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ドライクリーニングのメリットとデメリットは? 知っておきたい、家庭洗濯との違い

2023/03/16 04:58 ウェザーニュース

3月に入ってからは暖かい日が多く、今後も全国的に高温傾向となりそうです。

このため、そろそろ厚手のコートなどをクリーニングに出そうと考えている人も多いのではないでしょうか。

ウェザーニュースで「冬物コートはもうしまいましたか?」というアンケート調査を実施したところ、「まだ」の回答が多かったものの、北海道や東北をのぞくエリアでは、「一部しまった」を含めすでにしまい始めている人が3〜4割に上ることがわかりました。

特に九州や四国などでは、しまい始めている人の割合が高く、今後もより暖かい西日本から徐々に冬物コートをしまう人が増えていきそうです。

ところで、クリーニング店に衣類を持ち込む際、よく見聞きするのが「ドライクリーニング」という言葉です。

ドライクリーニングとはどんな洗濯法で、どのようなメリット、デメリットがあるのかについて、NPO法人クリーニング・カスタマーズサポート(福島県須賀川市)の鈴木和幸代表に伺いました。

ドライクリーニングとは?

ドライクリーニングとはどのような洗濯法を意味し、いつ頃から用いられているのでしょうか。

「ドライクリーニングとは水洗いでなく、油性の揮発性有機溶剤に洗剤を加えて、専用の洗濯機で衣類を洗う方法です。

純毛(ウール)や絹(シルク)、綿や麻などの天然素材は、水洗いだと縮んでしまうという問題がありました。しかし、19世紀に油を使って衣類を洗う方法が発見され、これがドライクリーニングの歴史の始まりとされています。揮発性の油によるドライクリーニングは明治時代以降日本にも伝わり、全国に広がりました。

1965(昭和40)年頃、金属洗浄の手法を応用したテトラクロロエチレンによるドライクリーニングが導入されました。テトラクロロエチレンは洗浄力が高く、石油系溶剤の弱点である火災の危険もないことから人気が高まりましたが、のちに毒性が強く発ガン性の疑いがあることも判明しました。

1980(昭和55)年頃には、液化フロンガス(CFC)によるドライクリーニングが広まりました。CFCは沸点(ふってん)が40℃程度なので、熱によってモヘアやアンゴラ、カシミアなどのデリケートな衣料品の素材を痛めないことから、一時は『夢の溶剤』ともいわれました。

しかし、テトラクロロエチレンとフロンガスは規制が強まり、現在のドライクリーニングに使われることは原則禁止となり、代替フロンの使用も問題となりました。

なお、住宅地や商業地にクリーニング工場を建てる場合は火災予防の観点から、建築基準法の用途制限によって石油系溶剤の使用は違法とされています」(鈴木代表)

「ウェット」や「ランドリー」、「特殊クリーニング」も

クリーニング店などではドライクリーニング以外にどんな洗濯法を採っているのでしょうか。

「ドライに対して『ウェットクリーニング』があります。衣類の見た目やサイズ、風合いなどを損なわないよう、家庭での手洗いに似た弱い力で水洗いする方法です。おもに夏物の背広などに用いられます。

乾燥機のように回転して洗浄する専用の洗濯機に洗剤とアルカリ剤を入れ、水または温水で洗う『ランドリー』という手法もあります。生地を痛めにくく、おもにワイシャツなどを洗います。

そのほか、毛皮や皮革製品、靴やブーツ、カーペットや絨毯、ぬいぐるみなど、通常のクリーニングでは洗えないものを対象にした『特殊クリーニング』も、近年人気が高まっています」(鈴木代表)

家庭洗濯との違いは?

家庭用の洗濯機にも「ドライコース」という設定があるようですが。クリーニング店で行うドライクリーニングとは異なるのですか。

「洗濯機のドライコースは水を使う洗濯方法で、ドライクリーニングのように有機溶剤は使いません。通常の水洗いよりも水流や脱水などの力加減が弱く設定されているコースで、家電メーカーによっては誤解を防ぐため、『ソフトコース』や『手洗いコース』と表示しています。

通常のコースよりも優しく洗えるので、素材がデリケートなセーターやニットなどに適しています」(鈴木代表)

衣類のタグに記された、円形に「ドライ」「P」「F」の印を「ドライクリーニングマーク」と呼ぶと聞きました。その衣類は「有機溶剤を使ったドライクリーニングしかできない」という意味なのですか。

「ドライクリーニングマークは『ドライクリーニングしても大丈夫、できる』の意味で、『しなければならない』という強制的な意味ではありません。ほかに『手洗いマーク』か『洗濯機マーク』のタグが付いていれば、自宅の洗濯機で洗うことが可能です。

逆に『ドライクリーニングマーク』と『水洗い不可』のタグが付いている衣類は、クリーニング店での処理が必要ということになるのです」(鈴木代表)

「水洗い不可」とされる衣類にはどのようなものがありますか。

「素材でいうと、毛、絹、カシミア、レーヨン、皮革製品など。レースやスパンコールなどの装飾がついた製品も水洗いには向きません。

アイテムだと、しわができやすく縮みやすいセーター、カーディガン、ジャケット、スーツ、コート、プリーツスカート、ネクタイなど。とくに高級ブランド品はクリーニング店に持ち込むようにしてください」(鈴木代表)

ドライクリーニングのメリットとデメリット

ドライクリーニングにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

「ドライクリーニングは油性の有機溶剤を用いることから、いちばんに油脂性の汚れが落ちやすいというメリットがあります。具体的には食用油やバターなどによる油汚れや皮脂、ボールペンのインク、化粧品などが挙げられます。

水を使わないことから、カシミアやレーヨンなどのデリケートな製品が、型崩れしたり色落ちしたりしにくいこともメリットです。

元々の風合いが保てるのも大きなメリットといえるでしょう。コートやスーツ、セーターなどは水洗いすると、縮んだり毛羽立ったりしがちですが、ドライクリーニングならまずそのようなことはありません」(鈴木代表)

ドライクリーニングによるデメリットは。

「ドライクリーニングは特性上、水溶性の汚れを落とすには不向きです。具体的には、汗や手あかによる汚れ、塩やしょうゆ、果汁、スープ、アルコールなどによる汚れです。

これら水溶性の汚れに気づいたら、クリーニング店にドライクリーニングを依頼する前に、薄めた中性洗剤で落としておくのがいいでしょう。

近年、クリーニング業界内の過当競争もあって、工場でのドライクリーニング作業後の乾燥が不十分で石油系有機溶剤の成分が残り、不快な臭いが生じてしまっていたというケースも、ごくまれですが耳にします。その状態でビニール袋を被せたままクローゼットなどに衣類を収めてしまうと、溶剤の臭いがいつまでも残ってしまいますので注意してください」(鈴木代表)

冬物の厚手の衣類は乾燥に時間が必要になるため、信頼の置けるクリーニング店に依頼するようにしたいといいます。

ドライクリーニングのメリット、デメリットをよく理解して、大切な衣類を次のシーズンも気持ちよく着られるようにしましょう。
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