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二十四節気「芒種」 梅雨とほぼ重なる時季

2022/06/06 05:02 ウェザーニュース

6月6日(月)から、二十四節気の「芒種(ぼうしゅ)」に入ります。「立春」「大暑」「秋分」「冬至」などに比べると、「芒種」はなじみの薄い節気かもしれません。

芒種は「芒(のぎ)のある穀物の種をまく時期」という意味です。芒とはイネ科の植物に特有の、実の外殻(がいかく)にある棘(とげ)のような突起のことです。

二十四節気は古代中国で生まれたもの。当時はこの時期に稲や粟の種を直接田畑にまいて栽培していました。

その後、稲作はある程度苗が育ってから田植えを行うようになったため種まきの時期はもっと早くなり、芒種は田植えの目安とされるようになりました。

芒種は梅雨、特に梅雨に入る時季と重なりがちです。湿気の多いうっとうしい時節ではありますが、そんな中にも楽しみはきっとあるでしょう。

梅雨時を彩る「紫陽花(あじさい)」の花

梅雨の時季に咲く花といえば紫陽花を思い浮かべる人も多いでしょう。

紫陽花はユキノシタ科の落葉低木で、花の色は土の性質で変わります。土壌が酸性だと青い花が咲き、アルカリ性が強いと赤みが強くなります。

また紫陽花は咲き始めから、白や淡緑、青、紫、薄紅色などと色彩を変化させるため「七変化(しちへんげ)」の異名もあります。

〜紫陽花のあさぎのまゝの月夜かな〜

これは1881(明治14)年生まれの俳人、鈴木花蓑(すずきはなみの)が詠んだ一句です。

月の光の下、紫陽花の花が昼間の浅黄色のままに鮮やかに見えたのでしょう。

梅雨時期にみられる「五月晴れ」と「五月雨」

「五月晴れ」は「さつきばれ」、「五月雨」は「さみだれ」、または「さつきあめ」と読みます。

これらは旧暦の時代に生まれた言葉です。旧暦の5月は、現在の6月ごろでした。

そのため「五月雨」は「旧暦5月ごろに降る長雨。梅雨」、「五月晴れ」は「梅雨の合間の晴れた天気」という意味で使われていました。

ところが現代人は、新暦(太陽暦/現在の暦)の5月のさわやかに晴れた天気をあらわす場合に「五月晴れ」という言葉を使うようになっていったのです。

今ではこちらの使い方も認められるようになりました。

本来の梅雨の合間の晴れた天気と、現在の5月のさわやかに晴れた天気とは印象が全く違いますが、どちらの意味も辞書に掲載されています。

6月16日の「和菓子の日」は和菓子で一服

毎年、6月16日は「和菓子の日」でもあります。全国和菓子協会が1979(昭和54)年に制定しました。

この和菓子の日の起源は古く、平安時代にさかのぼるといわれます。

平安時代前期の848年6月16日、仁明(にんみょう)天皇は元号を「嘉祥(かしょう)」に改めました。

「嘉祥」には「めでたいしるし」などの意味があり、この日に疫病よけや健康招福を願って、神前に菓子や餅を供えるようになったといわれます。

ここから「嘉祥菓子(かじょうがし)」の風習が始まりました。和菓子の日はこの習わしを受け継いだものです。

現在は16日にちなんで6種類や16種類、あるいは1と6を足した7種類の和菓子セットが和菓子屋さんなどで売られることが多いようです。


梅雨時と重なる芒種。続く長雨に気持ちも晴れない日があるかもしれませんが、梅雨の晴れ間に散策すれば鮮やかに咲く紫陽花に出会うこともあるでしょう。さらに、風味のよいお茶と和菓子で一服すれば心は晴れやかになるでしょう。

芒種の次の節気は夏至。昼の時間が日に日に長くなる日々でもある芒種の時間を有効に使いたいものです。

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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。