わが国では2020～2021年、2021～2022年と、2シーズンにわたってインフルエンザの流行が見られませんでした。今シーズンも流行しないのでしょうか？

「2022～2023年シーズンはこれまで以上にインフルエンザへの警戒が必要です。日本感染症学会が一般向けの提言で、今シーズンはインフルエンザが流行する可能性が高いと警告したのです。厚生労働省はこの提言を受けて、記録が残る中で最大の供給量となる約3,521万本のインフルエンザワクチンを確保すると公表しています」（吉田院長）

流行拡大を懸念する背景には、南半球の感染状況があるようです。

「北半球のインフルエンザの予測を立てるには、半年前にシーズンを迎える南半球の発症状況が参考になります。特に政府が正確な発症状況を報告しているオーストラリアのデータは貴重です。

オーストラリアはわが国同様、過去2回インフルエンザの患者が極めて少数でした。しかし2022年は4月後半から報告数が増え、5～6月には例年を超えるレベルの発症者を出しています。今後海外からの入国が緩和されることを考えると、わが国でも秋から冬にかけて同様の流行が起こる可能性があります。

しかも、過去2年間インフルエンザに対する免疫を持たない人が増えていることから、いったん感染が起これば、大流行になる可能性が否定できないのです。オーストラリアで多かったA香港型は、入院や死亡が増加するので、特に警戒が必要です」（吉田院長）

毎年10月からインフルエンザワクチンの接種が始まりますが、今シーズンも接種が推奨されています。

ウェザーニュースで、インフルエンザワクチンの今シーズンの接種予定について、アンケート調査を実施したところ、「接種予定なし」が46%だったのに対し、「接種済み・接種予定」は全体の34%にとどまりました。

年代別に詳しく見ると、「接種予定なし」が10代で57%、20代で52%と半数を超えるなど、若い年代ほどワクチンを接種する予定がないようです。

「今冬もインフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されており、できるだけインフルエンザワクチンも接種することが望まれます。

なかでも、予防接種法によるインフルエンザワクチンの定期接種対象者となっている65歳以上の方や、5歳未満のお子さん、年齢に関係なく心臓や肺などに慢性の持病がある方、悪性腫瘍で治療中の方、高度の肥満の方、なども積極的に接種した方が良いでしょう。

また、これらの方と一緒に生活されている方や学校や職場で人との接触が多い方もワクチン接種が推奨されています」（吉田院長）

新型コロナワクチンとの同時接種は可能なのでしょうか？

「インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンとの同時接種については、2021年9月時点でワクチン分科会は『原則として13日間以上空けることとする』としていましたが、その後、単独で接種した場合と比較して有効性や安全性が劣らないとの報告があることなどから、同時接種の実施が可能となりました。

ただしどちらのワクチンも、アレルギー反応や、頭痛・発熱・吐き気などの副作用が起こる可能性はあります。同時に打つとどちらのワクチンの副作用かが判断できない可能性もありますので、できれば少し間をおいて接種することが望まれます。

また、インフルエンザワクチン以外のワクチンの同時接種については、現時点で安全性に関する知見が十分に得られていないため、実施することができないので注意してください」（吉田院長）

「これまで行ってきたマスクの着用、手洗い、三密の回避や換気、咳エチケットなどの新型コロナ対策は、インフルエンザの予防にも有効です。適度な湿度保持（50～60％）、十分な休養と栄養摂取なども継続して、新型コロナもインフルエンザも防げる生活を習慣づけてください」（吉田院長）

新型コロナが終息しないうちにインフルエンザの流行が始まったとしても、感染症の予防方法は同じです。ワクチンの接種を検討するだけでなく、これまで通り日頃の感染症対策もしっかり行いましょう。
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