具材の状態で呼び名が変わる?
ちらし寿司はすし飯の上にさまざまな具を「散らし」て作ることが、語源とされています。ばら寿司との違いはどのようなものなのでしょうか。
「いまでは一般的に、酢飯(すし飯)の上に具材を載せるタイプを『ちらし寿司』、酢飯の中に具材を混ぜ込むタイプを『ばら寿司』と呼ぶことが多くなっています。けれど、地域によってはどちらも『ちらし寿司』と呼んでいるようです」(北野さん)
ちらし寿司の歴史については、江戸時代前期の1713年に編まれた『和漢三才図会』(105巻)という、図説百科事典に記されていて、1958年に出版された『飲食事典』(本山荻舟=てきしゅう=著)に、詳しい解説が記載されています。
「ちらし寿司は『こけらずし』(押し寿司の一種。すし種を薄く切り、すし飯の上に並べると、屋根葺きのこけら板に似ていることから)が進化したもので、いろいろな具材が酢飯と一緒に混ぜ合わせられていて食べる時に箸で“起こす”から、『起こし鮨(おこしずし)』とも呼ばれていたそうです。さらに、それを皿に盛ると“ばらばら”になるので、ばら寿司ともいったようです。
また、『すくい寿司・起こし寿司』とも呼ばれる由来には、箱に詰めて竹皮でふたをして重石をして作られたというちらし寿司を、箸ですくうようにして、起こしながら食べることからのようです。昔、大坂・堂島の相場師(株式などの投資家)が、“散らし”という言葉を嫌って、この名を付けたといわれています」(北野さん)
五目寿司もばら寿司と同じく、さまざまな具材を酢飯と混ぜ合わせたものですが、こちらは「骨董鮨」と書いて「ゴモクズシ」と読んだそうです。ばらばらになった具材の様子が、いろいろなものが雑多に並ぶ骨董品(こっとうひん)店の店先と似ているからだそうです。
「いまでは一般的に、酢飯(すし飯)の上に具材を載せるタイプを『ちらし寿司』、酢飯の中に具材を混ぜ込むタイプを『ばら寿司』と呼ぶことが多くなっています。けれど、地域によってはどちらも『ちらし寿司』と呼んでいるようです」(北野さん)
ちらし寿司の歴史については、江戸時代前期の1713年に編まれた『和漢三才図会』(105巻)という、図説百科事典に記されていて、1958年に出版された『飲食事典』(本山荻舟=てきしゅう=著)に、詳しい解説が記載されています。
「ちらし寿司は『こけらずし』(押し寿司の一種。すし種を薄く切り、すし飯の上に並べると、屋根葺きのこけら板に似ていることから)が進化したもので、いろいろな具材が酢飯と一緒に混ぜ合わせられていて食べる時に箸で“起こす”から、『起こし鮨(おこしずし)』とも呼ばれていたそうです。さらに、それを皿に盛ると“ばらばら”になるので、ばら寿司ともいったようです。
また、『すくい寿司・起こし寿司』とも呼ばれる由来には、箱に詰めて竹皮でふたをして重石をして作られたというちらし寿司を、箸ですくうようにして、起こしながら食べることからのようです。昔、大坂・堂島の相場師(株式などの投資家)が、“散らし”という言葉を嫌って、この名を付けたといわれています」(北野さん)
五目寿司もばら寿司と同じく、さまざまな具材を酢飯と混ぜ合わせたものですが、こちらは「骨董鮨」と書いて「ゴモクズシ」と読んだそうです。ばらばらになった具材の様子が、いろいろなものが雑多に並ぶ骨董品(こっとうひん)店の店先と似ているからだそうです。
関東と関西の違いは?
