【連載】冒険気象スタイル(7)

【三浦豪太】大自然における“停滞”の過ごし方

文・写真:三浦豪太
エベレスト、標高8600m付近
エベレスト、標高8600m付近
父・三浦雄一郎氏とともに過酷な冒険を続ける三浦豪太氏(プロスキーヤー・登山家・博士〈医学〉)が大自然の気象世界を描く、貴重なノンフィクション。今回は登山ではつきものである「停滞時」の過ごし方を、実際のエベレスト登山での体験を交えて語る。

無人島でアドベンチャーキャンプ

この10年間、僕は神戸YMCAとサントリーとともに瀬戸内海にある小豆島(しょうどしま)の南西にある無人島の余島(よしま)にて小学校3年から6年生までを対象にしたアドベンチャーキャンプを行なっている。
葛島に向けて漕ぐ子供たち
葛島に向けて漕ぐ子供たち
例年は余島からカヌーで漕ぎ出し、9kmの先の無人島、葛島(かづらしま)まで行き、2泊キャンプする。自分たちの力で漕ぎ出し、食事を作り、島で生活するこのキャンプは、一度遠征に出たら外部からの補給ができない山登りにも似ている。無人島で3日間も過ごすと子供たちは見違えるようにたくましくなっている。
しかし、2017年のキャンプは波乱続きであった。例年通り2日目、葛島に向かおうとしたが、途中から強風によるウネリが強くなってきた。このままでは危険と判断して一度余島まで戻ることにした。
風が強いため停滞を説明する
風が強いため停滞を説明する
翌日も風がおさまらないため、プログラムを変更して小豆島に渡り、余島が望める高見山に登った。山頂に着き、お昼を食べていると余島付近の風が弱くなってきたように見えた。急遽山から降りてカヌーに乗り込む準備をする。
しかし、風が弱くなった時間はわずかで、準備をしている最中にまた風が強くなり、結局この日も出航は難しいと判断した。出航と中止の判断を繰り返すことになり、子供たちの顔に明らかに落胆の表情が見て取れた。そのため、その日の夜、山登りにおける“停滞”の話をすることにした。
三浦豪太(プロスキーヤー・登山家・博士〈医学〉)
三浦豪太(プロスキーヤー・登山家・博士〈医学〉)

1969年、神奈川県鎌倉市生まれ。三浦雄一郎の次男としてキリマンジャロを最年少(11歳)登頂。91年よりフリースタイルスキー、モーグル競技へ転向し、94年リレハンメル五輪、98年長野冬季五輪代表。2001年米国ユタ大学スポーツ生理学部卒業後、ワールドカップ解説やプロスキーヤーとして活躍。父・雄一郎とともに3度にわたり世界最高峰エベレスト登山に同行。現在、(株)ミウラ・ドルフィンズ低酸素・高酸素室のトレーニングシステム開発研究所長。博士〈医学〉(順天堂大学大学院医学部加齢制御医学講座)。