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「陸上最大の肉食獣」であるホッキョクグマは、ウサイン・ボルトより速い!?

2023/02/27 05:03 ウェザーニュース

2月27日は「国際ホッキョクグマの日(International Polar Bear Day)」でもあります。

アメリカとカナダに本部を置く動物保護団体、ポーラーベアーズ・インターナショナル(Polar Bears International)が2005年に制定しました。ポーラーベアーズ(Polar Bears)はホッキョクグマのことです。

国際ホッキョクグマの日を契機に、シロクマ(白熊)ともいわれるホッキョクグマの生態やホッキョクグマが置かれている現状などを見てみましょう。

500gの赤ちゃんが800kgに!?

野生のホッキョクグマは北極圏(北緯66度33分以北の地域)とその周辺域に生息しています。国でいうと、カナダ、アメリカ、ノルウェー、ロシア、デンマークの5カ国で確認されています。
ホッキョクグマというくらいなので、南極には生息していません。

ホッキョクグマは植物などを食べることもありますが、基本的には肉食です。

生まれたときは500~700g。人間の赤ちゃんはおよそ3000gだから、ずいぶん小さいことがわかります。

ところが、そこからどんどん成長し、肉食獣としては、陸上で最も大きくなります。
体重はオスが300~650kg、メスが150~250kgほど。最大級のオスは800kgに達することもあるというから、まさに巨体です。

狩りは主に海氷(海に浮かぶ氷)の上で行い、アザラシ、魚類、鳥類、鳥類の卵、漂着したクジラの死体などを食べます。

ホッキョクグマでも勝てない相手とは?

ホッキョクグマは巨体ですが、足がたいへん速く、なんと、人類最速のウサイン・ボルト氏(ジャマイカ)にすら勝てると考えられます。

100m走の世界記録は、2009年8月に世界陸上ベルリン大会でボルト氏が出した9秒58です。これを時速に換算すると、約37.6kmになります。

では、ホッキョクグマはどれくらいの速度で走れるかというと、時速40kmほど。短距離であれば、「世界最速の人・ボルト」よりも速く走れるのです。

泳ぎも得意で、70km以上泳ぎ続けることができ、2分近く潜っていることもできるといいます。

巨大で力強く、俊敏でもあるホッキョクグマは、水陸のどちらでも向かうところ敵なしに思えます。

実際、ホッキョクグマは北極圏の食物連鎖のほぼ頂点に立っています。

「ほぼ」と書いたのは、シャチに負けて、食べられてしまうことがあるからです。

無敵に見えるホッキョクグマですが、水中(海中)では「海の殺し屋」や「海のギャング」などともいわれるシャチにはかなわないようです。

シロクマは、本当はクロクマ?

シロクマともいわれるホッキョクグマは、まさに白く見えます。しかし実は、ホッキョクグマの体(皮膚)は白くありません。それどころか、黒いのです。

ホッキョクグマの顔を見ると、鼻は黒いことがわかりますね。体全体も、鼻のように黒い色をしています。

ではなぜ、白く見えるかというと……毛が白いから? いいえ、透明だからです。

ホッキョクグマの体毛は透き通っていて、ストローのように穴があいています。そこに光が当たると、乱反射して、白く見えるのです。

体毛が空洞になっていることで、熱を保ち、体を寒さから守ることになり、体が白く見えることで、狩りをしやすくなります。

生活を脅かされているホッキョクグマ

「強いホッキョクグマ」は今、弱い立場に追い込まれています。

地球温暖化(気候変動)の影響で、北極圏とその周辺域の海氷が減少し続けているからです。この地域は地球温暖化の影響を非常に大きく受けているのです。

北極圏の温暖化によって、海面が上昇したり北極海の海底にあるメタンガスが流出したりすることも懸念されています。

ホッキョクグマにとっても、温暖化の影響は甚大です。海氷が減少していることで狩りができにくくなり、栄養不足でやせ細るホッキョクグマも見られるようになっています。

子育てにも影響が出ていて、母乳が出にくくなり、子供を育てられない事態も起きています。

こうした状況を踏まえ、自然保護団体の国際自然保護連合(IUCN)では、ホッキョクグマを絶滅危惧種の一つに指定しています。

さらに、何らかの対策を講じなければ、2100年までに絶滅すると予測している研究もあります。


地球温暖化の影響を受けているのは、もちろんホッキョクグマだけではありません。さまざまな動植物が多大な影響を受けています。

「国際ホッキョクグマの日」をきっかけに、地球環境やエネルギー問題を改めて考え、日々の暮らしを顧みたいですね。

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参考資料など

『ホッキョクグマ』(作/ジェニ・デズモンド、訳/福本由紀子、発行所/BL出版)、『ちびしろくまのねがいごと』(作/小林深雪、絵/庄野ナホコ、監修/今泉忠明、発行所/講談社)、『白銀世界の王者ホッキョクグマ対命知らずの猛者グリズリーベア』(著者/イザベル・トーマス、訳/今西 大、発行所/鈴木出版)、『日本の365日に会いに行く』(編著/永岡書店編集部、発行所/永岡書店)、WWFジャパン「ホッキョクグマ残りおよそ26,000頭」(https://www.wwf.or.jp/campaign/speciallp/polarbear/)