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二十四節気「雨水」 春の気配が濃くなる時季

2022/02/18 14:06 ウェザーニュース

二十四節気の「雨水」は「うすい」と読みます。降る雪は雨に変わり、積もった雪や張った氷は解け、水になっていきます。これが二十四節気の「雨水」の時季です。

「雨水」という文字の印象から梅雨を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、梅雨とは関係ないのですね。雨水は立春が過ぎ、本格的な春を迎える予備期間ともいえます。

今年の雨水は2月19日(土)から始まります。キーワードをもとに、雨水について見ていきましょう。

時に幻想的な「春の霞(かすみ)」

微細な水滴が空中に浮遊するため、遠方などがぼんやり見える現象や、その際に見えるうっすらした雲のようなものを「霞」といいます。

現象としては霧(きり)と同じですが、春に発生するものを「霞」、秋に発生するものを「霧」と呼び、区別することがあります。

ただし、気象用語に「霞」は入っていません。

〜春なれや名もなき山の薄霞(うすがすみ)〜

これは、江戸時代前期の俳人、松尾芭蕉(1644-1694)の句です。名もない山に、薄くたなびいている霞を見て、春を感じている様子がうかがえます。

山の麓や湖にかかる霞は、時に幻想的でもあります。

河原の「猫柳(ねこやなぎ)」に早春を感じる

猫柳はヤナギ科の落葉低木で、密生した銀白色の毛の花穂(かすい)を早春に付けます。

花穂とは、穂のように群がり集まって咲く花を付けた茎や枝、あるいは、その花の付き方のことをいいます。猫柳の花穂が猫の毛並みを思わせるため、この名前が付きました。

河原などの水辺に多く生えるため、川柳(かわやなぎ)などともいいます。

俳人の山口誓子(やまぐちせいし/1901-1994)は、次の一句を詠んでいます。

〜猫柳高嶺(たかね)は雪をあらたにす〜

近くにある猫柳は銀白色の毛を輝かせていて、遠くに見える高い山には新雪が降り注ぎ、鮮やかに光っているのでしょうか。春の兆しと身が引き締まる余寒の厳しさが感じられる句です。

「木の芽」と「木の芽」は同じ?

この見出しはいったいナニ? なぞなぞ? と思った人もいるかもしれませんね。

じつは、前者の「木の芽」は「このめ」で、後者の「木の芽」は「きのめ」のつもりで書いています。

木の芽を「このめ」と読めば、樹木一般の芽(主に新芽)を意味し、「きのめ」と読めば、山椒(さんしょう)の芽(主に新芽)を意味します。

近年はしばしば混同して使われますが、かつては分けて使っていました。

木の芽(このめ)がふいても、木の芽和え(きのめあえ)を食べても、早春が感じられる点は共通しています。

「雛(ひな)祭り」は女の子のための行事?

3月3日は、言わずと知れた「雛祭り」ですね。「上巳(じょうし)の節句」などともいいます。

古代中国では、3月初めの巳(み)の日を上巳といって、川で身を清める習慣がありました。これが上巳の節句で、雛祭りのルーツといわれます。

この上巳の節句が奈良時代に日本に伝わり、やがて人の代わりに紙や藁(わら)で作った人形に穢(けが)れを移して、川に流すようになったといわれます。

時代が下ると、この人形を雛壇に飾るようにもなり、雛祭りへと発展していったのです。

旧暦3月は桃が開花を迎える時季でもあるため、「桃の節句」の別名も生まれました。

現在、雛祭りは女の子の健やかな成長を願う行事として定着しています。

しかし、室町時代頃までは、女の子だけでなく、男の子や大人の男女も含めて、皆が健康で安全に過ごせることを願うお祭りだったようです。


春の気配が濃くなる雨水の時季。解けた雪の水たまりを見たときには「もうすぐ本格的な春かな」と、雨水であることに思いを馳せつつ、散策してみるのも楽しいでしょう。
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参考資料など

監修/山下景子:作家。『二十四節気と七十二候の季節手帖』(成美堂出版)や『日本美人の七十二候』(PHP研究所)など、和暦などから日本語や言葉の美しさをテーマとした著書が多数ある。