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“インスタ映え”間違いなし!
ペンギンが空を飛ぶ「3つの秘密」とは?

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2017/09/06 05:34 ウェザーニュース

ペンギンが空を飛ぶ?――東京・池袋にあるサンシャイン水族館の新展示は連日、長い行列ができるほどの人気だ。7月にリニューアルした屋外エリア「マリンガーデン」“天空のペンギン”は世界初の展示方式といわれている。ウェザーニュースキャスターがレポート!

※こちらの記事はウェザーニュースの月刊デジタルマガジン「月刊SORA」に掲載中の記事を一部編集してご紹介しています。

40羽の「空飛ぶペンギン」

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サンシャイン水族館の松戸さんとウェザーニュースキャスター角田
2017年7月12日にリニューアルオープンした東京・池袋のサンシャイン水族館が人気を呼んでいる。なかでもダントツに人気が高いのは「空飛ぶペンギン」だ。都心のビルの屋上であたかもペンギンが空を飛んでいるようにしか見えない。

これまで見たことのなかったペンギンの生態や魅力を間近に見ることができる。サンシャイン水族館の松戸利久さんに「空飛ぶペンギン」の魅力や知られざる秘密について伺った。

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本当に空を飛んでいるように見える
角田「ペンギンは“飛べない鳥”として有名ですが、目の前をたくさんのペンギンが飛んでいてとても驚きました。そもそもなぜペンギンを飛ばそうと思いついたのですか?」

松戸「おっしゃるとおり、ペンギンは飛べない鳥です。だからこそ、『もしも、ペンギンが空を飛んだら面白いはず』という逆転の発想からスタートしました。『だったら、どうやって飛ばせばいいのか』という部分であれこれ工夫するのに3年くらいかかりました」

角田「今回、ペンギンを見て気づいたことの一つは、『想像していた以上に速いスピードで泳ぐ生き物だな』ということ。大きな水槽で、間近に生態を見ることができると、こういう発見もあるんですね」

松戸「ペンギンはヨチヨチ歩いているイメージがありますが、実は海のハンターですから。採餌時などには時速15kmで泳ぐといわれています。ダイナミックな泳力などペンギンの“すごさ”をぜひ体感してもらいたいところです」

ペンギンが空を飛んでいるように見える「3つの秘密」

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正面も頭上も透明で海の中のような感覚に
サンシャイン水族館は、周囲に海のない都会の真ん中にある水族館。地上40m、ビルの10階という高さに位置している。このような特殊な立地条件では、都市型水族館ならではの苦労もあると言う。

たとえば、使用する海水は伊豆諸島の八丈島近海からはるばる運ばれてくるのだ。松戸さんによると、「ペンギンの水槽だけでも、水を抜くのに2時間、貯めるのに4時間かかる」とのこと。※サンシャイン水族館全体の展示水槽の水量は、合計約643tにもなる

角田「ペンギンが飛んでいるように見えるための工夫は、具体的にはどのようなところにありますか?」

松戸「まず、『水槽づくり』の段階でこだわりました。というのも、ペンギンが空を飛んでいるように見せるために、水槽の柱やパイプといった構造物で視界を遮りたくなかったんです」

松戸「だから奥の壁面も頭上も透明のアクリル板を活用して、できるだけ見ている人もペンギンと同じ海の中にいるような感覚になれる水槽を目指しました。この奥の壁面も透明というところが世界初となります」※水槽は半トンネル型で高さ約2.8m、幅約12m、奥行き約7m

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水槽の透明度がとても高い!
角田「確かに、一般的な水槽で考えれば、多くの場合、奥の壁面はコンクリートでつくられているので、向こう側まで透けていることはほとんどありませんね。水槽越しに空や雲や遠くのマンション、町の景色が見える視覚に見惚れてしまいました」

松戸「『水の透明度』も気を遣っている点です。せっかくアクリルの水槽にペンギンが飛んでいても、水が汚れていては空が美しく見えません。水質は清掃と水の循環によって徹底して管理しています」

松戸「あとは、なんといっても『立地を活かしている』ということです。ビルの屋上は、一番空に近い場所。昼の空もいいですが、夜はライトアップされるので泳ぐペンギン越しの夜空を楽しむこともできますよ」※夜間のペンギンの展示は19時まで

「ペンギン=氷山の生き物」の誤解

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左:緑に溢れた「草原のペンギン」
右:歩くケープペンギンを間近で見られる
「ペンギンは、雪や氷のある岩場に生息している」というイメージを持っている人も多いのではないだろうか。実際、ひと昔前まで水族館や動物園のペンギンコーナーは、背景が白や水色のコンクリートがスタンダードだったはず。「ペンギン=氷山の生き物」を想起させるものだった。ところが、サンシャイン水族館にはそれがない。

「天空のペンギン」に対し、ペンギンが草地を歩く「草原のペンギン」エリアでは緑に溢れたペンギンの暮らしをイメージしている。「今は、なるべく現地で生き物が暮らしている本来の姿を見せよう、というスタイルになってきています」(松戸さん)

現在、「天空のペンギン」には約40羽、「草原のペンギン」には約20羽、合計約60羽ものケープペンギンが暮らしている。

角田「ケープペンギンは、もともと南アフリカからナミビア沿岸部に生息するペンギンだったのですね。ここにいる60羽のペンギンも南アフリカからやって来たのですか?」

松戸「現在は条約により海外からの輸入が厳しく制限されていることもあり、南アフリカから来たのは古株の数羽のみ。あとは国内で繁殖したケープペンギンたちです」

角田「『草原のペンギン』エリアにいるペンギンは、水辺というより牧草地帯にいるんですね?」

松戸「ペンギンは全般的に、雪や氷のある岩場に暮らしている印象を持っている人も多いと思いますが、ケープペンギンが暮らしている南アフリカのケープタウンには砂浜や牧草地もあり、草地や木の根の下で生息しているケープペンギンも多い。そんな野生のケープペンギンが暮らしているような環境をイメージしてつくり上げたのが『草原のペンギン』です」

角田「水族館に草原の環境をつくる、というのも世界初の新しい試みだと聞きましたが……」

松戸「導入を考えたときには、ペンギンの排泄物が草を枯らしてしまう、草や土を入れることで汚れが激しくなる、といった課題もありました。ですが、定期的に植物を入れ替えるなどさまざまな改良を重ね、ペンギンの住む草原を再現できるようになりました。草原のなかにある“ペンギン道”を歩くペンギンの姿を間近に見られると好評です」

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左:屋外にはペリカンの展示もある
右:アシカも空をゆく!?

参考資料など

【取材協力】
サンシャイン水族館
http://www.sunshinecity.co.jp/aquarium
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