『空の色』『空の鼓動』など、空の写真集、写真詩集で、圧倒的な人気を誇る写真家・HABUさん。人の心を深く動かす写真家の心の在り処をインタビュー。空の撮影術も教わりました!
会社員から空の写真家へ転身
──なぜ空の写真家に?
初めから空の写真家を目指していたわけではなく、会社員も10年間やりました。きっかけは、32歳のとき仕事でオーストラリアのシドニーを訪れたこと。
すごく気に入って、会社をやめて10週間語学学校に通った後、車を買って8ヵ月ほどあちこち放浪しました。そのとき、どうせならと写真を撮りながら回ったのです。
──そのときから空を撮り始めたのですか?
そのときは見るものすべてが珍しく、何でも撮っていました。コアラもカンガルーも人も。そのあとは、日本に帰ってアルバイトをして、お金が貯まったらまた行く、という繰り返しでした。
前職のつてなどで、ストックフォト(雑誌や広告への利用写真貸し出し)やDM用写真の撮影などもしましたが、商業カメラマンになるつもりはなかった。ただ、何を撮っていいのかわからずにいたんです。
──空にこだわるようになったのは?
初めての写真展の後です。写真を撮り始めて5年ほどたった頃、友人の誘いで世田谷美術館(東京都)で開かれたグループ展に参加したのです。1人分のスペースが7〜8mだったので、テーマを「オーストラリアの風景」に絞り、7、8点を組写真にしました。
オーストラリアなので、選んだ写真はみな空の面積が大きかった。それを1週間毎日見ているうちに、「あ、これでいいんだ」と思ったんです。それからは、迷わなくなりました。
──ほかにも「広がり」を感じられる空の作品が多いですね?
僕は、昭和30年に東京の中野区で生まれました。子どもの頃は二階建ての建物なんてほとんどなく、空き地も多くて毎日夕焼けを見ていた。運動会ではいわし雲がすごく綺麗だったとか、そんな思い出がいっぱいあるんです。
長い間忘れていたのですが、写真家になって本当に自分の好きなものは空だったんだなとわかった。そして、気づくと名勝や観光地ではなく、何もない田舎や荒れ地が広がるような場所ばかり目指している。原点に原っぱがあるというか、空は空でも広がりの感じられる風景を求めているのでしょう。
──1999年に最初の写真集『雲の言葉』を出版しヒットしましたね?
それまで、空の写真といえば“気象”の考え方で編集する図鑑に近いものがほとんどで、空そのものをテーマとした本がなかったんです。
半年で『雲の言葉』は重版がかかり、次の『空の色』も出版して、その後はほぼ1年に1冊のペースで写真集を出しています。空は誰の上にも広がっているものです。だから、見る人は自分の見た空とダブらせて、共感してくれるのでしょう。