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二十四節気「穀雨」 初夏直前の「豊かな春」

2022/04/20 10:53 ウェザーニュース

「穀雨(こくう)」は春の最後の二十四節気で、晩春にあたる時季です。今年は4月20日(水)から5月4日(水)までが穀雨の期間です。穀雨のあとには、夏の始めである「立夏」が続きます。

穀雨とは「春雨が降って百穀(ひゃっこく)を潤す」の意で、百穀はいろいろの穀物のことをいいます。つまり、この時季に降る雨はさまざまな穀物を育ててくれる恵みの雨なのです。

穀雨はもちろん、春雨だけに特徴があるわけでありません。どんな時季なのか、キーワードをもとに見ていきましょう。

「チューリップ」の開花で気温がわかる!?

穀雨のころは、全国各地の公園などでチューリップの花を見ることができます。

チューリップは小アジア(アナトリア)が原産といわれ、16世紀にトルコからヨーロッパにもたらされました。その後、とりわけオランダで改良されて、人々の目を楽しませるようになりました。

散歩などでチューリップを見かけた際は、気温をある程度知ることもできます。

個体などによる違いはありますが、チューリップは概ね10℃以下では花を閉じたままで、15℃ぐらいで開き始め、20℃以上で大きく開きます。

散歩中にチューリップの花の開き具合を見て、「今は16℃ぐらいかな」とか「22℃だと思う」などと、気温を予想してみるのも楽しいものです。

男と女を引き寄せる「朧月(おぼろづき)」?

朧月の「朧」とは「ぼんやりかすんでいるさま。ほのかなさま」のことです。

つまり「朧月」は「ぼんやりとかすんで見える春の夜の月」のことで、春の季語にもなっています。また、音読みで「ろうげつ」と読んでも同じ意味です。

この時季、空を見上げてみると、うっすらと靄(もや)がかかったような天気の日が多く、夜の空に浮かぶ月はぼんやりかすんで、時に幻想的です。

そのため、次のような俳句も詠まれるのでしょうか。

〜くちづけの動かぬ男女おぼろ月〜

これは、俳人で小説家の高浜虚子の次男で、作曲家、俳人などであった池内友次郎(いけのうちともじろう)の一句です。

この男女は朧月に誘われたのでしょうか……。

「二季草(ふたきぐさ)」の異名を持つ藤の花

藤の花も咲き始めます。

淡い紫色の花房を垂らす優美な姿は、古くから日本人に愛されてきました。

俳句では春の季語になっていますが、和歌では、春夏両方の題材として詠まれてきた花です。

春から夏へとふたつの季節にまたがって咲くので、「二季草(ふたきぐさ)」という異名もつけられました。

藤は、日本固有種、つまり、日本だけに分布する種ですから、日本を代表する花のひとつといえるでしょう。

そして、晩春を彩り、季節の移り変わりを教えてくれる花ともいえます。

夏が近づく「八十八夜」

♪夏も近づく八十八夜
 野にも山にも若葉が茂る
 あれに見えるは茶摘(ちゃつみ)じゃないか
 あかねだすきに菅(すげ)の笠♪

これは唱歌『茶摘』の一番です。思わず口ずさんでしまう人もいるでしょう。

この「八十八夜」とは、いつのことでしょうか。

八十八夜は、立春から数えて(立春を1日目として)88日目のことです。

今年の立春は2月4日でした。そこから88日目ですから、今年の八十八夜は5月2日です。

唱歌『茶摘』の歌詞のとおり、夏が近づいていることを実感できる時季ですね。


晩春の穀雨には、チューリップのほかにも、いろいろな花が咲き誇ります。地域などによりますが、フジ、ツツジ、ボタン、ヤマブキ、シバザクラの花なども楽しめます。

春雨の降らない、新暦の五月晴れの日には、花々を愛(め)でに公園などに出かけるのもよいでしょうね。
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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。