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熱々が嬉しい時期でも、注意! 熱過ぎる物に潜むリスクとは

2023/02/01 14:59 ウェザーニュース

寒い時期には、温かい飲み物がほしくなるものです。しかし、「温かい」を通り越して熱過ぎる飲み物や食べ物は、気をつける必要があります。食道がんのリスクを高める恐れがあるというのです。

どのくらい熱いと危険なのか、安全なのは何度までなのか、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。

熱過ぎる飲み物はがんのリスクを高める

国の行政機関で「アツアツな飲み物にご注意!」という情報が出ていると聞きました。

「農林水産省の消費・安全局食品安全政策課が注意喚起しています。元はWHO(世界保健機関)の専門機関であるIARC(国際がん研究機関)が出した調査報告によるものです」

IRACは次にあげる2つのことから、発がんについて限られた証拠があるとし、“グループ2A”(人に対しておそらく発がん性がある)に分類しました。

▼中国、イラン、トルコ、南米など、茶やマテ茶を70℃以上の高温で飲用する地域における疫学研究の結果、飲む温度が高くなる(65℃以上)と食道がんの発生リスクが増加した

▼動物実験の結果、65℃以上の水をラット・マウスに投与すると食道がんが発生した

「例えば、イランで約5万人を対象にFarhad Islami氏(テヘラン大学)らが行った研究では、70℃を超える熱いお茶を飲む人は、65℃を下回るお茶を飲む人より、食道がんの罹患率が約8倍も増加したという結果が出ています」(吉田院長)

なぜ熱いと発がんリスクが高まるのか

なぜ熱過ぎると食道がんの発症リスクが高まるのでしょうか。

「食道は筋肉や粘膜などの層で形成されています。食べ物や飲み物は、口から入ると食道の筋肉が収縮することによって胃に運ばれます。

食道は口から入った食べ物に直接触れる気管です。熱いものやアルコール、たばこ、辛いものなどの強い刺激を受けると、食道の細胞の遺伝子が傷つけられてしまいます。何度も傷つくとそれを修復するために細胞分裂が頻繁に行われますが、その過程でがん細胞ができやすくなるのではないかと考えられます。

がん細胞が発生しても通常は免疫の働きで排除できますが、リスクを高める生活習慣が多いと排除できなくなり、がんを発症しやすくなるのです」(吉田院長)

お茶やコーヒーを淹れる際の湯の温度は?

私たちは、普段どれぐらいの温度でお茶やコーヒーを飲んでいるのでしょうか。農林水産省の資料には「お茶やコーヒーを淹れる際の湯の温度」が紹介されています。

その資料によると、紅茶やほうじ茶は100℃の熱湯、コーヒー(レギュラー)は90〜95℃など非常に熱い状態であることが分かります。

あくまでも淹れる際の温度なので、ティーポットや急須からカップなどに注ぐと、温度は下がりますが、それでもかなりの高温です。

また、お味噌汁の好みの温度についてウェザーニュースでアンケート調査を実施したところ、「熱々」という回答が約半数の47%に上りました。飲み物だけでなく、熱過ぎる食べ物にも注意したほうが良さそうです。

食道がんを予防するには

食道がんを予防するには、熱々の状態はできるだけ避けた方が良さそうです。

「お茶やコーヒーなどの飲み物は、できるだけ熱々で飲むのを避けて、少し冷ましてから口にする習慣を身に付けましょう。今の時期、おでんや鍋物などの熱々の食べ物も同じです。また、食道の粘膜を刺激するような辛過ぎる食べ物も避けた方が良いでしょう。

その他、よく言われる習慣ですが、喫煙者は禁煙し、アルコールは適量に抑えましょう。何よりもバランスの良い食事、適度な運動、規則正しい生活が大切です」(吉田院長)

熱い飲み物は体も心も温まり、寒い季節には欠かせません。安らぎタイムを続けるためにも、熱々の状態だけは避けて、少し冷まして飲むよう心がけましょう。
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参考資料など

農林水産省「国際がん研究機関(IARC)によるコーヒー、マテ茶及び非常に熱い飲料の発がん性分類評価について」、同「アツアツな飲み物にご注意!
」、IARC Monographs evaluate drinking coffee, maté, and very hot beverages、Farhad Islami,et al. Tea drinking habits and oesophageal cancer in a high risk area in northern Iran: population based case control study. BMJ. 2009 Mar 26;338:b929.