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きのう2月10日の南岸低気圧による雪 なぜ東京では影響軽減?

2022/02/11 21:02 ウェザーニュース

きのう2月10日(木)は関東の南海上を低気圧が進む、いわゆる「南岸低気圧」の影響で関東甲信地方や静岡県などで雪が降りました。

東京23区などでは前日の予報よりも影響は軽く済み、大雪にはなりませんでした。一方で、千葉や茨城では予報と同等かそれ以上の雪が積もったところがありました。

ウェザーニュースでは今後の予報に活かすためにメカニズムを解析中ですが、まずは速報的に現象を振り返り、理由を考察します。

東京都心では最大で積雪2cm

先月の大雪の時との積雪深(地面からの雪の厚み)の比較
東京都心では午前中から雪が降る予報でしたが、実際には昼過ぎまではほぼ雨で経過しました。昼過ぎから雪のエリアが拡大して都心でも雪が降ったものの、前日に予想されていたような5〜10cmの積雪とはならず、最大で2cmの積雪が観測されるに留まりました。

先月1月6日の大雪の時との違いを積雪深(地面からの雪の厚み)で比較すると、東京23区では前回より少ない状況がわかります。一方で、千葉県北西部や茨城県内では先月と同等かそれ以上の積雪となったところもあることがわかります。
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なぜ東京は午前中雨が降っていたか

まずは、午前中に雪ではなく雨が降っていた理由を画像を用いて解説します。大気の中でも低い層にあたる、東京スカイツリーの先端ほどの高さの気温と風向風速を書き込んだ関東地方の地図です。

左側の朝6時の図を見ると、低気圧は静岡県の南にあって、低気圧に向かって吹く風は東北東から吹いてきていたことがわかります。一方で、右側の夜9時(21時)の図では低気圧は房総半島よりも東に進み、低気圧に向かう風は北北東から吹いてきていたことがわかります。

ここで、冷気の着色部分を見ると、朝6時の図では東からの風に押されて関東平野の北西部に留まっている様子が、夜9時の図では風の流れに合わせて南下している様子が、それぞれ読み取れます。

つまり簡単にいうと、上空から雪が降ってくる途中で冷気が十分でなかったためにとけてしまい、午前中は雪ではなく雨が降ったと考えられます。午後はこの風向きの変化によりだんだんと冷気が東京周辺にも流れ込み、雪がとけないまま降ったと考えられます。

冷気が十分になったあと、なぜ東京では大雪にならず、千葉や茨城で大雪になったか

冷気が十分強くなった夜以降、もう一つの変化が見られ始めます。それは降水の強さです。東京や神奈川などでは、冷気が強くなる頃には降水が弱まり始めていました。一方で、千葉や茨城では朝にかけて帯状の雲が停滞し、まとまった降水が続きました。

降水量が多いと降る雪の量が増えるのはもちろんのこと、降水が強ければその分「雪がとけるときに周囲の気温を下げる」という効果が強く現れ、地上の気温をいっそう低くすることにも繋がるのです。このため、地上の気温が下がったことでよりいっそう雪が積もりやすい状況になったと考えられます。

その結果、雪ではなく雨の降る時間が長かった東京では大雪にならず、千葉市付近から水戸市付近に停滞した帯状の雲の周辺では大雪になったと考えられます。


なお、これらは現時点で考えられる要因のひとつであり、他にも地面に水がたまっていた状況など、様々な要因が絡み合って東京での大雪が回避されたと考えられます。ウェザーニュースでは現象を詳細に分析し、今後の予報改善に向けた取り組みを開始しています。

雨と雪の境界もリアルタイムに分析

雨か雪かの境界は、簡易的に「地上気温」と「湿度」で推定することが出来ます。この「雨雪判別図」は、過去の研究からおおよその目安が教科書等にも掲載されています。

ただ、地域や気象状況によりこの境界線はずれが生じることがあるため、ウェザーニュースではユーザー投稿を活用して、リアルタイムに境界線を分析したところ、教科書に載っている過去の経験則よりもやや高い気温で雪になっている状況がわかりました。
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また、この図からは、わずか1℃程の差でも雨か雪かが変わってしまうということも読み取れます。

たった1℃の差でも雨か雪かが変わる

「冬型の気圧配置による大雪」などと比較して、南岸低気圧は非常に予報の難しい現象です。しかも、南岸低気圧ではたった1℃の気温の差でも雨か雪かが変わるような状況になることが多く、それによる影響にも大きな差が出ると言えます。

今朝にかけての東京都心の降水量は29.5mmでしたので、もしも全て雪として降っていた場合、10cm程度の積雪になっていたと考えられます。先月同様の混乱が生じてもおかしくありません。

厄介なことに、明後日13日(日)から14日(月)にかけても、南岸低気圧の通過に伴う降雪の影響を受けることが否定的ない状況です。直前になるまでに予報が変わってしまう可能性があるため、予報が悪くなって大雪になるケースも想定しておくようにしてください。

わずかな差異で影響が大きく異なる現象ですので、様々な可能性を考えておくことが被害を減らす一助になります。
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参考資料など

写真:ウェザーリポート(ウェザーニュースアプリからの投稿) たけやんこさん