【1】春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
【読み方】
はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま
【詠み人】
持統天皇……天智天皇の皇女で、天武天皇の皇后になる。のち、第41代天皇。
【意味】
いつの間にか、春が過ぎて、夏が来たらしい。夏になると、白い衣を干すという天の香具山に、その白い衣が干してあるよ。
【解説】
香具山は、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)とともに「大和三山(やまとさんざん)」の一つで、現在の奈良県橿原(かしはら)市にあります。
作者の持統天皇は飛鳥時代の694年に都を藤原京に移したことでも知られ、その藤原京から神々しい香具山が見えました。
当時、香具山では、夏になると、真っ白な衣を干す習慣がありました。それを見た人々は季節の移り変わりを感じ取ったのでしょう。
持統天皇もその思いは同じだったようで、すがすがしい一首へと結実しています。
【出典】
新古今和歌集
はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま
【詠み人】
持統天皇……天智天皇の皇女で、天武天皇の皇后になる。のち、第41代天皇。
【意味】
いつの間にか、春が過ぎて、夏が来たらしい。夏になると、白い衣を干すという天の香具山に、その白い衣が干してあるよ。
【解説】
香具山は、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)とともに「大和三山(やまとさんざん)」の一つで、現在の奈良県橿原(かしはら)市にあります。
作者の持統天皇は飛鳥時代の694年に都を藤原京に移したことでも知られ、その藤原京から神々しい香具山が見えました。
当時、香具山では、夏になると、真っ白な衣を干す習慣がありました。それを見た人々は季節の移り変わりを感じ取ったのでしょう。
持統天皇もその思いは同じだったようで、すがすがしい一首へと結実しています。
【出典】
新古今和歌集
【2】夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ
【読み方】
なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん
【詠み人】
清原深養父(きよはらのふかやぶ)……平安時代中期の歌人。清原元輔(きよはらのもとすけ)の祖父で、清少納言の曾祖父にあたる。琴の名手でもあった。
【意味】
夏の夜はたいへん短いので、まだ宵の口だと思っているうちに、明けてしまった。月は雲のどのあたりに隠れて、宿をとっているのだろうか。
【解説】
夏は昼が長い。逆にいえば、夜は短い。まだ夜だと思っていたら、夜が明けていた。月は雲のどこかに隠れているのだろうと、ユーモラスに詠んでいます。
作者の清原深養父の曾孫、清少納言の随筆『枕草子』に「夏は夜、月のころはさらなり」の一節があります。ひいおじいさんの影響を受けて書かれたくだりかもしれません。
【出典】古今和歌集
なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん
【詠み人】
清原深養父(きよはらのふかやぶ)……平安時代中期の歌人。清原元輔(きよはらのもとすけ)の祖父で、清少納言の曾祖父にあたる。琴の名手でもあった。
【意味】
夏の夜はたいへん短いので、まだ宵の口だと思っているうちに、明けてしまった。月は雲のどのあたりに隠れて、宿をとっているのだろうか。
【解説】
夏は昼が長い。逆にいえば、夜は短い。まだ夜だと思っていたら、夜が明けていた。月は雲のどこかに隠れているのだろうと、ユーモラスに詠んでいます。
作者の清原深養父の曾孫、清少納言の随筆『枕草子』に「夏は夜、月のころはさらなり」の一節があります。ひいおじいさんの影響を受けて書かれたくだりかもしれません。
【出典】古今和歌集
【3】ほととぎす 鳴きつる方を 眺むれば ただ有明の 月ぞ残れる
【読み方】
ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
【詠み人】
後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)…… 平安時代後期の歌人。本名は藤原実定(ふじわらのさねさだ)。藤原定家の従兄弟。文学や音楽などの才能に恵まれ、左大臣に出世した。
【意味】
ほととぎすが鳴いたと思って、その方向を眺めると、ただ、明け方の月だけが残っていた。
【解説】
ほととぎすは夏の訪れを告げる鳥として、古来親しまれています。
