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新茶の季節 産地によって味覚や風味の違いは?好みの新茶の選び方

2022/04/21 11:08 ウェザーニュース

「夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る あれに見えるは茶摘じゃないか」の歌詞が有名な茶摘み歌。明治時代から文部省唱歌として親しまれてきました。新茶を摘み取る時期が歌になったのは、それが日本人にとって大切な行事だったからでしょう。

ウェザーニュースでは緑茶を飲む頻度に関するアンケート調査を実施しました。「ほぼ毎日」「たまに」「ほとんど飲まない」という項目で最も多かった回答は「ほぼ毎日」で、全体の半数近くの46%に上りました。

なかでも鹿児島県や静岡県といったお茶の生産量が多い地域では、7割以上の人が「ほぼ毎日」緑茶を飲んでいるようです。緑茶は私たち日本人に馴染み深い飲み物であることが分かります。
新茶シーズンに、上手な新茶の選び方を、長年お茶の製造、販売、卸売を続けている株式会社荒畑園(静岡県牧之原市)に伺いました。

新茶と呼ばれるのはいつ摘むお茶か

お茶は年に3回から4回収穫できますが、その年の最初に出た芽を摘み取る新茶は、一番茶とも呼ばれて特に珍重されるそうです。

「お茶の木は、秋から冬にかけて生育が止まります。春になり、暖かくなって伸びてきた新芽は、お茶の木が蓄えた栄養をたっぷり含んでいるのです。そのため1年でいちばんおいしいお茶として昔から大切にされてきました」(荒畑園さん)

なお、日本茶は鹿児島県から新潟県まで全国で栽培されています。新茶を摘む時期は地域によって異なり、「おおむね4月から5月」になるそうです。

新茶がおいしい理由とその他の特徴

二番茶以降の茶葉で作ったお茶とは違う新茶の特徴を3つ、荒畑園さんに教えていただきました。

(1)テアニンが多くてカテキンが少ない
(2)新茶を飲むと1年間健康でいられるという縁起物
(3)目上の人に新茶を贈る風習もある

「(1)は、新茶がおいしい理由です。テアニンはアミノ酸の一種で、お茶のうま味や甘みになります。カテキンはポリフェノールの一種で、お茶の苦みや渋みになります。

テアニンは紫外線が当たるとカテキンに変化するので、紫外線が強くなる初夏から夏にかけて、お茶の葉に含まれるカテキンの量がどんどん増えてきます。新茶はあまり紫外線に当たっていないので、うま味と甘みが強いのです。

(2)は、新茶が二番茶以降よりも栄養価が高いことからきた言い伝えですが、縁起物としての側面もあります。日本では、そのシーズンの最初にとれたものを“初物”として大切にしてきた風習があります。そこからきた貴重な思いが、新茶にはあったのでしょう。

(3)はその延長で、新茶は贈り物にされてきました。静岡県ではお中元代わりに新茶を贈る風習があり、九州では結納の際に贈られる品にお茶が入っています。お葬式の香典返しのイメージがあるため贈り物にはふさわしくないと考えられがちですが、日本では古くから目上の人に贈る品だったのです」(荒畑園さん)

産地によるお茶の特徴

茶摘み歌にも、“♪色は静岡 香りは宇治よ 味は狭山でとどめさす♪”と歌われるなど、昔から静岡、宇治(京都府)、狭山(埼玉県)は日本三大茶と知られています。また、昨年は産出額が初めて全国1位になるなど、鹿児島県もお茶の名産地です。これらの味覚や風味には、どのような違いがあるのでしょうか。

深蒸しの静岡茶は、色が深い緑色をしていて、うま味が強く苦みが少ないまろやかな味わいです。

宇治茶は、茶の木に覆いをかぶせて日光を遮断(しゃだん)して育てることで、香りが高くすっきりした味が特徴です。

狭山茶は、寒い環境で育てることで、肉厚で深いうま味とコクのある茶葉に育ちます。また狭山火入れというしっかりした焙煎(ばいせん)を行うことで、独特の濃厚な味わいのお茶に仕上がります。

その他にも鹿児島や宮崎など、様々なお茶の産地があります。それぞれ違った味わいがありますから、新茶を飲み比べてみるのもオススメです」(荒畑園さん)

新茶とひとことで言っても、最初に収穫した新芽のほうが少し成長してから収穫した新芽より柔らかく、テアニンなどのうま味成分が凝縮されています。そのため、よりおいしいお茶になりますが、収穫できる量が限られるため高価になるそうです。

おいしいお茶を飲みたい人は、少し高価な初摘みの新茶を買ってはいかがでしょう。同じお茶屋さんの新茶を選ぶなら、高価な方がおいしいお茶に巡り合えると荒畑園さんは語ります。また、数種類の新茶を飲み比べるお試しセットを購入すると、好みの新茶を見つけやすいそうです。

お茶は健康にもいいといわれています。今年はぜひ、好みの新茶に出逢ってください。
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参考資料など

取材協力:株式会社荒畑園(https://www.arahataen.com/)