アレルゲンとなる食物摂取後の運動が誘発!?
「アナフィラキシー」という症状は近年、新型コロナウイルスワクチン接種後の副反応などの説明で、よく耳にするようになりました。
「アナフィラキシーとは、『アレルゲン』と呼ばれる、発症の原因となる物質が体内に入ってから短い時間で、皮膚にじんましんが生じたり、呼吸器に喘息(ぜんそく)に似た症状が起きたり、腹痛や嘔吐(おうと)がみられます。これら複数の臓器に激しいアレルギー反応が起こる症状をさします。
血圧の低下によって意識レベルの低下や脱力が起こるといった症状をアナフィラキシーショックといい、生命にかかわる可能性もあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、アレルゲンとなる特定の食物を食べただけでは発症しません。食事の後、多くは2時間以内に運動をしたことで引き起こされる症状ですが、4時間後の発症という例もあります」(山口先生)
発症しやすい年代はありますか。
「小学生から大人、高齢者まで発症する可能性がありますが、初めての発症例は10~20歳代の男子が多く、中学生の約6000人に1人の頻度とする報告もあります」(山口先生)
「アナフィラキシーとは、『アレルゲン』と呼ばれる、発症の原因となる物質が体内に入ってから短い時間で、皮膚にじんましんが生じたり、呼吸器に喘息(ぜんそく)に似た症状が起きたり、腹痛や嘔吐(おうと)がみられます。これら複数の臓器に激しいアレルギー反応が起こる症状をさします。
血圧の低下によって意識レベルの低下や脱力が起こるといった症状をアナフィラキシーショックといい、生命にかかわる可能性もあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、アレルゲンとなる特定の食物を食べただけでは発症しません。食事の後、多くは2時間以内に運動をしたことで引き起こされる症状ですが、4時間後の発症という例もあります」(山口先生)
発症しやすい年代はありますか。
「小学生から大人、高齢者まで発症する可能性がありますが、初めての発症例は10~20歳代の男子が多く、中学生の約6000人に1人の頻度とする報告もあります」(山口先生)
なぜ運動が誘発するのか?
アレルゲンとなる食物を摂っただけでは発症せず、運動によって誘発されるのはなぜでしょうか。
「一般に食物アレルギーとは、消化が不十分だった特定のタンパク質を腸が異物と認識して、それを排除しようとする反応が強く生じてしまった状態をいいます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーが引き起こされる原因は、腸からのアレルゲン吸収量が、食後まもない時間帯の運動によって増加するためだと考えられています。
普段よく食べていて問題がなかったはずの食べ物なのに、食後の運動が加わったことで突然のアレルギー反応が起こってしまうので、原因に気づきにくい。それが食物依存性運動誘発アナフィラキシーのいちばんの問題点、危険性だといえます。
一般の方々には食物依存性運動誘発アナフィラキシー自体の認知度が低く、症状も短時間で治まる場合が多いので、初めて発症した段階では食事と食後の運動との関連性がなかなか認識できません。そのため、繰り返し発症してしまう患者さんも少なくないのです」(山口先生)
「一般に食物アレルギーとは、消化が不十分だった特定のタンパク質を腸が異物と認識して、それを排除しようとする反応が強く生じてしまった状態をいいます。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーが引き起こされる原因は、腸からのアレルゲン吸収量が、食後まもない時間帯の運動によって増加するためだと考えられています。
普段よく食べていて問題がなかったはずの食べ物なのに、食後の運動が加わったことで突然のアレルギー反応が起こってしまうので、原因に気づきにくい。それが食物依存性運動誘発アナフィラキシーのいちばんの問題点、危険性だといえます。
一般の方々には食物依存性運動誘発アナフィラキシー自体の認知度が低く、症状も短時間で治まる場合が多いので、初めて発症した段階では食事と食後の運動との関連性がなかなか認識できません。そのため、繰り返し発症してしまう患者さんも少なくないのです」(山口先生)
小麦と甲殻類が原因食物の9割を占める
具体的に、どのような食べ物が原因になっているのでしょうか。
「アレルゲンとなるのは、主にエビやカニなどの甲殻類や、パンやうどんなどの小麦を原料とした食物です。そのほか、ピーナッツや大豆製品、果物類などを摂った後に発症したという例も報告されています。
日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン2021』によると、原因食物は小麦が62%、甲殻類が28%と示しています。また、果物や野菜を原因とする報告例が増加傾向にあるようです」(山口先生)
原因となる食後の運動ではどのような競技・種目が多いのでしょうか。
「ガイドラインでは、体への負荷が大きい球技が38%、ランニングが28%と全体の3分の2を占めています。
発症のタイミングとしては、昼食後の休み時間や5時間目にあたる体育の時間、運動系の部活動の時間に起きやすいと報告されています。
ただし、運動に加えて食物依存性運動誘発アナフィラキシーを悪化させる要因も多く存在しています。たとえば、疲れや睡眠不足、風邪や月経時などの体調不良、ストレスなどによる自律神経の失調、非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンなど)の薬剤摂取。入浴や近年人気のサウナも注意が必要です。
