全国有数の温泉地、箱根(神奈川県)の名物といえば大涌谷(おおわくだに)の黒たまご。殻が真っ黒のゆで卵だ。中身は通常の白身と黄身だが、コクがあって旨い。この黒たまごが1年にわたって食べられなかった時期があった。
箱根を代表する名物!
噴煙が立ちのぼる「地獄谷」
東京・新宿から小田急電鉄の特急ロマンスカーで終点の箱根湯本駅に(所要時間約1時間30分)。そこから登山電車(約40分)、ケーブルカー(約10分)、ロープウェイ(約8分)と乗り継ぐと大涌谷に到着する。
谷を見下ろすと、白い噴気が立ちのぼり、風向きによって硫化水素などの臭いが鼻をかすめる。ガスのせいで植物は育たず地肌がむき出しだ。現役の活火山であることを改めて思い知らされる凄みのある風景だ。
1時間茹でて15分蒸す
この大涌谷でしか買えないのが黒たまごだ。その名の通り、殻が真っ黒。黒くなるのは、籠に入れた生たまごを「たまご池」と呼ばれる約80℃の温泉池で茹でている間に、温泉池の成分の鉄が付着し、これに硫化水素が反応して硫化鉄(黒色)になるからだ。
さらに約100℃の蒸気で15分ほど蒸すと、白身がプリプリの茹でたまごができあがる。
黒たまご、62年間の歴史
黒たまごが誕生したのは1955(昭和30)年。設立されて間もない奥箱根観光株式会社が箱根名物として、温泉池の特性を利用してつくったところ評判に。同社の広報担当者(以下、広報担当者)が語る。
「最初は5個1袋で400円だったそうです(現在は5個500円)。当時、たまごはまだ贅沢品。箱根土産に買い求められるお客様が多かったと聞いています」
販売量は1日に数千袋
1959(昭和34)年から翌年にかけて、早雲山(そううんざん)−大涌谷-姥子(うばこ)−桃源台(とうげんだい)のロープウェイが開通すると、大涌谷を訪れる人も増え、黒たまごの知名度は高まった。
今は1日にどれくらい売れているのだろうか。「数字は公表していません。黒たまごの1日の販売量は数千袋(1袋5個入り)としてください」(広報担当者)
ちなみに、黒たまごはその日につくったものしか販売しない。売れ残ったら、たまごふりかけなどに加工するという。
ひな鶏のたまごを全国から調達
たまごはどこから仕入れているのだろうか。
「うちではMSサイズといって、生後1ヵ月くらいまでのひな鳥が産んだたまごを使っています。コンビニのおでんに使うたまごも同じサイズ。やや小粒ですが、値段は高いのです。調達先は静岡県浜松市の養鶏場が半分を占めていますが、残りの半分は全国から集めています」(広報担当者)
黒たまごが旨い秘密
「リピーターの方などから『黒たまごはなぜ旨いのか』と訊かれますが、私どもにもわかりませんでした。しかし、『所さんの目がテン!』(日本テレビ)という番組で黒たまごの成分を専門機関で分析してもらったところ、黒たまごの白身は普通の茹でたまごと差がなかったけれど、黄身は旨み成分が21%も多かったそうです」(広報担当者)
温泉池で1時間茹でている間に温泉成分が黄身の旨みを増すのだろうか。
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