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地球温暖化のウソ? ホント?(15)子供は知っているのに、大人は知らない? SDGsから考える気候変動問題

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2025/01/26 05:00 ウェザーニュース

小学生や中学生など、今の子供たちはSDGs(持続可能な開発目標)について、学校の授業などで学んでいます。総合的な学習の時間や理科、社会、国語などで、SDGsが扱われることがあるからです。

教材を読んで学ぶだけでなく、スーパーマーケットやコンビニエンスストアの食料廃棄について調べたり、文化祭でSDGsについて発表したり、実際にゴミ拾いをおこなったりすることもあります。

高校では、環境問題や気候問題をテーマに、英語で議論する授業がおこなわれることもあります。

SDGsは2015年に国際連合が立てた目標(ゴール)で、地球温暖化(気候変動)の問題も深く関わっています。

SDGsと地球温暖化の関係については、子供は知っているけれど、大人は知らない、ということも多いかもしれません。

大人も子供も、SDGsや地球温暖化について学ぶことはとても大切です。

気候変動問題の専門家である江守正多さん(東京大学 未来ビジョン研究センター教授)の監修のもと、SDGsと地球温暖化の関係などについて見ていきましょう。

Q1/世界を「持続不可能」にする最大の原因は地球温暖化だって、本当?

◆A/人間の活動が温暖化などを引き起こし、多くの生物を死に追いやっています。

SDGsは「Sustainable Development Goals」の略語で、「持続可能な開発目標」の意味です。

逆に言うと、世界を持続できなくする開発の仕方もあるということです。

世界(地球上)には、多種多様な動植物が棲息しています。

地球上に生物が現れたのは約38億年前です。この38億年の間に生物の大量絶滅は5回ありました。
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大量絶滅の主な原因は、火山の噴火や海面の低下などの自然災害や気候変動であると考えられています。

約2億5100万年前のペルム紀末に起こった3回目の大量絶滅は古生代を終わらせ、約6500万年前に起こった5回目の大量絶滅は恐竜などを絶滅させました。

では、生物の大量絶滅はもう起こらないのでしょうか。「6回目」はないのでしょうか。

この問いに対し、江守さんは次のように答えます。

「地球温暖化を含む人間活動の影響は、地球上の生き物にとっての最大のリスクです。現在、かつてないスピードで生物種の絶滅が起きており、その原因は人間による生態系の破壊・汚染・分断、さらに乱獲、外来種、そして地球温暖化です。

第5次大量絶滅では巨大隕石の衝突が主な原因で恐竜などが絶滅したことが知られていますが、現在起きている第6次大量絶滅において、人類の立場は『恐竜』ではありません。人類の立場は『隕石』です」

現在、第6次大量絶滅はすでに進行していて、その主因は人間の活動にあり、人間の立場は隕石であるという指摘は大変重いのではないでしょうか。

Q2/地球温暖化問題と関係の深いSDGsの目標はなに?

◆A/目標13の「気候変動に具体的な対策を」は、すべての目標と関わっています。

SDGsには17の目標があります。そのうち、13は「気候変動に具体的な対策を」で、気候変動問題に関する目標を明確に掲げています。

ほかにも、7の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、12「つくる責任 つかう責任」、さらに、14「海の豊かさを守ろう」、15「陸の豊かさも守ろう」なども気候変動問題と深く関わっています。
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「温室効果ガスの排出を減らして気候変動を止めるためには、大量生産や大量消費をやめて、リサイクルやシェアリングなどで効率よく回る経済とその技術基盤(目標9、12)を構築し、質の高い教育(目標4)や格差の小さい公正な社会(目標5、10、16)を実現し、良好な国際関係(目標17)を構築することなどが前提として必要です。

逆に、気候変動を止めることができれば、発展途上国に住む人などの貧困(目標1)や飢餓(目標2)を改善し、健康(目標3)、水資源(目標6)、生態系(目標14、15)などへの気候変動の影響も抑えることができます。

また、エネルギー政策、経済・産業政策、都市政策は、気候変動政策の直接的な手段でもあります。これらは目標7、8、9、11と関連します。

このように、目標13の『気候変動に具体的な対策を』は、ほかのすべての持続可能性目標と密接に関わっていることがわかります」(江守さん)

Q3/気候変動を止めるための対策が人々の暮らしや地球に悪影響を与えることはないの?

