すでに半数以上の人がツバメを目撃しているようですが、とくに軒先などに作られたツバメの巣は、寄り添うヒナたちの愛らしい姿と相まって人の目を引きます。
では、ツバメの巣は何を素材に、どのようにして作られているのでしょうか。ツバメの生態や観察のしかたとともに、公益財団法人日本野鳥の会自然保護室の山本裕(やまもと・ゆたか)さんに、解説して頂きました。
では、ツバメの巣は何を素材に、どのようにして作られているのでしょうか。ツバメの生態や観察のしかたとともに、公益財団法人日本野鳥の会自然保護室の山本裕(やまもと・ゆたか)さんに、解説して頂きました。
日本には5種類のツバメが生息
ツバメは春になるとどこからかやってきて、私たちの身近なところで巣を作ってヒナを育て、秋の訪れとともに飛び去ってしまうという、漠然としたイメージしかありません。ツバメはどのような生態と特徴をもった鳥なのでしょうか。
「ツバメはスズメ目ツバメ科の渡り鳥で、夏鳥として日本に飛来します。全長は17~18cm。世界に約80種類の仲間がいて、このうち日本にはツバメ、イワツバメ、コシアカツバメ、ショウドウツバメ、リュウキュウツバメの5種類が生息しています。
3月上旬頃に東南アジアなどから日本各地に飛来し始め、4月頃の繁殖期を経て9〜10月頃まで暮らし、戻っていきます。ツバメとイワツバメは北海道から奄美群島にかけて、コシアカツバメは東北から九州にかけて、ショウドウツバメは北海道、リュウキュウツバメは沖縄など南西諸島に分布しています。
都市部でよく見られるのはツバメで、イワツバメは郊外や山間部に比較的多く、北日本で多く見られます。コシアカツバメは西日本に多い傾向があります。
主食はハエやアブ、トンボやハアリなどの昆虫類です」(山本さん)
ツバメはどのような一生を送るのでしょうか。
「日本にやってきたツバメは4月から6月にかけて卵を産みます。メスが卵を抱く抱卵(ほうらん)の期間は2週間ほど。孵(かえ)ったヒナは3週間ほどで親と同じくらいの大きさに成長し、飛べるようになります。
その後、巣立ちますが、しばらくの間は巣に戻ってきて眠ります。巣立ち後も親鳥と過ごし、その間に親から飛び方やえさの獲り方などを学んでいます。巣立った若い鳥は集団でヨシ原などに“ねぐら”をとるようになり、夏の終わりから秋にかけてしだいに南下していくようになります。
ツバメは生まれた翌年から繁殖し、寿命は1年から2年未満です」(山本さん)
「ツバメはスズメ目ツバメ科の渡り鳥で、夏鳥として日本に飛来します。全長は17~18cm。世界に約80種類の仲間がいて、このうち日本にはツバメ、イワツバメ、コシアカツバメ、ショウドウツバメ、リュウキュウツバメの5種類が生息しています。
3月上旬頃に東南アジアなどから日本各地に飛来し始め、4月頃の繁殖期を経て9〜10月頃まで暮らし、戻っていきます。ツバメとイワツバメは北海道から奄美群島にかけて、コシアカツバメは東北から九州にかけて、ショウドウツバメは北海道、リュウキュウツバメは沖縄など南西諸島に分布しています。
都市部でよく見られるのはツバメで、イワツバメは郊外や山間部に比較的多く、北日本で多く見られます。コシアカツバメは西日本に多い傾向があります。
主食はハエやアブ、トンボやハアリなどの昆虫類です」(山本さん)
ツバメはどのような一生を送るのでしょうか。
「日本にやってきたツバメは4月から6月にかけて卵を産みます。メスが卵を抱く抱卵(ほうらん)の期間は2週間ほど。孵(かえ)ったヒナは3週間ほどで親と同じくらいの大きさに成長し、飛べるようになります。
その後、巣立ちますが、しばらくの間は巣に戻ってきて眠ります。巣立ち後も親鳥と過ごし、その間に親から飛び方やえさの獲り方などを学んでいます。巣立った若い鳥は集団でヨシ原などに“ねぐら”をとるようになり、夏の終わりから秋にかけてしだいに南下していくようになります。
ツバメは生まれた翌年から繁殖し、寿命は1年から2年未満です」(山本さん)
巣は何から作られているの?
