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恵方巻きや大豆だけじゃない!? 節分に食べると縁起が良い食べ物

2023/02/04 04:48 ウェザーニュース

2月3日は節分です。節分の語源は「季節を分ける」ですが、昔の暦(こよみ)で春が始まる立春(りっしゅん)の前日であるこの日が「冬と春を分ける日」として、とくに大切に扱われるようになりました。

節分の日には年齢またはプラス1の数だけ大豆を食べたり、近年では恵方(えほう)巻きを食べたりするのが縁起のいい行いとされ、年中行事のひとつともなっています。さらに、地域によってはそのほかにさまざまな食べ物が「節分に食べると縁起が良い」とされているようです。

福豆とも呼ばれる大豆や恵方巻き以外に、節分にどんな食べ物が食べられているのかなどについて、歳時記×食文化研究所代表の北野智子さんに教えて頂きました。

豆まきの由来

いまの日本では、立春は国立天文台の観測によって、「太陽黄経(地球上から見た太陽の位置)が315度になった瞬間が属する日」と定められているそうです。今年(2023年)も含めて2月4日にあたることが多いのですが、一昨年(2021年)は1897年以来124年ぶりに2月3日が立春になり、節分も2月2日でした。

今年は例年どおり2月3日が節分ですが、そもそも節分に豆を撒(ま)くのはどうしてなのでしょうか。

「節分に豆を撒くのは、邪気や疫病などを祓(はら)うために鬼の面をかぶった人を桃の木で作った弓矢で追い払う、追儺(ついな)や鬼やらいと呼ばれる古代中国の儀式が起源とされています。

豆などの穀物は霊力をもつといわれます。撒くときの『鬼は外、福は内』の掛け声には、寒い冬を象徴する鬼を祓い、暖かな春の福を迎えるという意味があるようです。

昔は立春から一つ年を重ねるとされていましたので、節分には神棚に供えた『福豆』の大豆を年齢より1個多い数だけ食べる習慣が定着しました。

北海道、東北、信越地方や鹿児島県、宮崎県などでは、豆まきにラッカセイ(落花生)を使うそうです。地元で採れることや、落ちたものでも食べられるからなどが理由のようです」(北野さん)

節分で食べるものについてウェザーニュースが実施したアンケート調査でも、次のようなコメントが寄せられました(2023年1月28〜29日実施)。

「豆を拾った後で、食べる時に雪の上等、少し汚れた所にあっても、拾えますからね」(北海道)、「大豆ではなく殻付き落花生を撒いて、歳の数だけ食べますね。玄関先の雪に埋もれても見つけやすい!」(北海道)、「外に撒く豆は、大豆だと雪に埋もれて見えないので、落花生を撒いてます」(秋田県)。

大阪・船場の旦那衆による縁起かつぎが広まった恵方巻き

今年の「恵方」は「丙(ひのえ)」、つまり南南東のやや南の方角だそうですが、十数年前まで恵方巻きはそれほど一般的な縁起物ではなかったような気がします。

「節分に丸かぶりする恵方巻きは、福を巻き込んだといわれる行事食です。いまでは全国的にも有名になっていますが、少し前までは大阪を中心とした関西地方だけで食されていたものです。

私ももちろんほとんどの大阪人は、節分には日本中で巻き寿司を食べていると思っていたものです。元々は船場(せんば=大阪市中央区)で始まったという説が有力で、船場の旦那(商店主)衆が縁起をかつぎ、『福を巻き込み、福を切らないように丸ごとかぶりついて食べていた』ものが広まっていったといわれています。

所によっては節分の日に恵方を向いて日本酒を飲みながら願い事をする、『恵方呑(の)み』という習慣もあるようです」(北野さん)

イワシやネギ、ニンニクを焼いた悪臭で鬼を祓う地域も

福豆や恵方巻き以外に節分に食べる縁起のいい食べ物には、どんなものがありますか。

「『やいかがし』といって、焼いたイワシ(鰯)の頭をヒイラギ(柊)の枝に刺し、門口にかかげる風習が全国的に行われています。

やいかがしは、焼き嗅(か)がしの意味で、イワシの頭を呪物(じゅぶつ=超自然的な霊力や呪力をもつとされて神聖視される物)とした魔除けとされています。イワシを焼いたときに出る臭気によって邪鬼の侵入を防ぐ呪法です。また、ヒイラギの葉にある棘(とげ)が鬼の目を刺すといわれ、どちらも鬼が嫌がるものとされています。

