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寒い時期のいちごはなぜ甘くなる?

2022/02/23 12:04 ウェザーニュース

以前は、いちごといえば春に旬を迎える食材でした。しかし、今は11月頃から店頭に並び始め、クリスマスやお正月の食卓を彩る「寒い時期の果物」ともなっています。

実際にウェザーニュースで「いちごの季節のイメージは?」というアンケート調査を実施したところ、「春」が61%で最も多い割合を占めたものの、「冬」の回答も3割以上になりました。

時代とともに、収穫時期がこんなに変わった果物も珍しいのではないでしょうか。また、春に採れるいちごと冬に採れるいちごでは、味にも違いがあるそうです。

いちごの旬と糖度について、JSPP(一般社団法人日本植物生理学会)サイエンス・アドバイザーの勝見允行さんは、日本植物生理学会HPの「植物Q&A」(※)にて、以下のとおり回答しています。

いちごの流通はおもに12~5月

「昔は露地栽培が主流だったので、冬には食べられませんでした。今はハウス栽培が定着して年中食べられるので、季節感がなくなりましたね。その上、さまざまな品種が相次いであらわれて、いろいろな味が楽しめます」(勝見さん/日本植物生理学会HP「植物Q&A」より)
農林水産省の「いちごの卸売数量(2020年)」のグラフを見ると、卸売のヤマ場は12月から5月となっています。では、冬のいちごと春のいちごでは、どちらが甘いのでしょうか。

「いちごは品種によってサイズや形はもちろんのこと、香り、味(主として糖度と酸度)も異なります。いちごの甘味は含まれるショ糖の濃度に依存するのですが、酸味も重要です。舌が甘いと感じる程度は、酸味の成分がどのくらい混じっているかに影響されます。

いちごは一般に1~2月の寒い時期は酸味が減少し、甘味が増してきます。そして、春になって暖かくなると、酸味が強くなります。これは、アスコルピン酸の含量が増えるからでしょう」(勝見さん/日本植物生理学会HP「植物Q&A」より)

寒いといちごが甘くなる理由

では、なぜ冬のいちごが春のいちごより甘くなるのでしょうか。

「植物の開花の時期や果実の成熟の時期などは、単なる気温変化だけでなく、積算温度によって決められることが知られています。いちごも収穫までの積算温度が指標とされ、一般的な目安は600℃といわれています。もしハウス栽培で室温を20℃に保っていれば、積算温度が600℃になるには1ヵ月かかります。15℃にしてあれば、40日かかることになります。

つまり温度が高いと生長が早いため、じっくりとうま味(甘味を主体とする)の成分の蓄積が起きず、どんどんサイズだけの生長が進んでしまうということでしょう。温度が低いと、うま味成分の蓄積も十分になされるため、甘味の強いいちごになると思われます」(勝見さん/日本植物生理学会HP「植物Q&A」より)

ハウスで栽培されるといっても多くはボイラーなどで加熱せず、昼の太陽光で温かい室内をつくるだけです。外気の影響を受けるので、春のいちごは生長が早いのに比べ、冬のいちごはじっくり生長して甘味が増す、ということになります。

いちごは先端にいくほど甘い

では、同じいちごでもどう食べたほうがおいしく感じるのでしょうか。千葉県君津市で観光農園を営む佐野卓男さんに「上手ないちごの食べ方」を伺いました。

「うちにいちご狩りにみえるお客さんの多くは、ヘタを持って先端からいちごを食べていらっしゃいます。でも、これは間違いです。いちごは、先端にいくほど甘くなります。もし先端から食べると、酸っぱいヘタ側で食べ終わるので、後味が良くありません。ヘタをむしり取ってヘタ側から食べると、最後が先端のもっとも甘いところになるので、後味良く食べ終わることができます」(佐野さん)

何粒も連続して食べる場合、酸っぱい部分で終わり続けるのと、甘い部分で終わり続けるのとでは、ずいぶん後味が変わってきます。

季節的にはまだ寒い今のうちに買って、ヘタ側から食べて最後に先端を味わう。これがいちごの甘味をもっとも感じ取れるおいしい食べ方のようです。皆さんも、さっそく試してみてください。
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参考資料など

※日本植物生理学会みんなのひろば「植物Q&A」(https://jspp.org/hiroba/)