総力特集

史上最強の猛暑!「衣服内気候」と浴衣の知恵

年々暑くなる日本の夏。エアコンで涼もうと思っても、オフィスの室温は省エネのため28℃に設定され、屋外に出たら熱気に包まれます。そんな猛暑を乗り切り、熱中症を防ぐ「衣服内気候」の秘策とは?

なぜ暑いと感じるのか?

熱中症で5万人前後が救急搬送

毎年、熱中症で5万人前後が救急搬送され、約1000人が亡くなっている。それが近年の日本の夏だ。熱中症予防には、水分とミネラル補給、適度な休憩、十分な睡眠、エアコンの使用などが大事だが、熱中症になりにくく、夏を快適に過ごせる衣服を考えてみよう。

「熱の収支」がオーバーしている

ところで、私たちはなぜ暑いと感じるのか。
「ひと言でいうと、気温が高いために体の熱が放散されにくく、体内に熱がたまって体温が上がるからです。別の言い方をすると、熱の収支がオーバーしているためです」と語るのは、文化学園大学名誉教授、同大学院特任教授の田村照子さんだ。
文化学園大学大学院特任教授の田村照子さん

文化学園大学大学院特任教授の田村照子さん

田村さんによると、裸の状態で暑くもなく、寒くもない、体が快適に感じる気温(中立気温)は27〜31℃前後。ところが、暑くなって中立気温を上回ると、体の熱が放散されにくく、熱の収支がオーバーして体温が上昇し、暑いと感じるのだという。

衣服の中にも気候がある

私たちは通常、裸ではなく、衣服を着て生活している。そこから「衣服内気候」という考え方が生まれた。
「衣服と皮膚の間に微気候(衣服内気候)を形成することで、人は環境制御を行っているのです」(田村さん)
衣服による環境制御の特徴は、第1に各人が個別に調節できること、第2に人体とともにどこへでも持ち運べること、第3に着脱という簡便な方法により環境の変化に対応できること、第4に環境負荷が小さくコストが低いことだという。
この衣服内気候で快適と感じるのは、温度が31〜33℃、湿度が60%以下のときだという。しかし、気温が上がると衣服内の温度が上がり、汗をかいて湿度も上昇するから不快感を覚えるのだ。