facebook line twitter mail

「雪女」は冬の季語 各地に残る「雪女伝説」が意味すること

2023/01/21 10:04 ウェザーニュース

日本には、いろいろな伝説や怪談があります。冬であれば、「雪女」の話もその一つですね。

決して見てはいけません。決して話してはいけません。決してウソをついてはいけません。

……昔話や伝説には、こうした内容や教訓が含まれているものが多くあります。

決して話してはいけない。そう言われても、話してみたくなるのが、人情でもあります。

「雪女」にも、そうした話があります。ある雪女にまつわる話を紹介しましょう。

吹雪の中、白く美しい女が現れて……

武蔵国(むさしのくに/今の東京都と埼玉県のほぼ全域と神奈川県の一部)のある村に、茂作(もさく)と巳之吉(みのきち)という二人の木こりが住んでいました。茂作は老人で、巳之吉は18歳の若者です。

二人で森に出かけた、ある寒い日の夕暮れ。帰り道で、ひどい吹雪に遭ってしまいました。

小屋を見つけた茂作と巳之吉は、中で吹雪をしのぐことに。年老いている茂作はすぐに寝入ってしまいましたが、若い巳之吉はなかなか寝つけません。

しかし、巳之吉もやがて寝入ったのですが、顔に雪が当たったことで、目を覚ましました。すると、そこには、抜けるように色の白い、美しい女が一人、白装束を身につけて立っていたのです。

女は茂作の上にかがみ込み、白い煙のような息を吹きかけました。そして、茂作は死んでしまったのです。

しかし女は、巳之吉には何もしませんでした。「今夜、ここで見たことは絶対に言ってはいけないよ。もし言ったら、おまえを殺すからね」と言い添えて。

ほっそりした、若く美しい娘と結婚

翌年の冬のある晩、巳之吉がひどい吹雪に遭った道と同じ道を歩いていると、前のほうに、背の高い、ほっそりした、美しい娘が歩いていました。

巳之吉が挨拶をすると、娘は小鳥のような心地よい声で答え、言葉を交わすうちに「お雪」という名前であることがわかりました。

巳之吉の住む村に着くころには、すっかり仲良くなった二人。お雪は江戸に向かう途中だったのですが、結局、江戸には行かずに、この村で巳之吉と結婚し、一緒に暮らすことになりました。

お雪は巳之吉との間に10人の子を産みました。男の子も女の子も、色が白く、器量のよい子供たちでした。

お雪は10人の子を産んだのに、村に来たときのまま、若くみずみずしい姿をしていました。

「秘密」を話してしまったばかりに……

ある晩のこと。子供たちが寝入ったあと、お雪が針仕事をしているとき、巳之吉はお雪の姿をつくづく眺めながら、こんなことを口にし始めました。「あれは、俺が18のころだった。森の道を歩いていたら、吹雪に遭って──」と。

そうして巳之吉は、逃げ込んだ小屋に、白く美しい女が現れ、一緒にいた茂作じいさんが亡くなったことなどをお雪に話してしまったのです。

するとお雪は、立ち上がり、夫の顔に鋭い声を浴びせかけたのです。

「それは私じゃ。あのとき、ひと言でも、誰かに話したら、命を取ると、言ったはずだ。じゃが、寝ているあの子らのことを思うと、今となっては、そなたの命をもらうことはできぬ。こうなったからには、子供たちを大事に育ててくだされ。もし子供たちにつらい思いさせるようなことがあったら、その報いはこの私がきっとしますぞ」

お雪は巳之吉にこう言い放ったのでした。そして、お雪は白くきらめく霧となって、ゆらゆらと消えていったのです。

それきり、二度とお雪の姿を見た者はいませんでした。

以上は、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)が著した『雪女』のあらすじです。

雪の精か死者の霊か? 美しくも恐ろしい雪の象徴

雪女の話は、ほかにもたくさんあります。

たとえば、岩手県の遠野では、小正月(こしょうがつ/旧暦の1月15日ごろ)の夜や冬の満月の夜に雪女が出るといわれました。雪女は触るものすべてを雪のかたまりにして、遊ぶのだそうです。

1月15日、子供たちは遊びに行く際、家の人に「今日は雪女が出るぞ。おめだぢ、はやぐ帰ってこいよ」と強く注意されたといいます。

雪女は雪の精や死者の霊と考えられたり、年神様(としがみさま/正月にまつる神)と結びついたりしました。雪は白く美しい世界を現出すると同時に、降り積もったり、吹雪いたりして、恐怖の対象にもなります。

美しさと恐ろしさを併せ持つ雪の性質が雪女につながったとも考えられています。

季語では「天文」に分類される雪女

「雪女」は冬の季語でもあります。

季語を春夏秋冬の時候・天文・地理・行事動物・植物などに分類することがあります。その場合、雪女は「天文」に分類されます。

意外に思う人もいるでしょうが、「人間が天空に見るさまざまな現象の一つ」とする見方によるようです。

1874(明治7)年生まれの小説家で俳人の佐藤紅緑(さとうこうろく)に次の一句があります。

〜三日月の櫛(くし)や忘れし雪女〜

冬の天空に浮かぶ三日月を、雪女が忘れ置いた櫛に見立てているのでしょうか。

美しく、恐ろしく、そして、神秘的な雪女。雪女は今も、山や森や町の雪道で、私たちをそっと見つめているのかもしれません。

>>アプリで他のニュース記事を見る>>お天気ニュース記事一覧

参考資料など

『怪談 小泉八雲怪奇短編集』(作者/小泉八雲、訳者/平井呈一、発行/偕成社)、『雪女 夏の日の夢』(作者/ラフカディオ・ハーン、訳者/脇 明子、発行/岩波書店)、『怪談 小泉八雲のこわーい話⑤ 雪女・その他三編』(原作/小泉八雲、文・絵/高村忠範、発行/汐文社)、『口語訳 遠野物語』(著者/柳田国男、監修/後藤総一郎、口語訳/佐藤誠輔、挿画/笹村栄一、注釈/小田富英、発行/河出書房新社)、『日本の不思議伝説大図鑑 雪女・河童から平将門まで』(監修/湯本豪一、発行/PHP研究所)、『365日の歳時記(上・1月〜6月)』(編著者/夏生一暁、発行/PHP研究所)