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知っておきたい、子どもが「熱性けいれん」を起こしたらどう対処する?

2023/08/21 17:31 ウェザーニュース

猛暑が続いて外出を控え、小さな子どもたちと自宅で一緒に過ごす時間が増えている保護者の方も多くなっています。熱中症が不安な8月ですが、それとは別に5歳頃までの乳幼児は季節を問わず、「熱性けいれん」を発症する可能性があります。

熱性けいれんとはどのような病気なのか。また、子どもが熱性けいれんを発症した時にどう対処すればいいのかなどについて、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に解説していただきました。

生後6ヵ月から満5歳までの乳幼児期に注意

まず、熱性けいれんというのは珍しい病気なのでしょうか。

「熱性けいれんは、けっして“まれ”な病気ではありません。20~30人に1人の子どもが経験するといわれています。

そのため、日本小児神経学会は『熱性けいれんの診療ガイドライン』を策定し、全国どの地域であっても標準的な対応ができるように努めています」(山口先生)

どのぐらいの年齢の子どもがかかりやすく、何が原因で起こるのでしょうか。

「熱性けいれんは主に生後6ヵ月から満5歳(60ヵ月)までの乳幼児期に起こります。ただし、満5歳を過ぎた子どもが発熱時にけいれんした場合でも、熱性けいれんと症状の特徴が合えば、基本的な対応は同じになります。

一方で生後6ヵ月未満の乳幼児が発熱時にけいれんを起こした時は、熱性けいれんでなく治療が必要な何らかの原因があることが多いので、緊急に検査することが必要です。

熱性けいれんには明らかな原因はありませんが、遺伝的な『熱性けいれんを起こしやすい体質』は確かに存在するようです。親や兄弟姉妹に熱性けいれんを起こしたことがあるという乳幼児は、熱性けいれんを起こす確率が高いとされています」(山口先生)

熱性けいれんを起こすと、どのような症状が現れるのでしょうか。

「熱性けいれんは熱の上がり際に多く、38度以上の発熱に伴って、ひきつけとも呼ばれるけいれんの発作が現れます。

具体的には、突然意識がなくなり、白目を向いて全身が突っ張ったり、手足をガクガクと震わせたり、顔色が悪くなったりします。ただし、体の力が抜けて、ボーッと一点をじっと見つめて意識がなくなるだけの場合もあります。

熱性けいれんの発作は、多くの場合は2~3分以内に治まります」(山口先生)

熱性けいれんは「てんかん」とは違うものなのでしょうか。

「熱性けいれんは発熱が引き起こす一時的な脳の反応ですが、てんかんは一般的に発熱がなくとも発作が起こる、慢性的な脳の病気といえます」(山口先生)

けいれんを起こした時の対処法

子どもに熱性けいれんの症状が現れた場合、どのように対応すればいいのでしょうか。

「まず、保護者の側があわててパニックに陥らず、落ち着いて子どもの安全確保に努めてください。子どもにけいれんの発作が認められたら時刻を確認し、周囲に人がいる時はすぐに知らせて、応援を呼びましょう。経過を記録しておく必要もありますので、応援者がいたほうが助かります。

そのうえで、子どもを近くの広いスペースが取れる床の上に直接寝かせます。特に首まわりなどの衣服を緩めて、吐瀉物(としゃぶつ)を飲み込まないよう気道を確保するために、顔だけが横向きにならないようにして、体全体も横に向け、頭を少し後ろにそらせてください。

口の中に指やタオルを入れたり、体を強く押さえたり揺さぶったりしてはいけません。いきなりの人工呼吸も、吐瀉物が軌道に入ってしまう可能性があるので、行ってはいけません。

横に寝かせた状態で子どもの様子、経過を観察し、けいれんの発作が5分以上続いたら、救急車などで医療機関を受診してください。5分というのはあくまで目安なので、子どもの様子に合わせて通報は5分以内であっても構いません。

具体的には、生後6ヵ月以下、熱を伴わないけいれん、初めてのけいれん、けいれんを2回以上繰り返す、けいれんが半身のみ、けいれん後に眠ってしまった、あわを吹く、顔色が青白いという症状が現れたら、迷わず救急隊を要請してください。

5分以内にけいれんが止まった場合も、子どもの意識が回復するまではけっして目を離さないようにしましょう。手足に力が入っていたり、目が開いたまま反応がなかったりした場合は、熱性けいれんは治まっていないと考えてください。意識が戻らなかったり呼吸が止まったりした場合は、すぐに救急隊に通報してください。

呼吸が止まった場合は心肺蘇生が必要です。救急隊に通報すれば通信司令員から適切な指示がなされますので、それに従ってください」(山口先生)

心肺蘇生の具体的な方法については、総務省消防庁の公式HPなどに掲載されています。消防署や日本赤十字社などが開催する講習会もあるので、事前に受けておくと安心です。

「意識が回復して、普段と変わらない様子でしたら緊急治療の必要はありません。ただし、対応がわからない場合や不安があれば、その日のうちにできる限り早く、医療機関で医師の診察を受けさせてください」(山口先生)

発作かどうかわからない場合は?

けいれんの発作が起きなくても、子どもが一点を見つめて反応がなかったり、目が一方に寄っていたりすることがあります。熱性けいれんが原因かどうかわからない場合は、どのように対処すればいいのでしょうか。

「そのような場合も、熱性けいれんで意識を失っている可能性があります。子どもに声をかけたり、足の裏をたたいたりして反応を確認してください。

反応がおかしかったりなかったりしたら、胸や腹の動きを見て呼吸の有無を確認します。呼吸が止まっていたら、救急隊に通報するとともに心肺蘇生を行ってください」(山口先生)

事前に対処法を理解していると安心

熱性けいれんに対して、日頃から注意しておくべきポイントはどのようなことでしょうか。

「子どもの熱性けいれんを実際に目の当たりにすると、わずか1分間がとても長い時間に感じられるものです。

いざという時に保護者自身がパニックに陥らないためにも、子どものけいれんはどのような症状を起こし、どう対処すべきなのかを普段から頭の中で理解しておくことが大切です。

発症した際はもちろんですが、事前にかかりつけの医師などから正しい知識を得ておくことも必要です。

熱性けいれんは、60~70%の子どもは一度発症すると二度と起こさないといわれていますが、逆に残りの子は繰り返すこともあり、38度以上の発熱から24時間以内に起こることが多いようです。

熱が2~3日続いた後にけいれんを起こした場合は、熱性けいれんではなく髄膜炎や脳炎の場合が多いとされていますので、注意が必要です」(山口先生)

熱性けいれんは突然起こる症状ですが、その場で死に至ることはないそうです。子どもが発症した時にはけっしてあわてることなく、正しい対応を心がけましょう。
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参考資料など

東京都福祉保健局「東京都こども医療ガイド」、福岡市医師会「保育園・幼稚園におけるけいれん対応マニュアル」、日本小児神経学会監修「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」(診断と治療社)