さらに、この時季特有の温度や湿度の急激な変化といった気象条件や、秋の花粉症も悪化の要因となり得ます」(山口先生)
「アレルゲンとなるのは、主にエビやカニなどの甲殻類や、パンやうどんなどの小麦を原料とした食物です。そのほか、ピーナッツや大豆製品、果物類などを摂った後に発症したという例も報告されています。
日本小児アレルギー学会の『食物アレルギー診療ガイドライン2021』によると、原因食物は小麦が62%、甲殻類が28%と示しています。また、果物や野菜を原因とする報告例が増加傾向にあるようです」(山口先生)
原因となる食後の運動ではどのような競技・種目が多いのでしょうか。
「ガイドラインでは、体への負荷が大きい球技が38%、ランニングが28%と全体の3分の2を占めています。
発症のタイミングとしては、昼食後の休み時間や5時間目にあたる体育の時間、運動系の部活動の時間に起きやすいと報告されています。
ただし、運動に加えて食物依存性運動誘発アナフィラキシーを悪化させる要因も多く存在しています。たとえば、疲れや睡眠不足、風邪や月経時などの体調不良、ストレスなどによる自律神経の失調、非ステロイド性抗炎症薬(アスピリンなど)の薬剤摂取。入浴や近年人気のサウナも注意が必要です。
さらに、この時季特有の温度や湿度の急激な変化といった気象条件や、秋の花粉症も悪化の要因となり得ます」(山口先生)
症状が見られたらすぐに救急車を要請
食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症してしまったら、どのような対処が必要でしょうか。
「おもな症状は全身のじんましんやむくみ、吐き気、腹痛、動悸、咳き込みや呼吸困難などです。これらの症状が起きたら、迷わずに救急車を呼んで医療機関へ搬送し、医師の診察を受けてください。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは症状の悪化が早く、患者のおよそ半数は血圧の低下によるアナフィラキシーショックを起こしてしまうといわれています。そのため、発症時には迅速な対処が第一となります」(山口先生)
「おもな症状は全身のじんましんやむくみ、吐き気、腹痛、動悸、咳き込みや呼吸困難などです。これらの症状が起きたら、迷わずに救急車を呼んで医療機関へ搬送し、医師の診察を受けてください。
食物依存性運動誘発アナフィラキシーは症状の悪化が早く、患者のおよそ半数は血圧の低下によるアナフィラキシーショックを起こしてしまうといわれています。そのため、発症時には迅速な対処が第一となります」(山口先生)
日頃から気をつけたいことは?
日頃からの対策として、どのような注意が必要でしょうか。
「残念ながら、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは薬では予防できません。発症の原因を理解して、アレルゲンとなり得る食物をなるべく摂らないこと。もし摂ってしまったら、食後の数時間は運動しないことが最も有効な予防法といえます。
学校や職場などでは教師や上司、同僚など周囲の人たちに、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する可能性があること、原因となる食物や症状の特徴などを事前に知らせておいてください。
また、食物アレルギー患者さんなどは、日頃から食事の記録などを、まとめてメモにする習慣をつけておくといいでしょう。医師の診察を受ける際には、自身の症状や使用中の薬、家族のアレルギー歴などの情報に加えて、メモを提示することが、診療方針の決定などにも役立ちます」(山口先生)
食物依存性運動誘発アナフィラキシーはそれほど知られていない症状ですが、自身も周囲も特徴などをよく理解して、「食欲の秋」、「スポーツの秋」を楽しく過ごしていきましょう。
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「残念ながら、食物依存性運動誘発アナフィラキシーは薬では予防できません。発症の原因を理解して、アレルゲンとなり得る食物をなるべく摂らないこと。もし摂ってしまったら、食後の数時間は運動しないことが最も有効な予防法といえます。
学校や職場などでは教師や上司、同僚など周囲の人たちに、食物依存性運動誘発アナフィラキシーを発症する可能性があること、原因となる食物や症状の特徴などを事前に知らせておいてください。
また、食物アレルギー患者さんなどは、日頃から食事の記録などを、まとめてメモにする習慣をつけておくといいでしょう。医師の診察を受ける際には、自身の症状や使用中の薬、家族のアレルギー歴などの情報に加えて、メモを提示することが、診療方針の決定などにも役立ちます」(山口先生)
食物依存性運動誘発アナフィラキシーはそれほど知られていない症状ですが、自身も周囲も特徴などをよく理解して、「食欲の秋」、「スポーツの秋」を楽しく過ごしていきましょう。
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参考資料など
日本医師会「食後の運動にご注意-食物依存症運動誘発アナフィラキシー」、日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」、厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」、日本アレルギー学会「アナフィラキシーガイドライン2022」