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二十四節気「立秋」 真夏のような暑さでも、暦の上では今日から秋

2022/08/07 05:02 ウェザーニュース

8月7日(日)から二十四節気の一つである「立秋」に入ります。

暦の上では、この立秋から立冬(2022年は11月7日)の前日までを「秋」としています。

近年は特に暑い日がまだまだ続くため、「秋の実感なんて、まったくないよ」と思う人が多いでしょう。

とはいえ、秋の兆しや気配が感じられるのが立秋でもあります。どんな時季か、見ていきましょう。

「スイカ」はどうして「西瓜」と書く?

暑い日に「スイカ」にかぶりつくと、えもいわれぬ幸せを感じる人もいるでしょう。

スイカは漢字では「西瓜」と書きますね。どうして、スイカは「西の瓜(うり)」と書くのでしょうか。

日本の西側にある中国から日本に伝わった瓜だから「西瓜」?

うーん、残念。ハズレです。

スイカは中国よりも西方の地域から中国に伝わった瓜だから「西瓜」と書くのです。

スイカはアフリカ原産。そのスイカが中国の西に位置するウイグルから中国に伝わり、のちに(室町時代などの説があります)日本にも伝わりました。

実は「西瓜」は、秋の季語。意外に思われるかもしれませんが、本来は初秋のものであったそうです。

水分が豊富なスイカは、良質な水分補給にうってつけ。熱中症の予防にもオススメです。

初秋に感じる「新涼(しんりょう)」

秋の初めに感じる涼気を「新涼」といいます。

「涼風(すずかぜ)」や「涼し」は、俳句では夏の季語ですが、「新涼」は秋の季語です。

「涼風」や「涼し」は、暑さの中にわずかに感じられる涼しさを表したものですが、「新涼」は初秋の新たな涼しさを含意しています。

たとえば、「新涼の候、朝夕の風に秋の気配が漂う今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか」などと手紙にしたためることもできます。

〜新涼や白きてのひらあしのうら〜

これは、高浜虚子に師事した俳人、川端茅舎(かわばたぼうしゃ)の句です。

自分の白い手のひらと足のうら。夏の間に日に当たって焼けた箇所と比較しているのでしょう。そして、新涼を感じ取ったときに詠んだ一句なのでしょう。

「藪入(やぶい)り」とは、何?

最近では、めっきり聞くことの少なくなった言葉の一つに「藪入り」があります。

奉公人が正月と盆の16日前後に、主家から休みをもらって親元などに帰ることが「藪入り」です。

なぜ「藪入り」というかというと、「草深い土地に帰るから」という説が有力です。

単に「藪入り」というと、新年の季語になり、盆の藪入りをさす場合は、「後(のち)の藪入り」「秋の藪入り」などといいます。

藪入りは、年少の奉公人にとっても、その親にとっても、うれしい日でした。

山本有三の小説『路傍の石』に次の一節があります。母のおれんが、一人息子のお盆の藪入りを待ち焦(こ)がれている場面です。

「〜あづき煮(に)てやぶ入り待つや母ひとり〜

いくらか、ちがっているかもしれないが、だれかの句に、こういうのがあったように思う。おれんはその朝、特別はやく起きて、ゆうべのうちに買ってきておいた、アズキを火にかけた。」

藪入りに母が子を思う気持ちがよく伝わってきます。

「ヒグラシ(蜩)」のカナカナカナ……に感じる哀愁

カナカナカナ……。もの悲しさを帯びた音色と旋律。朝に夕に、ヒグラシが鳴く時季です。

ヒグラシは全長約5cmで、全体は栗褐色、緑や黒の斑紋のあるセミです。スギ、ヒノキ、ケヤキ、ブナなどの木で確認することができます。

ヒグラシという名は、日暮れに鳴くことに由来しています。

〜日ぐらしや急に明(あかる)き湖(うみ)の方(ほう)〜

これは、江戸時代後期の俳人、小林一茶の句です。

「日ぐらし」はセミのヒグラシのことで、「湖(うみ)」は現在の長野県北部にある野尻湖のことです。

「急に明るくなった湖のほうで、ヒグラシが鳴き始めたよ」。そう詠んだ一茶の心からは、どこかすがすがしさが感じられます。


今年(2022年)の立秋は8月22日(月)までです。山の日(8月11日)が過ぎ、お盆が過ぎ、8月下旬にさしかかると、地域によっては、秋の風情がかなり感じられるようになりそうです。

今は暑い日が続いていますが、ときおり漂う秋の趣に触れつつ、時の移ろいを楽しむのもよいかもしれません。
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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。