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温水洗浄便座の誤った使い方

2022/02/18 06:04 ウェザーニュース

冬のトイレでも温かく清潔に使えて嬉しい温水洗浄便座。ただ、「使い方によっては様々なリスクが潜んでいる」と、草間かほるクリニック(東京・麻布十番)の草間香院長は注意します。注意点など教えていただきましょう。

温水洗浄便座症候群とは

温水洗浄便座は、今や家庭だけでなく職場や街なかの公共トイレでも備えているところが多くなりました。

「温水洗浄便座は、お尻を清潔にするにはよいものです。痔の予防やケアの面でも、肛門の周りを清潔にしてくれるため、痔の患者さんで使って楽になったという人もいます。

ただ、なかには誤った使い方でトラブルを招いてしまっている人も少なくありません。医学用語ではありませんが、専門医の間では“温水洗浄便座症候群”と呼んでいます」(草間先生)

草間先生によると、温水洗浄便座の普及とともに“温水洗浄便座症候群”の患者さんも増えたといいます。

“心地よさ”がよいとは限らない

草間先生が指摘する使い方は次の通り。

・温水を10秒以上当てる→5秒以内に
・水圧が高い→弱めに設定
・温水の温度が高い→温(ぬく)めの温度に設定
・温風を長時間当てる→ペーパーでおしぶきしてから軽く乾燥

「スッキリ感を求めて洗いすぎになっていることが多いようです。肛門周囲の皮膚はとてもデリケートなので、温度や水の刺激で皮膚が傷つけられる可能性があります。

皮膚を守る役割を果たしている皮脂などを過剰に落としてしまうのもよくありません。湿疹や皮膚炎、感染症などを引き起こす可能性があるのです。

長年使っているうちに刺激に慣れ、より高めの温度や水圧、長時間使うようになっているかもしれません。心地よいことが体にもよいとは限らないのです」(草間先生)

便意や治療を目的にしない

本来の目的以外で使うのも、問題だといいます。

「意外に多いのが、排便前に使って刺激で便意を促すという使い方です。しかし、刺激なしでは排便しにくくなってしまいます。便秘がちの人が刺激性の下剤を常用すると効かなくなってくるように、温水洗浄も刺激に慣れたり、依存してしまうなどよくありません。

また、肛門を広げた状態で洗ったり、浣腸代わりに使うのも止めるべきです。肛門の奥まで洗うと、内部の粘膜が傷ついたりすることもあります。

温水洗浄便座は、便秘を治療したり、便を促したりするためのものではないのです」(草間先生)

上手に使うために

草間先生は、肛門の周りはとてもデリケートな部位だと強調します。

「私はよく患者さんに、『顔と同じソフトさで』と伝えます。顔を洗うときに熱いお湯を使ったり、強く水を当てたり、熱風で乾かそうとはしないでしょう。肛門の周りも同じようにデリケートなのです。温水洗浄便座だけでなく、トイレットペーパーでもゴシゴシ拭くのは止めて、おしぶきをするように伝えています」(草間先生)

ということは、お尻への意識を変えた方がよさそうです。

「温水洗浄便座自体は、肛門の周りを清潔にするのに役立つものなので、適切に使うことを心がけましょう。また、お尻にかゆみやただれ、出血などの症状があるときは、肛門科を受診してください」(草間先生)

トイレのことはプライベートかつデリケートなことなので表立ちしにくいものです。いま一度、自分のやり方を見直してみてはいかがでしょうか。

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