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富士山は「自然遺産」ではなく「文化遺産」 その理由とは

2022/02/19 19:06 ウェザーニュース

今日2月23日(水)は天皇誕生日ですが、「富士山の日」でもあります。

「ふ(2)じさん(23)」「ふ(2)じみ(23)」と読めることなどから、複数の団体が2月23日を「富士山の日」と定めているようです。

富士山にまつわる話はたくさんありますが、今回は「世界遺産と富士山」についてみていきます。

3つに分けられる「世界遺産」とは

富士山は2013年に世界遺産に登録されました。世界遺産は「文化遺産」「自然遺産」、そしてそれらにまたがる「複合遺産」の3つに分けることができます。

1100を超える世界遺産のうち、複合遺産はギリシャの「メテオラの修道院群」、タンザニアの「ンゴロンゴロ自然保護区」、ペルーの「マチュ・ピチュ」など39しかありません。

富士山はこの3つの世界遺産のうち「文化遺産」に登録されています。

これを知って、意外に思う人もいるのではないでしょうか。「どうして自然遺産じゃなくて、文化遺産なの?」と。

その謎に迫ってみましょう。

自然遺産は“落選”してしまった富士山

富士山を世界遺産に登録する活動は当初、自然遺産を目標に始まりました。1992年には、自然保護グループでつくる「富士山を世界遺産とする連絡協議会」も発足しています。

世界自然遺産の候補地として、国内の検討会で富士山を含めた地域が浮上したこともあります。しかし、富士山は国内の検討会でも世界自然遺産の候補から落選してしまいます。

理由は主に次の2点だと言われています。
▼世界の山々に比べると、富士山の形や火山活動などはそれほど珍しくない。
▼富士山の開発が進んでいた。ゴミや屎尿(しにょう)などを原因とする環境の悪化も深刻だった。

これらの理由で、富士山は世界自然遺産にはなれませんでした。ならばと、目標を文化遺産に変更して、見事、富士山は2013年「世界文化遺産」として登録されたのです。

「信仰の対象と芸術の源泉」として認められた

富士山は「信仰の対象と芸術の源泉」としての価値が認められ、世界遺産に登録されています。

富士山は古来、噴火を繰り返す山として畏(おそ)れられるとともに、富士山に住むとされていた神仏への信仰から敬われてもきました。

高く美しく荘厳な姿も含め、富士山は山そのものが神聖視され、信仰の対象となっていきました。平安時代後期には、山岳信仰や密教などが結びつき、多くの修験者(しゅげんじゃ)が集うようにもなりました。

神聖な存在である富士山を遠くから拝む「遙拝(ようはい)」、ご神体である富士山に登る「登拝(とはい)」も行われるようになりました。

江戸時代には、さまざまな絵の題材にもなりました。葛飾北斎の『富嶽三十六景』や歌川広重の『東海道五十三次』などの浮世絵には富士山が描かれています。

ゴッホやモネなどの印象派の画家は、これらの浮世絵から大きな影響も受けています。

古代から連綿と続く人々のこうした思いと行いが「信仰の対象と芸術の源泉」と評価され、富士山は世界文化遺産に登録されたのです。

「山中湖」や「三保松原」も世界文化遺産の一部

世界文化遺産の富士山の構成資産は、登山道などの「富士山域」のほか、「富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)」「山中湖」「河口湖」「白糸(しらいと)の滝」「三保松原(みほのまつばら)」など合計25にのぼります。

自然遺産としては世界遺産に認められていませんが、富士山とその周辺の自然からは気高さも感じられます。

「富士山の日」を機に、日本の文化と自然のあり方に改めて目を向けてみるのも良いかもしれません。

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参考資料など

『世界遺産300 世界遺産検定2級 公式テキスト』(監修/NPO法人 世界遺産アカデミー、著作者/世界遺産検定事務局、マイナビ出版)、『世界遺産100 世界遺産検定3級 公式テキスト』(監修/NPO法人 世界遺産アカデミー、著作者/世界遺産検定事務局、マイナビ出版)、『決定版! 富士山まるごと大百科』(監修/佐野充、学研プラス)、『おとな旅プレミアム 河口湖・山中湖 富士山 '19-'20年版』(TAC出版)、『日本の365日を愛おしむ』(著者/本間美加子、飛鳥新社)、富士山世界遺産センター「世界遺産登録までのあゆみ」(http://www.fujisan-whc.jp/about/history.html)