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記録的な大雨 年間降水量の50%超の所も なぜ降り続いた?

2021/08/20 11:34 ウェザーニュース

8月11日(水)頃から、秋雨前線等の影響で西日本を中心に記録的な大雨となっています。

佐賀県嬉野市では、平年1年分の降水量の50%以上が8日たらずで降るなど、所により2018年の「西日本豪雨」を上回る記録となっています。

まだ一連の大雨は収束していませんが、今回の豪雨の発生要因を速報的に検証し、その特徴を西日本豪雨と比較しました。
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特別警報の発表地域を中心に、浸水や土砂災害等が発生

土砂災害、浸水・氾濫、道路冠水のユーザー報告
8月11日(水)から18日(水)までの8日間雨量は、九州と四国の計10地点で1000mmを超えました。このうち佐賀県嬉野市のアメダス嬉野では期間降水量が1178.5mmとなり、嬉野の平年の年間降水量の50%を超えました。この大雨で、13日(金)から15日(日)にかけて、広島、福岡、長崎、佐賀の一部に大雨特別警報が発表されました。

ウェザーニュースのスマートフォンアプリユーザーに対して行った調査では、特別警報の発表されていた地域ではもちろん、それ以外の地域からも土砂災害や浸水・氾濫、道路冠水の報告が相次ぎました。被害の報告が集中している地域は、人口の多いところだけでなく地形的な特徴もみられます。南西からの風の流れの影響を受けやすい地域で被害が相次いでいると言えそうです。
(調査期間:2021年8月11日〜18日/回答数:10,883人/質問項目:被害なし、土砂災害、道路冠水、浸水・河川氾濫)

大雨の要因は「前線の停滞」と「2つの暖湿流の合流」

豪雨発生要因のイメージ
雨の長期化をもたらした要因は、前線が1週間以上も本州付近に停滞したことです。日本の北東側に冷涼なオホーツク海高気圧が形成されたことで、南側の温暖な太平洋高気圧との間で勢力が拮抗し、秋雨前線が停滞し続けたと考えられます。

また、前線の活動が活発になった要因は、中国大陸方面からとフィリピン海方面からの2つの暖かく湿った空気の流れ(暖湿流)が東シナ海で合流し、多量の水蒸気が流れ込み続けたからだと考えられます。継続的な大量の水蒸気の供給は、次々に雨雲を発達させる非常に危険な状況を作り出しました。

2018年西日本豪雨と比較 総雨量は匹敵も短時間の猛烈な雨は低頻度

2018年の西日本豪雨との比較
今回の一連の大雨と、記憶に新しい2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)とを比較します。今回の大雨は18日(水)までの8日間の集計、西日本豪雨は11日間の集計です。

期間総雨量が1000mmを超えた地点数は、西日本豪雨が15地点に対し、今回は10地点でした。甚大な被害が出た西日本豪雨に迫るほどの総雨量であったといえます。

一方、1時間に80mm以上の猛烈な強さの雨を観測した地点数は、西日本豪雨の15地点に対し、今回は4地点にとどまりました。短時間での強い雨は、西日本豪雨の時よりも大幅に低頻度であったといえます。

ウェザーニュース予報センターによる速報的な解析では、日本に流れ込んだ雨のもととなる水蒸気の量は非常に多かったものの、その水蒸気を送り込む風が弱かった分だけ、雨雲の発達が抑えられた可能性があるとみています。

今回の大雨では土砂災害や河川の氾濫が広範囲で発生したことは西日本豪雨と変わらないものの、短時間の猛烈な雨が限定的だったことで急速な災害リスク上昇が抑えられたことや、入念な事前避難の呼びかけ等が被害の拡大を防いだ可能性があります。

前線の活動は低下へ 湿った空気と上空の寒気で大気は不安定

停滞する前線による大雨はピークを越えつつありますが、週末にかけては暖かく湿った空気や上空の寒気の影響で大気の状態が非常に不安定となり、局地的に非常に激しい雨の降るおそれがあります。関東から九州にかけての地域では、大雨による土砂災害や洪水、浸水、落雷等に警戒してください。
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