父・三浦雄一郎氏とともに過酷な冒険を続ける三浦豪太氏(プロスキーヤー・登山家・博士〈医学〉)が大自然の気象世界を描く、貴重なノンフィクション。今回は今年6月に登頂成功したばかりのデナリ山が舞台。セブンサミッツの一つであるデナリで体験した不思議な風とは!?
登頂率34%の危険な山
先日あるイベントで伊吹山を登るので下見に行ってきた。伊吹山は滋賀県にある日本百名山のうちの一つ。僕は初めて登る。
五合目をすぎると西の空に怪しい積乱雲が見えた。しばらくすると遠くからゴロゴロと雷鳴が聞こえる。三合目から上はスキー場の跡地で開けている。雨はともかく、雷はこの場所で遭遇するのは嫌だなと思い、ペースをあげて山頂に向かった。
山頂の小屋で注文した蕎麦を食べている最中、雨が激しくなり、頭上では雷が落ち始める。結局、下山は東側の登山路を降りてタクシーを呼んだ。
冒険家・植村直己も戻らなかった
日本では西から天気が変わるのが常識だ。僕はこれが世界的常識だと思っていたが、今年6月に米国デナリ山に登った時そうではないことに驚いた。
デナリはアラスカ州にある6190mの標高を誇る北米大陸の最高峰。北緯63°という高緯度にある山としても知られ、北極に近く、ヒマラヤ登山以上に厳しい寒さともいわれている。
デナリは日本が誇る冒険家、植村直己さんが冬季登頂を目指し、帰らぬ人となった山としても有名だ。当時はマッキンリーと呼ばれ、日本人の間ではその名前でよく知られている。
現在でも多くの登山者が世界中から集まり、その山頂を目指す。しかし、僕たちがデナリ登山前に立ち寄ったデナリ国立公園のレンジャーステーションには、今年の登頂率34%という数字があった。これほど情報や道具が発達した現代でも3人に1人しか山頂に立てない。それほど厳しい山なのである。
三浦豪太(プロスキーヤー・登山家・博士〈医学〉)
1969年、神奈川県鎌倉市生まれ。三浦雄一郎の次男としてキリマンジャロを最年少(11歳)登頂。91年よりフリースタイルスキー、モーグル競技へ転向し、94年リレハンメル五輪、98年長野冬季五輪代表。2001年米国ユタ大学スポーツ生理学部卒業後、ワールドカップ解説やプロスキーヤーとして活躍。父・雄一郎とともに3度にわたり世界最高峰エベレスト登山に同行。現在、(株)ミウラ・ドルフィンズ低酸素・高酸素室のトレーニングシステム開発研究所長。博士〈医学〉(順天堂大学大学院医学部加齢制御医学講座)。