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早期発見のポイントは? 季節、環境の変わり目に注意したい帯状疱疹

2023/04/05 09:42 ウェザーニュース

新年度を迎え、進学や就職などで生活パターンが変わったり、住み慣れた土地から転居したりという人も少なくないと思います。新たな暮らしに胸をときめかせる一方で、疲れやストレスがたまる可能性も高まりがちな季節でもあります。

こうした疲れやストレスによって帯状疱疹(たいじょうほうしん)を発症する可能性が指摘されています。帯状疱疹を予防するにはどのようにすればいいのか、またワクチンの有効性などについて日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター科長の山口順子先生に解説して頂きました。

80歳までに3人に1人が発症

近年、高齢者だけでなく若い世代にも帯状疱疹が増えているといわれています。帯状疱疹とはどのような症状をいうのでしょうか。

「まず『疱疹』とは、丘疹(きゅうしん)と呼ばれるわずかな皮膚の盛り上がりやぶつぶつが集まり、赤い斑点が生じる急性炎症性の皮膚疾患のことです。『帯状疱疹』は、これらが体の左右どちらか一方の神経に沿って帯状に生じることから、そう呼ばれます。

皮膚に疱疹が生じる以前の初期症状として、神経の炎症によって違和感やかゆみ、痛みが生じます。これらは疱疹が現れる数日前から1週間ほど前に感じる場合が多いのですが、疱疹と同時か遅れて感じることもあります。疱疹発生の前後に発熱したりリンパ節が腫れたりするケースもあります」(山口先生)

「ひりひり」「じんじん」など痛みの程度はさまざまですが、「焼けつくようだ」と感じるほどひどい症状を示す患者もいるそうです。

「帯状疱疹はおもに胸や背中、腹部など上半身に現れますが、顔面や目の周りに生じることもあります」(山口先生)

帯状疱疹はどのような原因で発症するのでしょうか。

「直接には水ぼうそうと同じ『水痘・帯状発疹ウイルス』が原因です。幼少期に水ぼうそうにかかることが多い日本人では、成人の9割ほどがこのウイルスの抗体を有していますが、ウイルス自体は背骨周辺の神経細胞内で症状を出さずに潜伏しています。

加齢や疲労、ストレスの蓄積によって体の免疫力が低下すると水痘・帯状発疹ウイルスが再び活性化を始め、帯状発疹を引き起こすのです。

帯状疱疹は60歳以上で年間100人に1人の割合で発症しているとの研究データがあります。50歳代から発症率が高まり、80歳までに3人に1人が発症するともいわれています」(山口先生)

合併症や後遺症が生じるケースも!?

3週間ほどで治癒するはずの帯状発疹が「怖い」とされるのは、どのような理由からなのでしょうか。

「特に目や鼻の周りに現れた『眼部帯状疱疹』は、注意が必要です。発症の初期段階から結膜炎や角膜炎、ぶどう膜炎などを併発して、視力低下や失明に至ることがあるからです。

耳の帯状疱疹と顔面神経まひが現れる『ラムゼイ・ハント症候群』と呼ばれる合併症を引き起こすと、めまいや耳鳴り、難聴などが続きます。

首に発症すると肩から首筋にかけて激しい痛みが生じたり、腕が上げられなくなるなど運動まひの症状が出たりすることがあります。

背中に発症した場合は、自分自身では皮膚の変化が見極めにくいので、特に一人暮らしの方などは注意が必要です。ごくまれに体の両側に発症することがあり、『汎発性(はんぱつせい)帯状疱疹』と呼ばれます」(山口先生)

他にも合併症や後遺症が生じるケースがあるようです。

「帯状疱疹の合併・後遺症で頻度が高いのは、『帯状疱疹後神経痛(PHN)』です。皮膚症状が治まったのちも、3ヵ月以上にわたって長く痛みが残る場合があります。50歳以上で帯状疱疹を発症した人の約2割がPHNにかかり、発症率は加齢とともに高まっていきます。

ほかにも持続性の痛みや疼痛(とうつう)に加えて、着替えの際の皮膚と下着の軽い接触だけでも痛む『アロディニア(異痛症)』という症状が起き、日常生活や睡眠に支障をきたす場合もあります」(山口先生)

早期発見のポイントは?

帯状疱疹を予防するにはどのような方法がありますか。

「初めに述べたように、帯状疱疹の大きな原因は疲労やストレスなどによる免疫力の低下です。

バランスの良い食事や十分な睡眠に加え、散歩やウォーキングなど体温が少し上がる程度の強さの運動を日々続けてください。激しすぎる運動や長時間のトレーニングは、逆に免疫力を下げてしまいます。日光浴や森林浴も免疫力を高めてくれます。

また、仕事や家庭での環境変化が多い春はストレスが溜まりやすい時季ですので、入浴や音楽、好きなテレビ番組や映画を観たりなど、自分なりのストレス解消法を見つけたりすることも考えましょう。

春の気温の変化に対応することも重要です。寒暖差や気圧変化が大きいと気づかぬうちに体にストレスがかかってしまうので、着脱しやすい服装などで気象変化に対応することを心がけましょう」(山口先生)

帯状発疹を早期発見するためのポイントはありますか。

「神経に沿って体の片側に違和感や軽いピリピリした痛みが現れたら、帯状疱疹の兆候と考えてください。そこに赤い斑点や水ぶくれが生じたら帯状疱疹の可能性が確実視されますので、ためらわずに皮膚科を受診してください。

治療が遅れると痛みの長期化や合併・後遺症の発症につながるリスクが高まりますので、早期発見・早期治療が重要です。

また、特に子どもなど周囲への二次感染を防ぐため、水ぶくれ部分には触らず、触れたらしっかり手を洗ってください」(山口先生)

ワクチン接種で予防できる?

帯状疱疹を予防するワクチンはありますか。

「帯状疱疹の予防を目的として、50歳以上の方へ2016年に水痘ワクチンの生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン、商品名『ビケン』)、2020年には、不活性化ワクチン(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン、商品名『シングリックス』)も厚生労働省から認可されました。

ただし、どちらも予防接種法に基づいて公費負担がなされる定期接種ではありませんので保険適用はなく、任意接種とされているため、現状では接種料金は全額自己負担となります。

生ワクチンは1回の接種で8000円程度、不活性化ワクチンは2回の接種が必要で1回2万円程度かかります。接種を希望される方は必ずかかりつけ医などに相談してください」(山口先生)

新生活をよりよいものにするためにも、規則正しい生活で免疫力を保ち、帯状疱疹の予防に努めましょう。

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