“SORA道カメラマン”の晴山順平さんが東京のとっておきの「空」と「道」を紹介する! 第8回は観光客で賑わう浅草。ホッピー通りに仲見世通りといった東京の源流にあるSORA道とは!?
ホッピー通り(台東区浅草2丁目)
「ホッピー通り」は浅草寺境内の西側にある酒場通りで、南北に80mほど続く。正式名称は「公園本通り」で、別名「煮込み通り」とも呼ばれ、下町の懐かしい雰囲気の居酒屋が立ち並んでいる。
ホッピーは1948年に誕生したビール様清涼飲料水。かつてビールが高価だった時代に、比較的安価なホッピーは庶民の懐にやさしく、ビール代わりに飲む人が多かった。ここではどの店にも置いてあり、注文すると一緒に付いてくる焼酎を割って飲むのが一般的だ。
ビールに含まれるプリン体がなく、健康志向の女性からも注目され、最近またブームになっているという。昼夜問わず人で賑わう酒飲みスポットだが、以前は付近に朝鮮総連事務所があり、コリアンタウンだった背景もある。そのため今でもホッピー通り周辺には焼き肉屋が多い。
さて、今回のSORA道のオススメスポットは「ホッピー通り」南端の「浅草六区通り」とのY字路から北西方向だ。東側は浅草寺境内のため障害物となるような高い建物がない。連なる赤提灯の下では、店先に並んだテーブル席で、老いも若きもほろ酔い気分。下町情緒あふれるSORA道の風景となること間違いなし。
ちなみに、Y字路のもう片方の「浅草六区通り」も見所満載の面白い道だ。両脇の街灯には渥美清さん、萩本欽一さんなど浅草と縁の深い著名人を紹介する写真と解説が設置されている。
紹介されている著名人は街灯の表裏28面に計33人。その中で一つだけ「予約済」と書かれたプレートが。これは一体……? 浅草ガイドの達人でもある人力車夫に聞いてみたところ、ビートたけしさんが、亡くなった時に写真が入る「予約」だという。
吾妻橋西詰(台東区雷門2丁目)
隅田川にかかる吾妻橋(あづまばし)は、都道463号上野月島線吾妻橋支線(雷門通り)にあり、松屋浅草や神谷バーといった浅草中心部にもほど近い。
吾妻橋の歴史は古い。1774(安永3)年に創設され、その後何度か架け替えが行われ、赤色塗装の現在の橋は1931(昭和6)年に架けられたものだ。全長150m、橋幅22mの大きな橋で、「東京スカイツリー」へ行く際にも利用され、たくさんの人で賑わっている。
吾妻橋では西詰から東方向の撮影がオススメだ。大きな空の下で浅草名物の金色の「炎のオブジェ(スーパードライホール)」、「アサヒビールタワー」が「東京スカイツリー」ときれいに並んだ構図の写真が撮れる。
これまでも紹介してきたが、もう一度おさらいしたい。大きな空が広がるSORA道ポイントの鉄則は、「鉄道線路をまたぐ跨線橋(こせんきょう)」「高低差のある台地のきわ」そして、今回の吾妻橋のような「川をまたぐ橋」。東京で大きな空を眺めたい時はこのいずれかの場所を探すと良い。
浅草仲見世通り(台東区浅草1丁目)
浅草といえば何を思い浮かべるだろうか。「雷門」「アサヒビール」「花やしき」など、馴染みのスポットはたくさんあるが、SORA道として考えるなら、私は間違いなく仲見世通りを挙げる。
雷門から宝蔵門に至る浅草寺の表参道で、全長は南北に約250m。通りの両脇には土産物屋など、寺院建築風の店舗が計89店びっしりと立ち並び、情緒も抜群だ。ちなみに、この商店群は関東大震災で被災し、1925(大正14)年に鉄筋コンクリート造で再建されている。
仲見世通りではついつい有名な雷門方面を撮りたくなるが、SORA道ポイントは逆。南(雷門側)から北方向(宝蔵門側)を撮影すべきだ。仲見世通りを含めた浅草寺周辺は「景観形成特別地区」に指定されており、“重要な眺めを阻害しないよう、突出した高さの建造物は避ける”などの景観形成基準が設けられている。
ここでいう“重要な眺め”とは仲見世通りから宝蔵門の眺めも含まれている。そのため、南から北方向は特別に整えられた眺望が広がっているのだ。
最近は特に外国人観光客も多く、たくさんの人で賑わう仲見世通り。何もない大きな空と、人で溢れかえる道との対比も面白い。
紅葉シーズンから年末、お正月にかけて浅草はより賑わいを見せる。ホッピーとSORA道で、一味違う浅草をほろ酔い気分で歩いてみてはいかがだろうか。
※撮影時の気象データはポケット気象メーター「Kestrel(ケストレル)」によって測定した数字です。
※“SORA道”データの「アクセス」は最寄駅への交通の便を意味します。