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りんごが茶色くなると食味や栄養はどう変わる?

2022/12/06 20:28 ウェザーニュース

りんごはスーパーなどで1年中見かけますが、最も収穫量が多いのは晩秋です。代表的な品種であるふじや王林は、11月~12月が旬で、今シーズンもすでに食べたという人が多いのではないでしょうか。

ウェザーニュースで実施したアンケート調査によると、すでに今シーズンりんごを「食べた」という回答が65%を占める結果となりました。

また、都道府県別に詳しく見ると、青森県は85%、岩手県と長野県は83%が「食べた」と回答しており、りんごの生産量が多い地域ほど、よく食べていることが分かります。
2月頃まで旬が続く品種も多く、これから食卓に並ぶ機会も増えそうです。ところで、りんごをカットしてしばらくすると、果肉が茶色くなるのはなぜでしょうか。この理由について、青森県産業技術センター りんご研究所の田沢純子さんに伺いました。

りんごが茶色くなる理由

どうして切り口が茶色くなるのでしょうか。

「りんごには抗酸化物質のポリフェノールが含まれ、体の免疫機能低下を引き起こす活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除いたりしてくれます。

りんごのカット面が茶色くなる原因は、リンゴポリフェノールの主成分であるプロシアニジンやその他のポリフェノールが酸化されるためです。このように果肉が茶色くなることを褐変(かっぺん)と呼びます。

酸化するということは、その機能が失われるということです。“すりおろし”は細胞の破壊が一番激しいため、包丁などでカットした場合よりも褐変反応が強くなります」(田沢さん)

食味や栄養はどう変わる?

機能が失われると、食味や栄養が低下するのではありませんか。

「りんごが褐変しても、食味的には問題はありません。見た目が気になるという方は、次に紹介している褐変レベルの低い(変色しにくい)りんごを選ぶか、塩水に浸けるなどして酸化を防ぎましょう。また、半分に切ったりんごの表面が褐変した場合などは、表面を薄くカットすればいつものきれいな色の果肉になります。

栄養に関しては、一部損なわれる成分があります。結果的にカット面のプロシアニジンの酸化によって、他の果実成分が酸化するのを守っているのですが、酸化したプロシアニジンは、抗酸化力の一部を使ってしまっています。

プロシアニジンの抗酸化力を体内で取り入れるためには、なるべく早く食べるのが一番です。カットしたらすぐに食べるか、薄い塩水かレモン水に浸けると酸化を遅らせることができます」(田沢さん)

褐変しやすい品種は?

りんごの品種によって、褐変しやすさが変わるのでしょうか。

「その通りです。りんごの褐変レベルを5段階の尺度で示すと、1、2はすりおろしてもあまり褐変せず、3が中程度。4、5と数字が大きくなるほど褐変度が高くなります。

代表的な品種でいうと、すりおろして15分後に褐変しにくいレベル1が"つがる"、レベル2が“世界一”“金星”などです。一方、褐変しやすいレベル5の品種には“彩香”などがあります」(田沢さん)

まったく褐変しない品種、千雪とは?

まったく褐変しないレベル0のリンゴもあるのですね。

「“千雪”という品種は、すりおろしても果肉が変色しません。外観は濃紅色で縞はなく果点が目立ちます。糖度15%程度、甘くて芳香のあるりんごです。

収穫時期は10月中旬から下旬以降。おいしい時期は、普通冷蔵で収穫期から12月下旬ごろまで。CA貯蔵(庫内空気中の酸素を減らし二酸化炭素を増やし、かつ温度を低くする貯蔵法。青果物の呼吸作用が抑制され、鮮度が保たれる)で3月末まで。冷凍保存しても変色しません。

このりんごは、国際特許を取得しました。酸化防止剤が不要なのでサラダやデザート、お弁当、給食、レストラン、加工品開発などさまざまな利用場面が期待できます」(田沢さん)

これからの季節、りんごがますますおいしくなります。好みの品種を見つけて、りんごのある暮らしを楽しみましょう。

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