平安時代の貴族は、ほととぎすの初音(はつね/その年の初めての鳴き声)を聞くために、寝ずに夜明けを待つことがありました。それが風流な遊びでもあったのです。
作者の後徳大寺左大臣はこの日、お目当てのほととぎすには出会えなかったけれど、美しい月を見ることはできたようです。
ほととぎすの鳴き声と明け方の月。それもまた、素敵な取り合わせです。
【出典】
千載和歌集
ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる
【詠み人】
後徳大寺左大臣(ごとくだいじのさだいじん)…… 平安時代後期の歌人。本名は藤原実定(ふじわらのさねさだ)。藤原定家の従兄弟。文学や音楽などの才能に恵まれ、左大臣に出世した。
【意味】
ほととぎすが鳴いたと思って、その方向を眺めると、ただ、明け方の月だけが残っていた。
【解説】
ほととぎすは夏の訪れを告げる鳥として、古来親しまれています。
平安時代の貴族は、ほととぎすの初音(はつね/その年の初めての鳴き声)を聞くために、寝ずに夜明けを待つことがありました。それが風流な遊びでもあったのです。
作者の後徳大寺左大臣はこの日、お目当てのほととぎすには出会えなかったけれど、美しい月を見ることはできたようです。
ほととぎすの鳴き声と明け方の月。それもまた、素敵な取り合わせです。
【出典】
千載和歌集
【4】風そよぐ 楢の小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
【読み方】
かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
【詠み人】
従二位家隆(じゅにいいえたか)……本名は藤原家隆(ふじわらのいえたか)。平安時代末期から鎌倉時代前期の歌人。『新古今和歌集』の撰者の一人で、藤原定家のライバル。
【意味】
風がそよそよと楢(なら)の葉に吹いている、楢の小川の夕暮れは、涼しくて、秋のようだけれど、みそぎの行事が夏であることのしるしだよ。
【解説】
「楢の小川」は、現在の京都市にある上賀茂神社(かみがもじんじゃ)の境内を流れる御手洗川(みたらしがわ)のことで、それとともに、ブナ科の樹木の楢をかけています。
「みそぎ」は水で身を清め、罪や穢(けが)れを祓(はら)う行事のことです。ここでは、旧暦の6月末日に行われる「夏越しの祓え」を指しています。
まもなく夏が終わるという時節の歌です。
【出典】
新勅撰和歌集
百人一首を改めて読んでみて、和歌の美しい言葉に感じ入ったり、昔の人の自然観や季節感に心を動かされたりした人もいるでしょう。
残りの96首にも触れてみると、新たな発見がきっとあるでしょう。
» 何時間で乾く?お洗濯情報
» お天気ニュースをアプリで読む» お天気ニュース 記事一覧
かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは みそぎぞなつの しるしなりける
【詠み人】
従二位家隆(じゅにいいえたか)……本名は藤原家隆(ふじわらのいえたか)。平安時代末期から鎌倉時代前期の歌人。『新古今和歌集』の撰者の一人で、藤原定家のライバル。
【意味】
風がそよそよと楢(なら)の葉に吹いている、楢の小川の夕暮れは、涼しくて、秋のようだけれど、みそぎの行事が夏であることのしるしだよ。
【解説】
「楢の小川」は、現在の京都市にある上賀茂神社(かみがもじんじゃ)の境内を流れる御手洗川(みたらしがわ)のことで、それとともに、ブナ科の樹木の楢をかけています。
「みそぎ」は水で身を清め、罪や穢(けが)れを祓(はら)う行事のことです。ここでは、旧暦の6月末日に行われる「夏越しの祓え」を指しています。
まもなく夏が終わるという時節の歌です。
【出典】
新勅撰和歌集
百人一首を改めて読んでみて、和歌の美しい言葉に感じ入ったり、昔の人の自然観や季節感に心を動かされたりした人もいるでしょう。
残りの96首にも触れてみると、新たな発見がきっとあるでしょう。
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参考資料など
『日本の365日を愛おしむ』(著者/本間美加子、発行所/飛鳥新社)、『日本の365日に会いに行く』(編著/永岡書店編集部、発行所/永岡書店)、『楽しく覚える百人一首』(著者/あんの秀子、発行所/成美堂出版)、『まんが 百人一首大辞典』(監修/吉海直人、発行所/西東社)、『一冊でわかる 百人一首』(監修/吉海直人、発行所/成美堂出版)、『イラストでサクサク覚える 東大生の百人一首ノート』(著者/東京大学かるた会、発行所/すばる舎)、『暗記 百人一首』(編者/ダイヤモンド社、発行所/ダイヤモンド社)、『知識ゼロからの百人一首』(監修/有吉保、発行所/幻冬舎)