イワシの代わりに、やはり臭いが強いニンニクやネギを使う地方もあります」(北野さん)

田畑の「かかし」の語源も、「かがし(かがせるもの)」だそうです。かかしは元々、鳥や獣がその臭気を嫌って近づかないように、獣肉や毛髪などを焼いて竹などに付け立てたものでした。

「飲み物では、『福茶』があります。鬼打ち豆と梅干を入れたお茶を飲むと、災厄から逃れられるという風習で、『年取り豆』を食べるのと同じ御利益があるとされています。

お年寄りが年齢の数だけの豆を食べるのは大変ですから実年齢またはプラス1個(数え年)分の数の豆に熱いお茶を注いで飲むことを『福茶』と呼ぶ地域もあります」(北野さん)

「年越しそば」や「出世そば」、コンニャクを食べる風習も

節分にそばを食べる地域も相当に多いと聞きます。

冬と春の節目の日である立春は、昔は正月とされてきたので、その前日に節分そばを食べるという習慣は、清めのそばを食べて新しい年を迎えるという年越しそばと、同じような意味合いもあるのでしょう。

大阪では古くから、節分に芸人さんたちが『名を上げる』の語呂合わせで、“菜の花”と“おあげさん(油揚げ)”が入ったそばを縁起物として食べたことにあやかって、『節分出世そば』と称して食べる風習もあります。

関西では節分の日にぜんざいを振る舞って、厄除(やくよけ)祈願をします。これは古くから、ぜんざいに使われる小豆の赤い色が『邪鬼を祓う色』とされているためです。

また、コンニャクは『胃の箒(ほうき)、腸の砂おろし』などといわれ、体内をきれいにすると信じられてきた食べ物です。『名物はからっ風とかかあ天下と上州こんにゃく』といわれる群馬県はもちろん、四国でも節分にコンニャクが好んで食べられるそうです」(北野さん)

前述のアンケートではウェザーニュースにも、「京都北部の祖父母の家では、節分におぜんざいを作っていました」(京都府)、「旧暦に拘りを持っている祖父母は『節分の日は大晦日ぞ、コンニャク食べて体の悪いものを出して新年迎えるんぞ』と作ってくれたものです」(香川県)などの声が寄せられました。

「私は節分に大豆と恵方巻きのほか、恵方呑みの日本酒に節分鰯をアテ(つまみ)としていただきます。ぜんざいも必ず食べますが、恵方巻きを食べ過ぎた際は、立春の朝に持ち越します」(北野さん)

そのほか、西日本では麦飯、関東の一部では精進料理として肉類抜きのけんちん汁、山口県ではクジラ(鯨)料理を節分に食べるなどの例もあるようです。

福豆と恵方巻きばかりではない、節分のさまざまな縁起物とされる食べ物を頂いてみてはいかがでしょうか。
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参考資料など

『三省堂年中行事事典』/田中宣一・宮田登編/三省堂、『和食文化ブックレット2 ユネスコ無形文化遺産に登録された和食 年中行事としきたり』/和食文化国民会議監修・中村羊一郎著/思文閣出版、『和食文化ブックレット8 ユネスコ無形文化遺産に登録された和食 ふるさとの食べもの』/和食文化国民会議監修・今田節子・清絢著/思文閣出版、『ニッポンの縁起食』/柳原一成・柳原紀子著/NHK出版、『日本の「行事」と「食」のしきたり』/新谷尚紀監修/青春出版社、『和のしきたり』/新谷尚紀著/日本文芸社、『蕎麦辞典』/植原路郎著/東京堂出版、『にっぽんの七十二候』/酒井彩子編/枻出版社、『「まつり」の食文化』/神崎宣武著/角川選書、『飲食事典』/本山荻舟著/平凡社、『野﨑洋光の縁起食』/野﨑洋光/中日映画社、『日本の味 探求事典』/岡田哲編/東京堂出版