尿病性ケトアシドーシスという状態は緊急治療を要する意識障害を引き起こすこともあります。特に糖尿病の患者さんにおいては、普段はしっかり血糖値を管理していても、年末年始は緩みがちになりますので、くれぐれも注意しましょう。
さらに、暴飲暴食と運動不足によって起きる疾患には『イレウス(腸閉塞)』というものもあります。イレウスは飲食物と消化液の流れが小腸や大腸で詰まった状態で、吐き気やおう吐、腹痛や便秘などを発症します。
消化の悪い食材の摂取も原因とされるので、年内に内臓の手術を受けたり不調を感じたりしている人は、暴飲暴食はもちろん、消化の悪い食材も食べるのを避けたほうが無難です」(山口先生)
年末年始はふだんとは違う行動や食生活になりがちです。使用している機器類の点検をするなど、事故や急病に対処できるように気をつけて、楽しく年末年始を過ごしましょう。
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▼餅がのどに詰まる
年末年始、特に正月三が日を中心に餅をのどに詰まらせたことによる窒息死が多発しています。高齢者特有の事故と思われがちですが、15~64歳でも死亡事例があり油断できません。
「餅の硬さと付着しやすさは温度による影響を受けます。温度が高いほど軟らかくなる傾向がみられ、器から口に入った直後の50〜60℃では軟らかく、伸びやすい(付着性が小さい)のですが、餅の温度が外気温や体温などで40℃程度に低下すると硬くなり、付着性も増加します。
この状態が喉に張り付きやすい状態といえ、窒息の大きな要因になります(平成19年度 厚生労働科学研究 食品による窒息の現状把握と原因分析研究)。
また加齢に伴い、嚥下(えんげ)機能や食べ物への集中力の低下に影響を与えることもあります。さらに服用している薬が嚥下機能や注意力の低下に影響を与えることもあります。
餅を食べる時は食べやすい大きさに小さく切って、お茶や汁物と一緒に飲むなどしてのどを潤(うるお)してから、ゆっくりとよく噛んで飲み込むようにしましょう。特にかむ力や飲み込む力が弱い高齢者が餅を食べる際には、まわりの人も注意を払って見守るようにしてください。
また、小児、乳幼児における窒息事故も年末年始に注意が必要です。餅だけでなく、ピーナッツやこんにゃくゼリーといった食べ物のほか、おもちゃなどの詰まらせにも気をつけましょう。高齢者では、薬の包み紙、義歯の詰まらせにも注意してください」(山口先生)
▼ヒートショック
「冬場は家の中でも冷え込みや温度差が生じやすく、入浴時のヒートショックによって脳卒中を起こして意識を失ったことなどが原因の、溺水(できすい)事故が起こりやすい時季です。
厚生労働省の調べでは、2019年に起きた高齢者の入浴中の溺死事故は1月が937人と最も多く、12月の737人が次いでいます。入浴中の急死は心疾患や脳血管障害など、溺水以外が死因と判断される場合もあり、実際に発生した入浴時の事故はさらに多いと推定されます。
寒い時季は食後すぐや飲酒後、医薬品を服用した後の入浴は控えましょう。また、入浴前に脱衣所や浴室を暖めておくなどの対策も忘れずに。特に高齢者の方は入浴する前に同居者にひと声掛けておくことも大切です。同居者側も入浴中は動向に注意を払ってください」(山口先生)
▼大掃除などによる転倒や転落、ぎっくり腰
「年末は大掃除を行う人も多いと思います。脚立からの転落や、拭き掃除で濡れて滑りやすくなっている床などでの転倒に注意することが必要です。
また、レンジフードなどの狭い箇所に潜り込んだり、重い荷物を上げ下げしたりなど、ふだんの掃除と違った動きを強いられることも多いので、ぎっくり腰に注意してください」(山口先生)
▼一酸化炭素中毒や住宅火災
「部屋を閉め切りがちな冬場は、不十分な換気の中でのガス機器や石油機器などの多用による一酸化炭素中毒への注意も必要です。
一酸化炭素中毒は身近な環境で発生しやすく、多くの人を巻き込む重大災害になる可能性もあります。同じ部屋で気分が悪いという人が出たらほかの人の様子も確認し、処置が遅れないうちに病院へ行き、医師の診断を受けてください。
予防のためには、日頃から換気に注意して、各種機器の点検もしっかり行いましょう。
近年は冬場でもキャンプが人気になっていますが、外の寒さを避けたテント内でのカセットコンロの使用も要注意です。また、エンジンをかけたままの車内で、積雪により排気口などが塞がれてしまい、排気ガスが車内に流入して一酸化炭素中毒を引き起こす事例もあります。
住宅火災の予防も重要です。各種機器の点検に加えて、寝たばこは絶対にしない、させない。ストーブの周りに燃えやすいものを置かない。コンロを使うときは火のそばを離れない。コンセントはほこりを清掃し、不必要なプラグは抜く。この4つの点を習慣づけるようにしましょう」(山口先生)
▼暴飲暴食による事故や病気
「年末年始は忘年会や新年会に加えて休みの日が増えることから、つい暴飲暴食をしがちです。酒の一気飲みや飲み過ぎは急性アルコール中毒を招くほか、飲酒や酩酊(めいてい)による転倒・転落や溺水、寒い地域での凍死に加え、吐しゃ物の吸引による窒息死の危険もあります。
急性アルコール中毒に明確な基準はありませんが、血中アルコール濃度が0.02~0.1%程度は『ほろ酔い』と呼ばれるリラックス状態です。0.3%を超えると泥酔期と呼ばれるもうろう状態になり、0.4%を超えると昏睡期という生命に危険を生じさせる可能性がある状態になります。
東京消防庁によると、急性アルコール中毒による搬送者数は年々増加傾向にあり、毎年1万人以上が救急搬送されています。
若年者・女性・高齢者・赤型体質(飲酒後に顔の赤くなるタイプ)の人は、一般的にアルコールの分解が遅いため、急性アルコール中毒のリスクが高まります。忘年会などでお酒を飲む機会が増える時季ですが、くれぐれも飲み過ぎは控えましょう。
また、アルコール多飲に伴う低血糖やアルコール性ケトアシドーシス、暴飲暴食による高血糖によって引き起こされる、高浸透圧性高血糖状態や、糖尿病性ケトアシドーシスという状態は緊急治療を要する意識障害を引き起こすこともあります。特に糖尿病の患者さんにおいては、普段はしっかり血糖値を管理していても、年末年始は緩みがちになりますので、くれぐれも注意しましょう。
さらに、暴飲暴食と運動不足によって起きる疾患には『イレウス(腸閉塞)』というものもあります。イレウスは飲食物と消化液の流れが小腸や大腸で詰まった状態で、吐き気やおう吐、腹痛や便秘などを発症します。
消化の悪い食材の摂取も原因とされるので、年内に内臓の手術を受けたり不調を感じたりしている人は、暴飲暴食はもちろん、消化の悪い食材も食べるのを避けたほうが無難です」(山口先生)
年末年始はふだんとは違う行動や食生活になりがちです。使用している機器類の点検をするなど、事故や急病に対処できるように気をつけて、楽しく年末年始を過ごしましょう。
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