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近年注目の飲む氷「アイススラリー」 熱中症予防でアスリートも実践!

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2022/07/01 10:00 ウェザーニュース

東北南部まで梅雨明けし、各地で厳しい暑さが続いています。熱中症の予防はしっかりと行っていきたいところです。

有効な対策として、アスリートたちが体を冷やす目的で摂取してきた細かい粒子状の氷「アイススラリー」が近年注目を集めています。

アイススラリーとはどんなものなのでしょうか?摂取方法や効果などについて、2015年からラグビー日本代表などスポーツ選手・大会主催者・観客を気象面から全力でサポートしているウェザーニュースのスポーツ気象チームに聞きました。

「液状の氷」を意味する飲料

アスリートに限らず、一般の人たちの熱中症予防にも「体を冷やすこと」が重要とされています。

「体を冷やすことを『身体冷却』といい、皮膚温の低下に効果がある外部冷却と、『深部温』と呼ばれる体内の温度を下げるための内部冷却があります。外部冷却は水風呂やアイスパック、アイスベストなどを用い、冷却面を直接皮膚に触れさせることで瞬時に皮膚温を下げる効果があります。

一方の内部冷却は、冷たい水やクラッシュアイス(砕いた氷)などを飲むことで、深部温を下げようとするものです。外部冷却と内部冷却を組み合わせて行うことが、とくに気温や湿度の高いとき、熱中症予防に高い効果を示します。

アイススラリーは『液状の氷』を意味しています。非常に細かい氷の粒子と液体が混ざった飲料で、内部冷却のための飲料では最も効果が高いとされ、近年熱中症予防の分野で注目されています。

アイススラリーは専用の機械やボトルを用いるか、かき氷やブレンダーを使って氷を細かくして作成します。ポイントは、なるべく粒子の細かい氷を摂取できるようにすることです」(スポーツ気象チーム)
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接種後30分で0.5〜0.7℃深部温が低下する

飲水による身体冷却には、主に冷水・クラッシュアイス入り飲料・アイススラリーというタイプがありますが、深部温の低下効果は、【アイススラリー】が最も高く、次に【クラッシュアイス入り飲料】、【冷水摂取】の順になるそうです。背景には、氷が溶ける際に生じて周辺の温度を下げる「融解熱」が関係しているといいます。

「身体の中に入る前に氷が溶けてしまうと、融解熱の発生が体内では起こりません。氷の粒は、細かいほど身体に接する表面積が大きくなります。同じ量の氷を摂取する場合、表面積が大きいほど単位時間あたりの融解熱の発生が大きくなるので、クラッシュアイスに比べて粒が細かいアイススラリーのほうが、より深部温を低下させるのです。

アイススラリーでは、約30分で0.5〜0.7℃程度、深部温が低下するという研究結果が発表されています。摂取後に安静にしている時間が長いほど、深部温は低下します」(スポーツ気象チーム)

さらに、アイススラリーと外部冷却との組み合わせによる効果を調べた研究では、どちらか一方だけや何もしない場合よりも、より速く深部温と心拍数の低下が見られたそうです。

「気温30℃、相対湿度60%という条件で一定の自転車運動を行い、体温を38.5℃まで上昇させたのち、体重1kgあたり4gのアイススラリー摂取と、水温10℃で両ひじまでの外部冷却(前腕冷却)を併用しました。すると、6分後に約0.2℃、15分後には約0.4℃の深部温(体温)低下がみられました」(スポーツ気象チーム)

コンビニなどでの手軽な入手も可能に

内部冷却に効果が高いアイススラリーですが、つくるのが面倒なのではないですか。

「国内の飲料メーカーが2018年、常温保存の液体を凍らせてアイススラリー状態にして、溶けた後で再冷凍してもスラリー状態を再現する技術を開発し、猛暑下で作業する消防士などへの通信販売を開始しました。

2020年5月からはコンビニエンスストアやドラッグストアなどでの一般販売も始められ、現在では一般の消費者でも手軽にアイススラリーが入手できるようになっています」(スポーツ気象チーム)

内部冷却に効果があり、手に入れるのも簡単になったアイススラリー。猛暑のなかでの運動時はもとより、日頃の熱中症対策にも活用してみてはいかがでしょうか。
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