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かつては入浴時に着ていた!? 意外な浴衣の起源と歴史

2022/08/11 12:25 ウェザーニュース

夏の風物詩といえば、花火、盆踊り、海水浴、そして浴衣です。時節柄、遠出を自粛せざるを得ないのであれば、せめて浴衣を着て夕涼みを楽しみたくなります。

ところで浴衣には、どんな起源や歴史があるのでしょうか。日本の伝統文化である浴衣の振興普及に努めている「NPO法人日本ゆかた文化協会」に教えていただきました。

浴衣はいつ誕生した?

今では外出着としても使われる浴衣ですが、昔は入浴時に着る衣装だったそうです。なぜ入浴時に着物が必要だったのでしょうか。

「浴衣の起源は平安時代です。当時の貴族が入浴する時、薄物を着たことから始まりました。浴衣の語源は、湯帷子(ゆかたびら)です。帷子は夏の着物の通称で、裏地のない単衣(ひとえ)を指します。平安時代の湯帷子は、麻素材が主流でした」(ゆかた文化協会)

平安時代は着衣で入浴していたという話に、驚かされてしまいます。

「入浴と言っても現在のようにお湯に浸かるのではなく、蒸気を浴びる蒸し風呂でした。水蒸気でやけどをしない目的と、複数の人が入浴するので裸を隠す目的で使用されたと思われます」(ゆかた文化協会)

庶民の間に広まったのは江戸時代

その後、浴衣の用途が変わっていきます。

「麻素材から綿素材に変わり、汗を吸って風通しが良いことから、湯上り用の着衣となりました。さらに湯上りだけでなく寝巻きとしても使われるようになりました」(ゆかた文化協会)

名前も時代とともに変化しました。

「室町時代には、手拭いならぬ身拭い(みぬぐい)と呼ばれていたので、まだお風呂道具の一環だったようです。安土桃山時代頃から湯上り着や寝巻きへと用途が広がり、江戸時代になると町人文化の発展に伴って、呼び名も浴衣に変化しました」(ゆかた文化協会)

浴衣が庶民の間に広まったのは、江戸後期に風呂屋(銭湯)が普及したためです。

「江戸時代になると、風呂には裸で入るようになりました。浴衣も初めは湯上りの汗を拭きとるため(現在のバスローブのように)風呂屋の二階などで着ていたものが、次第にそのまま外に着て出られるようになりました。通常の和服とは違い、長襦袢を着用せず、素肌の上に着る略装です」(ゆかた文化協会)

明治時代になると、浴衣の大衆化が始まります。

「それまでの木綿の藍染に替わって、大量生産が可能な注染(ちゅうせん)という染色方法が発明されました。注染は本染めとも呼ばれていて、色の微妙なにじみ具合や優しい濃淡など、手作業風の味わいが出せるのが特徴です」(ゆかた文化協会)

時間帯によって浴衣を使い分けていた?

浴衣には、暑い日本の夏を快適に過ごす工夫が凝らされています。その一つが、古典的な白地と紺地の使い分けです。

「白地の浴衣は昼用で、家の中で着ると真夏でも涼しく過ごせます。また、傍から見ていても涼やかに感じられます。

紺地の浴衣は紺地に染めるために使われる『藍』の香りを虫が嫌うことから、虫の多く出る夕方から夜にかけて着用するのが良いとされます」(ゆかた文化協会)

まだ浴衣と縁がないという方、今年はぜひ浴衣デビューしてはいかがでしょうか。
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