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復旧中しか見られない場所も? 天守閣も公開された熊本城のいま

2022/04/13 10:54 ウェザーニュース

2016(平成28)年4月14日と16日に発生した熊本地震から6年。2回連続して襲った大地震により、熊本市民のシンボルで、全国の城郭ファンからも高い人気を誇る熊本城も大きな被害を受けました。

天守閣をはじめとする熊本城の復旧は、この6年間でどの程度進んでいるのでしょうか。熊本城総合事務所に、震災からの復旧工事の進捗(しんちょく)状況などについて伺いました。

「熊本城復旧基本計画」により復興は着実に進行中

熊本地震によって名将・加藤清正が築いた熊本城は、重要文化財13棟・復元建造物20棟の一部が倒壊・破損。石垣全体の10.3%が崩落するなどの大きな被害を受けました。

――熊本地震から6年、熊本城の復旧はいまどのような段階にありますか。

「熊本城の復旧にあたっては、2018(平成30)年3月に策定した『熊本城復旧基本計画』に基づき、復興のシンボルである天守閣の復旧を最優先課題として取り組んできたところで、2021(令和3)年3月には天守閣が完全復旧しました。

また、城内にある13棟の重要文化財の復旧第一号として、同年1月に長塀の復旧が完了しました。残る城内の国指定重要文化財建造物や石垣等の文化財についても、着実に復旧を進めているところですが、完全復旧にはなお長い時間を要する見込みです」(熊本城総合事務所)

――この間、新型コロナ感染症のまん延もありました。コロナ禍による工事の遅れや入場者数の減少など、復興への影響はありましたか。

「復旧工事の進捗には大きな影響はありませんでした。しかし、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などの際には、人流抑制の観点から閉園を余儀なくされたほか、外出や移動の自粛要請などにより、旅行客・修学旅行などの団体旅行も著しく減少しました。

インバウンドもなくなるなどの影響があり、入園者数が熊本地震前の約1/4程度に大幅に減少しました」(熊本城総合事務所)

「奇跡の一本石垣」は解体が完了

熊本城の見どころのひとつは、加藤清正が築造した「扇の勾配」と称される美しい石垣です。なかでも飯田丸五階櫓(やぐら)を支えた石垣は、「奇跡の一本石垣」と呼ばれて注目を集めました。

――石垣の復旧状況はいかがでしょうか。

「熊本城の石垣は貴重な文化財であり、崩落してしまった石材の回収や石垣の測量を順次実施し、その復旧方法について石垣一つひとつずつ、丁寧に検証しながら復旧に取り組んでいます。

2021年3月に復旧が完了した天守閣以外では、国指定重要文化財である平櫓(ひらやぐら)下の石垣の解体作業が完了したところです。また、飯田丸五階櫓下の『奇跡の一本石垣』の解体及び一部の修理が完了し、2022(令和4)年度から本格的な修理に着手する予定です」(熊本城総合事務所)

――熊本城の石垣にはどんな特徴があるのでしょうか。

「主に『打ち込み接ぎ(はぎ)』と呼ばれる積み上げ方で、隅角部は重箱(じゅうばこ)積み、あるいは算木(さんぎ)積みとなっています。加藤清正が築城して以来、石垣の増築や修理が繰り返されていることがこれまでの調査研究によって明らかになっており、石材の積み方や加工の違いによって、往時の石垣積みの技法の変化を見ることができることが特徴といえます。

石垣の復旧には往時の形をできる限り再現し、文化財としての価値を損なわないようにすることが必要です」(熊本城総合事務所)

全体の復旧は2037年度

――工事完了予定は2037年度と伺っています。

「熊本城復旧基本計画に基づき、2037年度の完了を目指して効率的・計画的な復旧を進めて参ります。

完全復旧はまだ先になりますが、今後も、被災した建造物や石垣の復旧に向けて工事などを進めていくとともに、城内のライトアップや夜間公開など、熊本城周辺や中心市街地との回遊性の向上を図るイベントを開催することで、熊本城の魅力の向上や周辺地域の活性化や宿泊客の増加などにつなげていく予定です」(熊本城総合事務所)

5年ぶりに天守閣の内部公開を再開

復旧工事を終えて約5年ぶりに公開された大天守内の展望室(写真/時事)
――熊本城の復興状況には全国から注目が集まっています。この1年間で特に注目を集めたトピックスは何でしょうか。

「2021年3月に天守閣の復旧が完了したことを受け、同年6月28日から『特別公開第3弾』として、地震から約5年ぶりに天守閣の内部公開を再開し、全面リニューアルした展示と最上階からの眺めを楽しめるようになりました。

熊本地震から約5年ぶりの天守閣最上階からの景色を見て、涙する方もいらっしゃいました。

リニューアルした展示では、熊本城『天守』の歴史をクローズアップしました。1599(慶長4)年に清正が開始した築城から、1877(明治10)年の西南戦争での焼失、1960(昭和35)年の天守再建、 2016年の熊本地震での被災と復旧までを、模型・映像などで解説しています」(熊本城総合事務所)

復旧工事中にしか眺められない景色?

地上約6mの高さに設置されている特別見学通路。復旧工事の様子を間近で見られる(写真/熊本城総合事務所)
――2020(令和2)年に開設した「特別見学通路」への反響はいかがでしょうか。

「特別見学通路では、地上から約6mの高さという新しい視点から、二様の石垣を含む天守閣の姿や飯田丸・竹の丸などの石垣の被災状況、東竹の丸の重要文化財櫓群などを観覧頂けるようになりました。

これまでにない視点から見ることができるため、来園された方からは、『迫力がある』『石垣のつくりや被害の様子がよくわかる』など、喜んで頂いています。復旧工事完了後には通路を撤去することになりますが、それまでの間はこの通路を通りながら、地震被害の状況や変遷する復旧工事の様子をご覧頂けます」(熊本城総合事務所)

「復興城主」制度に約27億5000万円の寄付

――熊本城の復旧のため、「復興城主」制度による寄付が多く寄せられたと伺っています。

「2022年2月末時点で、『復興城主』制度に12万2342件、約27億5000万円のご寄付を頂いています。皆様から頂いたご寄付は『熊本城復元整備基金』に積み立て、熊本城の復旧・復元のために活用させて頂いています」(熊本城総合事務所)

熊本地震から6年を迎えた熊本城の復旧について、大西一史(おおにし・かずふみ)市長は次のように話しています。

「熊本地震の発災から今日まで、本市では、国内外の皆様からの温かいご支援や励ましのお言葉に支えられながら熊本城の復旧を進め、震災から5年の節目を迎えた昨年、復興のシンボルでもあります熊本城天守閣の復旧が完了し、内部公開を開始することができました。

改めまして、その歩みを支えてくださいました全ての皆様に、心から厚く御礼申し上げます。

熊本城全体が元の姿を取り戻すまでの道のりは長きにわたりますが、引き続き、国や県などの関係機関と連携して復旧に取り組み、文化財としての価値を守りながら全力で熊本城の完全復旧を目指して参ります」(大西市長)

熊本地震から6年目の春、新型コロナウイルスまん延防止措置も解除された熊本城では、花見の名所「行幸(みゆき)坂」も多くの市民や観光客でにぎわいました。

感染症対策を十分に施したうえで、5年ぶりに公開された「日本三名城」の天守閣最上階からの眺めとリニューアルされた展示を楽しみに、熊本城を訪れてみてはいかがでしょうか。

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