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「日本人初」宇宙飛行士の秋山豊寛さんが語る! 宇宙特派員活動から帰還まで

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2017/12/17 10:09 ウェザーニュース

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>>初めて宇宙から見た地球


12月17日、日本人12人目の宇宙飛行士、金井宣茂さんがロシアのバイコヌール宇宙基地から国際宇宙ステーションに向かいます。27年前、日本人初の宇宙飛行士として同じバイコヌールから宇宙に飛び立った秋山豊寛さんに宇宙特派員としての活動や、地球帰還の様子を伺いました。

6匹のカエル観察に手こずる

−−宇宙ステーション(ミール)ではどのような活動をしたのですか?

「一番大きな仕事は、宇宙特派員として実況中継です。宇宙滞在190時間のうちテレビ・ラジオの生中継が37時間。ミールでは同乗のソ連の宇宙飛行士4人がカメラ撮影などで協力してくれました」

「他にも子ども向けに扇子を扇いで宙に浮いた身体を進ませたり、水滴をパクリとやったり。手こずったのが、6匹のカエルが無重力でどう反応するかの観察です。無重力での作業は地上での作業に比べ、作業能力は70%くらい。使った道具は使用後に必ず固定する必要がありました」

「カエルたちは跳ぶと体がクルクル回転して、戸惑っているようでした。観察バッグ内に放ったカエルたちを帰還用のコンテナに収納するのに2時間もかかってしまいました」

燃えながら降りてくる帰還カプセル

−−ソ連の帰還カプセルは燃えながら猛スピードで降下するそうですが……。

「スペースシャトルは耐熱タイルで大気圏への突入の高熱に耐えますが、ソユーズの帰還カプセルは様々な素材を組み合わせて32層のシールドに覆われ、大気圏に突入すると表面は2500〜3000℃になり、その32層が薄皮が剥がれるように燃えながら熱を奪い、内部に熱が伝わらないようにする仕組みになっています」

「窓から外を見ると火花がバチバチ飛び、火の粉がササーッと流れていました。無事に生還できましたが、『俺はまだ墓を買っていないんだな』という思いが頭をかすめたことを思い出します」

帰還第一声は「地球の空気は美味しい」

−−帰還したとき、リポーターの質問に「酒が飲みたい、タバコが吸いたい」と答えていましたが……。

「パラシュートで降下する帰還カプセルは地上1.5mでセンサーが働き、底部のロケットが噴射して衝撃を和らげるのですが、6つのエンジンのうち4つしか噴射しなかったせいか、『ガッツン』と衝撃を受けました」

「帰還第一声は、『地球の空気は美味しい』だったと思います。今は何をしたいかと訊かれて、『うまいものが食いたい。風呂に入りたい。ビールも飲みたいし、タバコも吸いたい』と答えたのです」

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秋山さん近況(京都造形芸術大学にて)
−−あれから27年たちました。秋山さんにとって宇宙体験とは何だったのですか?

「地球は薄い皮一枚の大気に覆われ、はかないほどの美しさでした。その地球で地に足がついた生き方をしようと、帰還から5年後にTBSを退社して、福島県で有機農業を始めました。振り返ってみると、何が本当に大切なことなのかに改めて気づかせてくれたのが私の宇宙体験だったのだと思います」

宇宙から見た地球は広大無辺の闇に浮かぶ青くて小さな天体です。秋山さんが「はかないほどの美しさ」と感じた地球について、もう一度見つめ直す機会にしたいものです。

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参考資料など

【秋山豊寛さん略歴】1942年、東京生まれ。国際基督教大学卒業。66年TBS入社。ロンドン駐在、外信部、政治記者、ワシントン支局長を経て、90年12月2日から9日間、宇宙特派員として地球の映像を撮影し実況中継した。95年にTBSを退社。翌年から福島県阿武隈で有機農業に従事。2011年3月の福島第一原発の爆発事故により「原発難民」となる。11年10月に京都造形芸術大学教授に就任する。