◆A/太陽光発電や風力発電などの乱開発によって、生態系が破壊されることもあります。

「気候変動を止める対策は、やり方によっては、ほかの持続可能性の目標に悪影響を及ぼすこともありえます。

たとえば、再生可能エネルギーなどの導入方法に無理がある場合、エネルギー価格の上昇を招いて、貧困層がエネルギーを入手しづらくなる恐れがあります。これは、目標1、7に関連する事柄です。

同様に、バイオマス燃料の利用拡大が土地をめぐって食料と競合し、食料価格の上昇を招くことがありえます。すると、貧困層が食料を入手しづらくなり、飢餓問題をさらに悪化させてしまうことになります。これは、目標1、2に関係します。

また、太陽光発電や風力発電の大規模な乱開発が行われると、生態系が破壊されるなどの悪影響が出る恐れがあります。これは、目標14、15に関することです。

気候変動を止める対策を考え、実行するときは、これらの点に十分に留意することが必要です。これらの点を克服する形にうまく対策を設計できれば、気候変動を止めながら、SDGsの各目標の達成にも好影響を与えられます」(江守さん)

Q4/「ESD(持続可能な開発のための教育)」って、なに?

◆A/持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。

ESDは「Education for Sustainable Development」の略語で、「持続可能な開発のための教育」と訳されています。

文部科学省はESDを次のとおり説明しています。

「今、世界には気候変動、生物多様性の喪失、資源の枯渇、貧困の拡大等人類の開発活動に起因する様々な問題があります。

ESDとは、これらの現代社会の問題を自らの問題として主体的に捉え、人類が将来の世代にわたり恵み豊かな生活を確保できるよう、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことで、問題の解決につながる新たな価値観や行動等の変容をもたらし、持続可能な社会を実現していくことを目指して行う学習・教育活動です。

つまり、ESDは持続可能な社会の創り手を育む教育です」

SDGsとESDには、共通の言葉が出てきます。それは「持続可能な開発」、英語では「Sustainable Development」です。
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持続可能な開発・社会を目指して行動できる人をESDによって育て、SDGsを達成する、という構図が読み取れます。

「ESDの本質的な要素には『シチズンシップ教育』(市民性教育)がある、と私は理解しています。つまり、社会の一員として、多様な人たちと対話・協働して社会を形作っていく能力を育てることです。社会を持続可能にするためには、そういう能力が必要だという認識が高まっているのだと思います」(江守さん)

江守さんは、さらに環境教育に関する法律についても言及します。

「『環境教育等促進法』という法律が2012年から施行されていて、その基本方針が最近改訂されました。新しい方針では、次のことなどが謳われています。

・環境教育の目的として、気候変動等の危機に対応するため、個人の意識や行動変容と組織や社会経済システムの変革を連動的に支え促すこと。

・環境教育において特に重視すべき方法として、これまで重視してきた体験活動に加えて、多様な主体同士の対話と協働を通じた学びやICT (※)を活用した学びの実践を、学校、地域、企業等の様々な場で推進すること。

環境教育というと、今までは『自然に親しんで、エコに生活しよう』というイメージがあったかもしれませんが、新しい方針ではそれだけではなく、『社会システムを変革するために、多様な人たちと対話・協働しよう』という方向性が感じられます」

便利な生活を享受するためにはエネルギーを浪費しても構わないとする常識を変えるために、教育が果たす役割は大きいでしょう。

「世界にはかつて、植民地主義や奴隷制が存在していた時代があります。当時はそれを常識と考える人が多かったでしょうが、現在から見ると、深刻な人権侵害です。

同様に、現在、エネルギーを使えば二酸化炭素が出るのはある程度仕方がないというのが常識だと思いますが、将来に脱炭素化した世界から見ると、気候変動の被害にあう人々への深刻な人権侵害に映るかもしれません。

このように倫理的、規範的な観点から常識の変化を考え、それについて子供や若者たちと一緒に話し合うことも、地球温暖化を止めるためには重要だと思います」(江守さん)

SDGsとESDには、地球温暖化を止めるヒントがたくさん記されています。

子供たちとともに、大人もSDGsなどについて学んでいきたいですね。


ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、皆さんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
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※ICT:Information and Communication Technologyの略語。情報通信技術


監修/江守正多 東京大学 未来ビジョン研究センター 教授(@seitaemori)