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予報精度90% ウェザーニュースの天気予報を気象予報士が解説

2020/06/17 16:42 ウェザーニュース

皆さんは天気予報にどんな印象をお持ちでしょうか?

あまり当たらないという印象を持っている方は、いつも見ている天気予報のデータをどの会社が提供しているものなのか、気にしてみるといいかもしれません。

実は、テレビやインターネットを通して提供される天気予報は、1995年に実施された「天気予報の自由化」以降、同じ時間・同じ地点の予報であっても、予報を出す会社によって天気マークは異なります。

そして我々ウェザーニュースでは、精度の高い、つまりよく当たる天気予報を提供することを使命と考え、日々予報精度の改善に取り組んできました。

では、ウェザーニュースの予報はどれくらい当たるのか。2018年の精度実績を、ウェザーニュース予報精度改善チームの気象予報士 宇野沢が解説します。

ウェザーニュースの天気予報
2018年の予報精度は90%

ウェザーニュース月別予報精度評価(2018年)
2018年は、1月の東京大雪や7月の西日本豪雨、9月の台風など、気象が私達の暮らしに大きな影響を及ぼした1年でしたが、2018年1月〜12月までのウェザーニュースの予報精度は、90%となりました。
>>ウェザーニュース-2018年降水捕捉率

ここで言う予報精度とは、気象庁の評価方法に準拠した「降水捕捉率」を指しており、実際に雨が降った時に、予報が「降水あり」だった場合を当たり、「降水なし」だった場合をハズレとしています。

そして対象となる予報は、多くの人が朝の予報でその日の生活をイメージすることや、天気予報のアクセスが最も増加する時間であることから、朝7時の当日の予報としています。

ウェザーニュースでは、発表した予報に対する精度評価を毎日行っており、その結果をもとに日々予報ロジックの改善を行っています。そして最終的に1年を通した結果を集計し、翌年はそれを上回る精度を実現すべく、400人を超える予報センターのスタッフが日夜業務に取り組んでいます。

また、気象庁も同様に、発表した予報に対して評価を行っており、ホームページ上で一般に公開しています。
>>気象庁-2018年降水捕捉率

高精度な予報を支える3つのポイント

ウェザーニュースが高精度な予報を提供出来る理由として、下記の3つのポイントが挙げられます。

1.日本中を網羅する観測ネットワーク
2.複数の予測モデルを用いた予測手法
3.1km四方ごと 超高密度な天気予報

1.日本中を網羅する観測ネットワーク


予報精度を向上させるには "今"を正しく知ることが重要です。

日本には全国に張り巡らされた観測機網があり、その代表的なものが気象庁のアメダスです。約1,300台が17km四方の間隔で設置されていますが、小さな雨雲が降らせる局地的雷雨や、霧雨など非常に弱い雨は捉えることができません。

つまり、実際にそこに居る人の上に雨が降っていても、雨は降っていないとなることがあるのです。

ウェザーニュースではそのような状況を打破するため、2つの大きな取り組みを行ってきました。

それは「ウェザーリポート」と「独自観測網の構築」です。

【ウェザーリポート】
ウェザーリポートとは、全国にいる多くのウェザーニュース会員の方(ウェザーリポーター)に、ご自身のエリアの天気や現地の写真をリアルタイムに共有して頂く取り組みで、2005年11月に開始しました。
ウェザーリポーターから届いた天気の報告(2018年10月11日)

2018年は1,200万通を超える天気の報告が寄せられ、そのデータをマップ上にプロットすることで、気象庁が展開している従来の観測機の空白域も含めて、現地の情報をリアルタイムに把握することが出来るのです。

【独自観測網の構築】

ウェザーリポートは現地にいる人による取り組みのため、人口が少ないエリアや夜間は情報量が少なく、実況把握が難しいことがあります。ウェザーニュースでは、それを補うために、全国3,000ヶ所に設置した独自観測機「ソラテナ」をはじめ、ライブカメラや雨雲レーダーなど、合わせて1万3000地点の独自観測網を構築しています。

このウェザーリポートと独自の観測機によるオリジナル観測網によって、ウェザーニュースでは日本各地の“今”を正確に把握することが出来るのです。


2.複数の予測モデルを用いた予測手法



現在の天気予報は、気象予測モデル(数値予報モデル)と呼ばれる、コンピューターによるシミュレーションの結果をもとに行っています。

この予報のベースとなる気象予測モデルは、日本の気象庁を始め世界の気象機関が独自に持っていることから複数存在しており、モデルごとに観測データや地形データのほか、計算処理の仕方が異なるため、出力される天気のシミュレーション結果にも違いが出ます。

ウェザーニュースでは、各機関の気象予測モデルの計算に加え、独自の気象予測モデルの計算結果も取り入れた上で、その時々の状況から各モデルのシミュレーション結果をそれぞれ評価し、より最適化したものを最終的に予報のベースとして使用しています。

3.1km四方ごと 高解像度な天気予報

20km四方⇒1km四方の予報の密度変化
ウェザーニュースが提供する全国の予報地点数は、2017年に従来の約20km四方(約1,000地点)の予報から1km四方の予報に変更したことで、陸上で約37万地点に上ります。

従来の400倍もの高解像度の予報が可能になったのは、ウェザーリポートや1万3,000地点の観測結果はもちろん、ユーザーに配布した3万5000台の超小型観測機のデータなど、ウェザーニュースが持つあらゆる気象観測データを取り込んで構築した、新たな気象予測モデルによるものです。

更に、この高解像度の気象予測モデルは、ウェザーリポーターから頂く天気のフィードバックを取り込むことで常に進化を続けています。

このため、夏場に増加するゲリラ豪雨などの局地的な現象も、より正確に予報に反映することが出来るのです。

AIテクノロジーを駆使して高精度な予報を

ここまでは2018年の予報精度90%を実現したウェザーニュースの独自技術を紹介してきましたが、2019年現在も更なる予報精度向上に向けて、新たなチャレンジを進めています。

その一つが、AI(人工知能)の活用です。独自のAI技術を天気予報に導入することで、これまでの気象予測モデルで上手く表現されなかった地形効果による雲の発達や衰弱、速度変化なども正確に予想が出来るようになってきています。

今以上に“当たる”天気予報の実現を目指して、多くのウェザーリポーターの皆さんと一緒に、様々なチャレンジをしていきたいと思います。

>>【予報精度向上への取り組み】予報のはずれを感じたらこちらへ報告

【宇野沢 達也】
ウェザーニュース予報センター 気象予報士。千葉県旭市出身 自治体防災担当職員から転職し入社26年目。予報精度改善チームで予報業務および精度検証・改善を行っている。