総力特集

人気急上昇中!! 「日本ワイン」の今年の出来栄えは!?

今、「日本ワイン」の人気が急上昇中だ。国内で栽培されたブドウで造られた「日本ワイン」は市販ワインの4%、25本に1本しかないことをご存知だろうか。そうした希少なワインの出来は日本の天候に大きく左右されている。気候不順が続いた今年の「日本ワイン」はどうなのか。各地の産地を直撃した。

天候不順がワインに与える影響

日本初の本格的ワイン醸造所

日本で初めての本格的なワイン醸造所は、1877(明治10)年に山梨県の勝沼村(現・甲州市勝沼町)に設立された「大日本山梨葡萄酒会社」だった。勝沼村はブドウ栽培が盛んだったからだ。
甲州市役所のワイン担当、石原久誠さん

甲州市役所のワイン担当、石原久誠さん

それから140年。ワインの出来を左右する今年のブドウの生育状態はどうなのか、甲州市役所産業振興課ワイン振興室の石原久誠(ひさのぶ)さんを訪ねた。

春先の低温で開花が1週間の遅れ

「勝沼では、白ワイン用なら甲州、赤ワイン用ならベーリーAが代表的な品種です。今年は春先に低温が続いた影響で、甲州の場合、例年なら5月25日頃に開花しますが、1週間ほど遅れた6月1日頃に開花しました」
白ワイン用の「甲州」

白ワイン用の「甲州」

石原さんは、甲州市と合併する前の勝沼町役場時代を含めてワイン振興を担当して15年になる。市役所では珍しいワインのスペシャリストだ。

雨模様が続いた8月

「ブドウが成熟期を迎える7月後半から9月にかけて、長い日照時間が保たれ、少雨で推移することが理想です。最近は、2009年と2012年が客観的にみても良好な年として位置づけられています。しかし、今年は8月に雨模様の日が続いたためブドウの糖度が上がりにくい傾向で、早生(わせ)のブドウにとって厳しい天候でした」(石原さん)
赤ワイン用の「ベーリーA」

赤ワイン用の「ベーリーA」

東京では8月1日から21日まで連続降雨記録となったが、勝沼でも同様に雨模様が続いた。勝沼の8月の観測記録は、降水量(77.5mm、平年値150.4mm)こそ少なかったものの、日照時間は145.3時間で、平年(197.3時間)の7割しかなかったのだ。

昨年に続いて特異な年

「昨年は9月中旬以降の長雨・日照不足により一部の園で病気が発生、“健全果”の収穫が困難となりました。今年はブドウが全体的に粗着(ツブが小さい)傾向で平年と比べて収穫量が若干少なくなると見込まれています。8月の連続降雨の影響でさらに収穫量が少なくならないか危惧されます」(石原さん)
甲州市勝沼町に広がるブドウ畑

甲州市勝沼町に広がるブドウ畑

「甲州ブドウは耐病性が高く、山梨の気候風土に合っていると言えます。フランスの主要品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどは甲州と比較するとデリケートな性質ですので、降雨や日照不足の影響を受けやすい傾向にあります。難しい年ほど果実をできるだけ熟(じゅく)させ、ベストなタイミングで収穫することが大切になります」(石原さん)

平年並みだった北海道の余市

他の地域の天候はどうだったのか。「北海道の余市町は、さほど天候の崩れはなく、ほぼ平年並みでした。例年、本州に比べて低温でブドウの成育期に雨が少なく、寒暖差が大きいため、ヨーロッパでいえばドイツに似た気候条件といえます」(余市ワイン)
実際、余市のブドウは、ケルナー、ツバイゲルト・レーべなど耐寒性のあるドイツ系品種が多く、それが余市ワインの特徴とされる。

宮崎は春先の低温で収穫遅れ

「今年の宮崎県の天候は、梅雨が短く、台風の襲来もなくまずまずでしたが、春先の低温で生育が1週間ほど遅れました。といっても早い品種は8月上旬から収穫しています。全国のワイン用ブドウの産地で宮崎は日照時間もトップクラスなら雨量もトップクラス。雨対策には、トンネル栽培といって、棚の上に透明のビニールをかけた方式をとっています」(都農[つの]ワイン)
都農ワインの特徴は「トロピカルフレーバー」。その土地特有の気候を生かしたワイン造りが定着しているのだ。