日本が南極観測を始めて今年で60年。その南極に観測隊と物資を25回運んだ3代目の南極観測船が千葉県船橋港に係留されている。ウェザーニュースキャスターの高山奈々さんが関係者に話を聞き、船内を探検した。
スクラップ寸前だった「しらせ」
船橋港に係留されている南極観測船SHIRASE(しらせ)の第一印象は「大きい!」でした。全長134m、全幅28m、排水量1万1600t。1983年に就航し、2008年に退役するまで南極に25回渡航したそうです。
現役時代は観測隊員の食堂でしたが、今は研修室として使われている部屋で話を聞きました。
氷を割るのに体当たり!?
「しらせは分厚い氷を割るのに、チャージング(最近ではラミングと言います)といって、いちど後退してから、勢いをつけて前進して氷に体当たりするのですが、それを何回も繰り返します。エンジンだと前進・後退の切り替えが大変なので、チャージングするときの動力はモーターでした」と言うのは、しらせの機関士として南極に9回渡航した栁沼喜三さん(69歳)です。
栁沼さんは、しらせが就航する前の南極観測船ふじでも南極に2回行っています。今は見学者のガイドや船体のメンテナンスなどをしていらっしゃいます。
南極観測60年の成果
日本の南極観測は今年で60年になります。第37次南極観測隊(夏隊・1995〜96年)に加わった三枝茂さんが、「日本が世界に誇る3つの成果があるのです」と胸を張ります。
「1つ目はオゾンホールの発見です。越冬隊の気象庁職員が観測し、1983年に世界で初めて報告しました。2つ目は南極に落ちた隕石をこれまでに約1万7000個も採取したことです。これは世界でトップクラス。3つ目は南極の氷床をボーリングして、氷に閉じ込められた気泡を分析することで、72万年間の気候変動の復元に成功したことです」
三枝さんは、今のSHIRASEを管理・運営するWNI気象文化創造センターの事務局長も務めています。
あやうく鉄くずに
氷に体当たりし、数々の成果をあげたしらせですが、退役後はあやうくスクラップになるところだったとSHIRASEの艦長を務める宮部二朗さん(WNI気象文化想像センター代表理事)が語ります。
「しらせはスクラップ(鉄くず)になることが決定していましたが、ウェザーニューズの創業者の石橋博良が、『それはもったいない。うちで引き取って気象や環境問題の情報発信基地にしよう』と社内にプロジェクトチーム(以下PT)をつくってスクラップ計画をひっくり返したのです」
白瀬矗の冒険心
PTは主管の文部科学省に何度も足を運び、膨大な計画書を作成したそうです。しらせの元乗組員や南極観測隊経験者の応援も得て、2010年に購入することができました。
しらせという艦名は、南極にある白瀬氷河という地名からとられていますが、この氷河の名前は今から105年前に南極を探検した白瀬矗(のぶ)の功績を称えて名付けられました。
しらせの後継艦も同名になりましたが、初代しらせは、その存在を世界に知ってもらいたいとの思いからローマ字の「SHIRASE」になって第2の船出をしたのです。
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