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二十四節気「大暑」 「土用の丑の日にウナギ」のきっかけは平賀源内?

2023/07/22 11:47 ウェザーニュース

7月23日(日)から、二十四節気の「大暑(たいしょ)」に入ります。

2023年の大暑は8月7日(月)までで、この日をもって立夏から始まった「夏」が終わり、8月8日(火)の立秋以降、「秋」に入ります。

大暑は「大いに暑い」の名前のとおり、一年を通して、暑さの最も厳しい時季です。

大正時代に活躍した作家、芥川龍之介は「兎(うさぎ)も片耳垂るる大暑かな」と詠んでいます。うだる暑さに、兎も芥川も参っていた様子がうかがえます。

しかし、大暑ならではの楽しみもあります。大暑とはどんな時季か、見ていきましょう。

「大暑」と「土用の丑(うし)の日」と「ウナギ」の関係

「土用」とは、立春・立夏・立秋・立冬の前の各18日間のことです。

なかでも、立秋の前の18日間を「夏の土用」といい、今では通常、土用といえば夏の土用を指します。今年(2023年)の「土用の入(い)り」(土用の初日)は7月20日(木)です。

こうして見ると、夏の土用は、大暑のすべての期間と、大暑の前の節気である小暑の後半の一部と重なることがわかります。当然、非常に暑い期間です。

また、今年の「土用の丑の日」は、7月30日(日)です。

江戸時代の半ば以降、土用の丑の日にウナギを食べる習慣が広まりました。

もともと、土用の丑の日に「う」のつくものを食べる風習があり、蘭学者で戯作者(げさくしゃ)の平賀源内が「ウナギを食べると、夏負けしない」と宣伝したことにより広まったといわれます。

現在も、土用の丑の日にウナギを食べる習慣は根づいています。

ビタミンA、B1、B2、D、E、コラーゲン、DHA、EPAなどの栄養素を豊富に含むウナギは、疲労した真夏の体を守ってくれそうです。

清少納言も食べていた「かき氷」

暑さが厳しくなると、かき氷を食べたくなる人も多いでしょうね。

ザク、ザク。シャリ、シャリ。音からして、すでに涼しさ満点です。

実はこのかき氷、平安時代にはすでに食べられていたことをご存じでしょうか。

清少納言の『枕草子』には「あてなるもの(上品なもの)」の一つとして「削り氷(ひ)に甘葛(あまずら)入れて新しき鋺(かなまり)に入れたる」ものがあげられています。

これを現代語に訳すると、削った氷に甘葛という植物の汁をかけて、新しい金属のお椀に入れたものとなります。

つまり、清少納言は今で言うかき氷も食べていたということですね。

ただし、当時、氷はたいへん貴重なものだったので、かき氷を食べられたのは、上流階級の人だけだったようです。

人の心を魅了する「ひまわり」

炎天下に咲く、真夏の花といえば、「向日葵(ひまわり)」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

ひまわりは北アメリカ原産のキク科の一年草です。

日本にもたらされたのは江戸時代前半で、当初は「丈菊(じょうぎく)」と呼ばれていたようですが、のちに「ひまわり」と呼ばれるようになりました。ほかに「日輪草(にちりんそう)」ともいいます。

鮮やかな黄色などの花を咲かせ、高さ2m以上になることもあるヒマワリは、人々の心を魅了してきました。

明治~昭和期の俳人で小説家の高浜虚子は、物騒にも思える、以下の一句を詠んでいます。

〜向日葵がすきで狂ひて死にし画家〜

これは、ひまわりを好んで描いた、オランダの画家、ゴッホのことを詠んだ句です。

ゴッホは37歳のときにピストル自殺をしました。しかし、彼の作品は今も私たちを魅了してやみません。

「八朔(はっさく)」は果物ではない?

「八朔」は「はっさく」と読みます。

はっさくと聞くと、ミカンの一品種の「ハッサク」を思い浮かべる人が多いでしょう。

それも八朔なのですが、八朔は本来、旧暦の「八月朔日(さくじつ)」の略です。「朔日」は毎月の第一日、つまり、一日(ついたち)のことですから、八朔は、八月一日の意味になりますね。

旧暦の8月は、新暦の9月ごろに相当します。かつては田畑にお供えをしたり、作物の実りを神に祈ったりしていました。

新暦が採用された後も、日付をそのままとって、8月1日を八朔としたため、京都の祇園(ぎおん)では、暑いさなかに、芸妓や舞妓の皆さんが祇園町のお茶屋に挨拶に向かいます。その表情は涼しげです。さすが、プロですね。

暑い、暑い、とばかり思うより、ウナギやかき氷などを食べて、精と元気をつけ、大暑の候を前向きに過ごしていきましょう。
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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。