facebook line twitter mail

体を温めると思われがちの根菜類 実は冷やすものも?

2022/02/07 06:04 ウェザーニュース

冬は冷えやすいので、“根菜類を選ぶようにしている”という人も多いのではないでしょうか。ところが根菜類は必ずしも体を温めるものではないといいます。

国際中医薬膳師で源保堂鍼灸院(東京都渋谷区)の瀬戸佳子先生に、教えていただきます。

根菜類の“性質”とは何か

そもそも薬膳の“体を温める”とは、どういうことなのでしょうか。

「東洋医学では、食材に体を冷やす性質のもの、温める性質のものがあると考えています。これは、その食材を食べた後に体が温まったのか、冷えたのかという、過去の多くの経験則から導かれたもの。

大きく『寒、涼、平、温、熱』に分かれます。『寒性』が体を最も冷やし、『熱性』が最も体を温めるとされています。『平性』は、どちらでもないものです。

実は冬に食べることの多い根菜類には、思いのほか体を冷やす性質のものが多いのです」(瀬戸先生)
根菜の性質
「冬によく食べる根菜類では、ダイコンやゴボウは涼性、こんにゃくは寒性です。ニンジンのほか、山芋やサツマイモなどの多くの芋類は平性です。体を温める野菜としては、カブがあります。他に根菜ではありませんが長ネギやニラなどがあります」(瀬戸先生)

食性で体を調整

こういった食性から体を調整するのが薬膳の考え方です。

「例えば、涼性のゴボウは、炎症を取り除き、余分なものを排出する作用があります。喉の痛みをとったり、吹き出物を改善したり、便通をよくしてくれます。

同じ涼性でもダイコンは気を下ろす作用が強く、咳が込み上げてきたり、食べ物が上に上がって来たりするのを抑える作用があります。消化を促し、咳止めの効果があります。

熱性の長ネギには体を温めたりする作用があり、白い部分はよくカゼの予防や初期に用います。平性はそのどちらでもなく、日常的にとても使いやすいものです。米のように主食として用いるものの多くが平性です」(瀬戸先生)
性質による作用の違い

加熱や加工で変わることも

食性は、調理法などによっても影響を受けるといいます。

「レンコンは、生と加熱後で食性が変わる食材です。生では『寒性』で非常に強い冷やす作用があります。薬膳では、生の絞り汁を梨の果汁と合わせるレシピがあり、二日酔いなどに使います。しかし加熱すると『平性』になるので、レンコンの蒸し物やお粥は、胃腸に優しく、体力の回復によいものです。

他の食物も、加熱したり干すなどの加工によって、体を温める性質に傾きます。例えば、『涼性』のダイコンも、蒸したり、日光に干すことによって、『平性』に近づくのです」(瀬戸先生)

寒い冬は加熱調理が多くなります。

「根菜類は加熱して食べることが多く、干し芋や切り干し大根のように保存食として干されているものも多いです。よく『冬の根菜類が体を温める』と言われるのは、こういったことが関係しているのでしょう」(瀬戸先生)

冬にも“冷やす食材”は必要

冬に「冷性」や「涼性」の根菜類を食べるのは、どうなのでしょうか。

「体を温める食材も冷やす食材も、どちらがいけないというものではありません。冷えるからと体を温める食材ばかりをとれば、体が乾燥して肌荒れをしたり、熱がこもりすぎてのぼせたり、口内炎などの炎症が起きてしまうこともあります。

逆に、デトックスした方が良いと思って冷やす食材ばかりとっていると、お腹が下りがちになったり、体が冷えたり、気持ちまで落ち込みがちになりかねません。冷やす食材も温める食材も、どちらもバランスよくとるのが大切なのです」(瀬戸先生)

ただ、実際にバランスよくするのはなかなか難しそうです。

「旬の食材をできるだけいろいろな種類を摂るといいでしょう。その上で、冷えやすい人は加熱調理をしたり、乾物を利用すると冷え予防になります。試してみてください」(瀬戸先生)

暦の上では春になったとはいえ、厳しい寒さはまだまだ続きます。食べることで健康を心がけることも良さそうです。
>>その他のニュースをアプリで見る