そらびとsorabitoインタビュー(4)

日本に一人だけ? ストームチェイサー(竜巻追跡者)登場!!

ストームチェイサー
青木豊(あおきゆたか)さん
詩歩(しほ)さん
日夜、荒天の空を追いかけ、雷、竜巻めがけてシャッターを切り続ける青木豊さん。テレビの『情熱大陸』、『クレイジージャーニー』でも取り上げられたいま話題の写真家。なぜ青木さんが怖い空と雲に魅せられ、生涯の仕事としたのか? 空と格闘するストームチェイサーの意外な事実に迫った!

「ストームチェイサー」の仕事??

──追跡する悪天候は?
私の場合、時々刻々と変化する悪天候の空を追跡して写真を撮り、記録を残し、データを収集しています。
雷や竜巻はもちろん、強い上昇気流を伴って雹(ひょう)を降らせたり、ときには集中豪雨をもたらす巨大積乱雲の「スーパーセル」、積乱雲からの急激な下降気流の「ダウンバースト」、そのダウンバーストが、温かい空気を強引に押し上げることで発生する突風前線の「ガストフロント」など気象現象の決定的瞬間を狙っているのです。
──いつからストームチェイサーに?
私の実家は筑西市(茨城県)で写真店を営んでいたこともあり、小さい頃から、おもちゃ代わりに壊れたカメラで遊んでいるような子どもでした。店はもう閉めましたが、当時から祖父や父親からカメラの基礎についての手ほどきを受けていたんです。
あるとき、偶然に撮れた雷の写真の美しさに魅了され、以来、すっかり「嵐の空」の写真を撮ることにはまってしまいました。それが10年くらい前のこと。2012年の秋にストームチェイサーとしてプロ宣言をして5年になります。
──ずっとこの土地で撮影をしているのですか?
筑西市あたりは、栃木方面や群馬方面から来る低気圧や前線が通過する“雷に恵まれた”土地柄。日光や宇都宮は「雷銀座」と言われていますが、私はこのあたりのことを「雷の交差点」と呼んでいます。そのくらい数多くの雷が発生するんです。夏場には南東からの湿った空気が山にぶつかり、雲が発生して嵐が起こるパターンも少なくありません。
積乱雲に先駆けて通過するガストフロント(茨城県筑西市)撮影:青木豊
積乱雲に先駆けて通過するガストフロント
(茨城県筑西市)撮影:青木豊
寒風が吹くなか、晩秋の雷が夜空を駆ける(茨城県筑西市)撮影:青木豊
寒風が吹くなか、晩秋の雷が夜空を駆ける
(茨城県筑西市)撮影:青木豊
そのせいか、子どもの頃から雷をはじめとする荒天についての知識を家族から教えられる機会も多かったように思います。
たとえば、「風が冷たくなったら気をつけて」というのは、南風から北風に変わり、天気が悪くなるという観天望気。「筑波山に雲がかかったら早く帰っておいで」というのも、筑波山にぶつかって滞留している雨雲からすぐに雨が降ってくるということを示していたのでしょう。
取材当日も筑波山に雲がかかっていた
取材当日も筑波山に雲がかかっていた
ちなみに、筑波山は独立峰だと思い込んでいる人が多いのですが、八溝山(やみぞさん)を頂点にした八溝山脈の一部で、足尾山や加波山(かばさん)も含めて筑波山塊と呼ばれています。つまり、ここは高い山に囲まれた地域だということになります。
ただ、近くで発生した雲は筑波山にぶつかって弱まることもあります。だから、筑波山の東側の土浦や石岡といった地域では「筑波の雷はからっ雷」と言って、筑波山のほうから来る雷は音だけでたいしたことはない、という意味の言い伝えまであります。