ツバメの巣は何からできているのでしょうか。
「通常は泥やわらが素材となります。水田などから泥やわらをくちばしでくわえて運んできて、土台からどんどん塗り重ねて大きくしていきます。
ツバメが何もないところに泥やわらを新たに重ねて巣作りをすることは少なく、前年に作った巣や壊れかけた巣の跡をベースに補修して、“コスト削減”を図っているケースが多く見受けられます」(山本さん)
種類によって巣の形に違いはありますか。
「それぞれによって特徴があります。ツバメとリュウキュウツバメの巣は天井部が開いた『おわん型』で、よく似ています。イワツバメの巣は球形で、天井部まで土に覆われていて開口部が狭くなっています。コシアカツバメの巣はイワツバメと似て開口部が狭いのですが、出入り口が長い『とっくり型』をしています。
ただし、ショウドウツバメは泥やわらで巣作りをすることはなく、土手などに穴を掘って集団で暮らし、繁殖を行います。名前の由来も小さな穴を意味する『小洞(しょうどう)』です」(山本さん)
「通常は泥やわらが素材となります。水田などから泥やわらをくちばしでくわえて運んできて、土台からどんどん塗り重ねて大きくしていきます。
ツバメが何もないところに泥やわらを新たに重ねて巣作りをすることは少なく、前年に作った巣や壊れかけた巣の跡をベースに補修して、“コスト削減”を図っているケースが多く見受けられます」(山本さん)
種類によって巣の形に違いはありますか。
「それぞれによって特徴があります。ツバメとリュウキュウツバメの巣は天井部が開いた『おわん型』で、よく似ています。イワツバメの巣は球形で、天井部まで土に覆われていて開口部が狭くなっています。コシアカツバメの巣はイワツバメと似て開口部が狭いのですが、出入り口が長い『とっくり型』をしています。
ただし、ショウドウツバメは泥やわらで巣作りをすることはなく、土手などに穴を掘って集団で暮らし、繁殖を行います。名前の由来も小さな穴を意味する『小洞(しょうどう)』です」(山本さん)
前年暮らした巣に翌年も戻ってくる?
ツバメは前年までの巣の跡を使って巣作りをしますが、翌年も自分の巣に戻ってくるのでしょうか。
「ヨーロッパでは牛舎などで繁殖すると翌年も同じ牛舎に戻ってくる傾向があります。日本ではツバメの寿命もあり、オス・メスのどちらかが翌年も同じ巣に戻ってくる確率は15%という報告があります。
また、ヒナに足環を付けて放しても、翌年は親鳥の居場所から離れた場所に飛来するらしく、どこに戻ってきたのかの確認が難しいのです。知る限りでは山口県で足環をつけられたツバメが翌年、伊豆諸島で見つかったという例があります」(山本さん)
ツバメを観察する際の注意点はありますか。
「特に卵を抱いている時期やヒナの子育て中は親ツバメの警戒心が強いので、刺激を与えないように巣から離れた場所から双眼鏡などで観察するよう心がけてください。
また、軒先にかけられた巣を見ようとする際には、そこが『他人の家』だということをくれぐれも忘れないようにして、家主に一声かけるなどしてから観察してください。街中では、通行人の妨げにならないようにして、自転車や車にも注意しましょう」(山本さん)
「ヨーロッパでは牛舎などで繁殖すると翌年も同じ牛舎に戻ってくる傾向があります。日本ではツバメの寿命もあり、オス・メスのどちらかが翌年も同じ巣に戻ってくる確率は15%という報告があります。
また、ヒナに足環を付けて放しても、翌年は親鳥の居場所から離れた場所に飛来するらしく、どこに戻ってきたのかの確認が難しいのです。知る限りでは山口県で足環をつけられたツバメが翌年、伊豆諸島で見つかったという例があります」(山本さん)
ツバメを観察する際の注意点はありますか。
「特に卵を抱いている時期やヒナの子育て中は親ツバメの警戒心が強いので、刺激を与えないように巣から離れた場所から双眼鏡などで観察するよう心がけてください。
また、軒先にかけられた巣を見ようとする際には、そこが『他人の家』だということをくれぐれも忘れないようにして、家主に一声かけるなどしてから観察してください。街中では、通行人の妨げにならないようにして、自転車や車にも注意しましょう」(山本さん)
「巣は縁起がいい」とされる理由は?
ツバメが家に巣を作ると「縁起がいい」と古くから言われているそうですが、その理由は。
「主に2つの理由が考えられます。1つ目は、ツバメは害虫を食べて豊作を招いてくれるので、農家の人がそう伝えてきたのでしょう。
2つ目は、ツバメがカラスなどの外敵を避けるため、カラスが近よらない比較的人の出入りが多い商店などを選んで巣作りをする傾向が多いことが理由です。これが、ツバメが巣を作った家は人の行き来が盛んで商売繁盛のシンボルとして歓迎されたのだと思われます」(山本さん)
近年はエサをとる環境や巣作りに適した家屋が減り、都市部では見られるツバメの数はもとより、産卵やヒナの数が明らかに減少しているとの調査結果も報告されているそうです。
ツバメを刺激したり、巣のある家の方に迷惑をかけたりしないように心がけながら観察し、次の春にも日本を訪れてくれるよう見守りたいものです。
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「主に2つの理由が考えられます。1つ目は、ツバメは害虫を食べて豊作を招いてくれるので、農家の人がそう伝えてきたのでしょう。
2つ目は、ツバメがカラスなどの外敵を避けるため、カラスが近よらない比較的人の出入りが多い商店などを選んで巣作りをする傾向が多いことが理由です。これが、ツバメが巣を作った家は人の行き来が盛んで商売繁盛のシンボルとして歓迎されたのだと思われます」(山本さん)
近年はエサをとる環境や巣作りに適した家屋が減り、都市部では見られるツバメの数はもとより、産卵やヒナの数が明らかに減少しているとの調査結果も報告されているそうです。
ツバメを刺激したり、巣のある家の方に迷惑をかけたりしないように心がけながら観察し、次の春にも日本を訪れてくれるよう見守りたいものです。
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