- 本調査を通じて
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大津波の際、生存者と亡くなった方との間にどんな差があったのか見てきました。
今回の調査によると、生存者が地震発生から平均19分後に避難を開始していたのに対し、亡くなった方は平均21分と、「地震発生から20分」が境になっていました。ただ、その差はたった2分間。わずかな時間で状況が大きく変わるという津波災害の恐ろしさが浮き彫りになりました。いかに早く逃げるかが重要となります。
また、亡くなった方の5人に1人は避難できなかったという結果が出ました。その理由で最も多かったは「安全だと思っていた」という回答でした。今回の大津波がこれまでの想定を大きく超えるものだった事が、ここでも明らかになりました。
避難した場所が安全だったかどうかを聞いたところ、生存者の4人に3人が安全だったのに対し、亡くなった方では、4人に3人が安全な場所に避難できなかったという結果でした。また、亡くなった方の18%は避難先へ向かう途中に渋滞などの障害に遭遇していました。普段から、より安全な避難場所と安全な避難経路、安全な移動手段を考えておきたいところです。
いったん避難しても、亡くなった方の60%は再び危険な場所へ移動していました。その行動は、家族を探しにいったなど、致し方ないと感じるものもありますが、津波が数時間にわたって、繰り返し襲来する事を考えると、避難先から数時間内に再び戻るのは危険な行為である事が改めて明らかになりました。
今回の調査結果について、京都大学防災研究所の矢守克也教授は、『「何かをしようとして」亡くなった方が相当数おられることが改めて浮き彫りとなり、家族やペットを助けるに加えて、公務員・消防団・自主防災組織などの仕事として「助ける」活動に従事していた方が被害の大きな部分を占めているという課題も示唆している。津波想定の甘さによる避難場所の設定や避難ルート上に生じうる危険や障害に対する準備が甘かったことも、あらためて思い知らされる結果だ。また、生き残った人の方がはるかに「津波準備をしていなかった」が多いことがわかり、亡くなった方はそれなりに準備をしていたのに及ばなかったものと推察出来る』とコメントを述べています。
また、東北大学災害制御研究センター長の今村文彦教授は、『津波等から生き残るためには、避難が最も重要な対応の1つである。生死を分ける大切な行動であり、いつでも、どこでも出来ることであるが、今回の「東日本大震災」でも、避難することの難しさが明らかになったと言える。特に今回の調査では、生存者と死亡者との違いが初めて示された結果であり、大いに参考になる。避難開始時間、津波への過信、避難手段と経路、さらには向かった避難場所(高さ)などに有意に違いが明らかになった。我々はこの結果を真摯に受け止め、被害を繰り返さない意識を持つことが重要である』と、述べています。
当社では、今回の「東日本大震災 津波調査」を元に、当社の減災コンテンツを充実させ、津波による人的被害を無くすことに努めていく他、各防災機関が推進する減災活動の発展及び、個人団体の自助・共助活動に寄与してまいります。