東京などの関東では酢飯には具材を入れず、上に魚介類などの具材を載せるスタイルのちらし寿司、関西では酢飯にばらっと具材を混ぜ込んだばら寿司でひな祭りを祝うことが多かったそうです。
「父が大阪出身、母が京都出身、大阪で生まれ育った私(北野さん)の家では、“ひな祭りはばら寿司”と決まっていました。ひな祭り以外にも祝い事、誕生日などの祝い膳や来客の折などにも、ばら寿司は作られました。
母が作ってくれたばら寿司は、高野豆腐、シイタケ、ニンジンを細かく刻んで甘く煮たものと、甘酢にさっとくぐらせたちりめんじゃこを混ぜた酢飯を皿に盛り、ノリを散らして錦糸卵を載せ、さらにその上にコダイの酢漬け(またはタイの刺身)、タコ、イカ、エビ、マグロ、焼きアナゴ、絹さや(サヤエンドウ)などを載せ、紅ショウガを添えるというのが定番でした。
一方『飲食事典』によると、東京のちらし寿司は、ふた付きの丼または箱に酢飯を盛り、表面にシイタケ、レンコン、ニンジン、カンピョウなどを下煮したものに、酢漬けのコハダ、生のマグロ、アカガイ、トリガイ、塩蒸しのアワビ、蒲焼のアナゴ、塩ゆでしたエビ、味付けしたソボロなどを隙間なく載せ、もみノリなどあしらってあるとしています」(北野さん)
「父が大阪出身、母が京都出身、大阪で生まれ育った私(北野さん)の家では、“ひな祭りはばら寿司”と決まっていました。ひな祭り以外にも祝い事、誕生日などの祝い膳や来客の折などにも、ばら寿司は作られました。
母が作ってくれたばら寿司は、高野豆腐、シイタケ、ニンジンを細かく刻んで甘く煮たものと、甘酢にさっとくぐらせたちりめんじゃこを混ぜた酢飯を皿に盛り、ノリを散らして錦糸卵を載せ、さらにその上にコダイの酢漬け(またはタイの刺身)、タコ、イカ、エビ、マグロ、焼きアナゴ、絹さや(サヤエンドウ)などを載せ、紅ショウガを添えるというのが定番でした。
一方『飲食事典』によると、東京のちらし寿司は、ふた付きの丼または箱に酢飯を盛り、表面にシイタケ、レンコン、ニンジン、カンピョウなどを下煮したものに、酢漬けのコハダ、生のマグロ、アカガイ、トリガイ、塩蒸しのアワビ、蒲焼のアナゴ、塩ゆでしたエビ、味付けしたソボロなどを隙間なく載せ、もみノリなどあしらってあるとしています」(北野さん)
岡山など各地に特徴的なばら寿司が存在
ウェザーニュースでは、「酢飯の中に具を混ぜ込んでいる」か「酢飯の上に具を載せている」かアンケート調査を実施しました。すると、結果は「酢飯の中に具を混ぜ込んでいる」が62%で、「酢飯の上に具を載せている」(38%)を上回る結果となりました(2022年2月25〜26日実施、7036人回答)。
地域別に詳しく見ると、具材を混ぜ込むばら寿司スタイルのものが近畿や中国、四国、九州では7割以上を占めるなど、特に西日本で多いようです。
「岡山県ではばら寿司を『岡山寿司』とも呼び、郷土料理としても有名です。江戸時代、備前国(岡山県東部)岡山藩主だった池田光政が、庶民のぜいたくを禁じて質素倹約を奨励する『一汁一菜令』を出したことで、岡山名物のばら寿司が生まれたと言われています。
岡山のばら寿司はこのご法度をかいくぐるため、一計をめぐらした庶民が考え出した料理です。瀬戸内海で獲れた魚介類をはじめとするさまざまな具材を器の底に敷き、それを覆い隠すように上から酢飯を載せます。食べる直前に器をひっくり返し、ハレの日の料理として大いに舌鼓を打ったといいます。素晴らしい庶民の知恵ですね」(北野さん)
鹿児島県には酢の代わりに酒を用いる「酒寿司」もあるそうです。日本各地にそれぞれの「ちらし寿司」「ばら寿司」があり、家庭料理としても定着しています。
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地域別に詳しく見ると、具材を混ぜ込むばら寿司スタイルのものが近畿や中国、四国、九州では7割以上を占めるなど、特に西日本で多いようです。
「岡山県ではばら寿司を『岡山寿司』とも呼び、郷土料理としても有名です。江戸時代、備前国(岡山県東部)岡山藩主だった池田光政が、庶民のぜいたくを禁じて質素倹約を奨励する『一汁一菜令』を出したことで、岡山名物のばら寿司が生まれたと言われています。
岡山のばら寿司はこのご法度をかいくぐるため、一計をめぐらした庶民が考え出した料理です。瀬戸内海で獲れた魚介類をはじめとするさまざまな具材を器の底に敷き、それを覆い隠すように上から酢飯を載せます。食べる直前に器をひっくり返し、ハレの日の料理として大いに舌鼓を打ったといいます。素晴らしい庶民の知恵ですね」(北野さん)
鹿児島県には酢の代わりに酒を用いる「酒寿司」もあるそうです。日本各地にそれぞれの「ちらし寿司」「ばら寿司」があり、家庭料理としても定着しています。
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参考資料など
『飲食事典』(本山荻舟・平凡社)『すし物語』(宮尾しげを・講談社学術文庫)