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二十四節気「立夏」 暖かく過ごしやすい”夏の始まり”

2022/05/04 10:37 ウェザーニュース

二十四節気の「立夏」から、暦の上での夏は始まります。今年の立夏は5月5日(木)から20日(金)までです。

現代では本格的な夏の到来はまだ先ですが、若葉が茂り、日差しもまぶしくなるなど、夏の気配が感じられるようになるでしょう。

この立夏から立秋の前日(今年は8月6日)までが暦の上での夏です。

初夏である立夏はどんな時季なのか、キーワードをもとに見ていきましょう。

5月5日は「端午の節句」で「こどもの日」

5月5日は「端午の節句」にあたる日でもあります。

「端午」とは月の初めの午(うま)の日のことで、「午」の文字の音が「五」に通じることなどから、やがて5月5日(旧暦)が端午の節句として定着しました。

旧暦の5月は、梅雨の湿気で伝染病などが多く発生したため、5月最初の午の日に薬草とされる菖蒲(しょうぶ)を軒先に飾ったり、菖蒲湯に浸かったり、菖蒲を浮かべたお酒を飲んだりする風習が古代に始まったといわれます。こうして、邪気を祓(はら)ったのです。

菖蒲が「尚武」や「勝負」に通じることから、江戸時代以降、端午の節句は男子の節句ととらえられるようになりました。

そして、男子の出世や息災を願って鯉のぼりを立てるようになり、武者人形も飾られるようになりました。

5月5日は「こどもの日」でもあります。国民の祝日の一つで、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」という趣旨で、1948年に制定されました。ということは、お母さんのための祝日ともいえそうです。

端午の節句とこどもの日は本来、別のものですが、今ではどちらも、子供たちが健やかに幸せに育つことを願う日として定着しています。

5月10日~16日は「愛鳥週間」

毎年5月10日~16日は「愛鳥週間」です。

野鳥の保護を目的に、公益財団法人の日本鳥類保護連盟が定めました。

この時期は、野鳥の繁殖期に重なります。新緑の野山を歩くと、野鳥たちの声に心が癒されることも多いでしょう。

美しいさえずりは、鳥たちの求愛の歌でもあり、縄張り宣言でもあり、ライバルに対する威嚇でもあるのです。

のどかに歌っているように聞こえますが、厳しい自然の中で、野鳥たちは必死でいのちをつなごうとしているのですね。

花と鳥と風と月。この4つを自然の美しい景色の代表として生まれた言葉が「花鳥風月」です。

このことからも、鳥は古来、日本人の暮らしを彩り、情緒や感性の形成に大きく影響してきたことがうかがえます。

鳥を愛した先人たちと同様、暖かく見守ってあげたいものです。

栄養豊富な初夏の味わい「そら豆」

初夏が旬の食べ物の一つに「そら豆」があります。そら豆は、漢字では「空豆」や「蚕豆」と書きます。

空豆と書くのは、さやが空に向かって伸びる姿に由来し、蚕豆と書くのは、さやが蚕(かいこ)の繭(まゆ)に似ているからなどといわれます。

そら豆は亜鉛、鉄分、タンパク質、ビタミンB群などを豊富に含む優れた食品です。

オーソドックスに塩ゆでにして食べるのもよいし、サラダ、スープ、天ぷら、パスタ料理などに活用してみるのもよいでしょう。初夏の味わいが口いっぱいに広がりそうです。

明治時代後半生まれの俳人、細見綾子(ほそみあやこ)に次の一句があります。

〜そら豆はまことに青き味したり〜

「薫風」が吹き、「風薫る」時季

さわやかな初夏の風を「薫風」や「風薫る」と表現することがあります。

初夏は若葉が映(は)える時季で、森や林から吹いてくる風に若葉の薫りを感じることもあるでしょう。

〜見えてゐる海まで散歩風薫る〜

これは今年(2022年)2月に亡くなった俳人、稲畑汀子(いなはたていこ)さんの句です。

目の前に広がる初夏の海をめざして、さわやかな風の中、さっそうと歩を速める作者の姿が、わかりやすく気どらない言葉で、いきいきと描かれています。

稲畑汀子さんは、ともに俳人だった、高浜年尾の娘で、高浜虚子の孫。俳句雑誌『ホトトギス』の名誉主宰でもありました。

ホトトギス派は自然や人事をあるがままに客観的に詠む「花鳥諷詠(かちょうふうえい)」を基本理念に掲げています。この句も客観的で写生的な味わいがあります。


地域にもよりますが、立夏は晴れて暖かく、爽快な日が多いでしょう。花粉症のピークも過ぎ、過ごしやすい日々です。

自然のみずみずしい香気を浴びに、森林浴に出かけてみるのもよいかもしれませんね。
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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。