地域別に見ると、全国的には少数派の「サケ」が半数以上を占めていたのは、甲信(60%)・北陸(57%)・中国(50%)で、その他の地域では「シャケ」が多数派でした。
「シャケ」と「サケ」、なぜ2つの呼び名が生まれたのでしょうか。
「シャケ」と「サケ」、なぜ2つの呼び名が生まれたのでしょうか。
「シャケ」は“江戸っ子訛り”?
「一般名称は『サケ』で、『シャケ』は地方名とされています。文献によると、その地方は東京で、いわゆる“江戸っ子訛(なま)り”と解説されています」と言うのは、歳時記×食文化研究所の北野智子さんです。
しかし、北野さんは“江戸っ子訛り”説に疑問を持ちます。“江戸っ子訛り”は「シ」と「ヒ」が入れ替わるので、「東」を「シガシ」、質屋を「ヒチヤ」と言ったりします。
「『サケ』が『シャケ』になるのが“江戸っ子訛り”なら、『鯖(サバ)』を『シャバ』、『秋刀魚(サンマ)』を『シャンマ』と言うかといえば、そういう記録はありません。“江戸っ子訛り”説は怪しくなりました」(北野さん)
しかし、北野さんは“江戸っ子訛り”説に疑問を持ちます。“江戸っ子訛り”は「シ」と「ヒ」が入れ替わるので、「東」を「シガシ」、質屋を「ヒチヤ」と言ったりします。
「『サケ』が『シャケ』になるのが“江戸っ子訛り”なら、『鯖(サバ)』を『シャバ』、『秋刀魚(サンマ)』を『シャンマ』と言うかといえば、そういう記録はありません。“江戸っ子訛り”説は怪しくなりました」(北野さん)
「鮭」は「フグ」の古名だった
「漢字から由来を調べてみると、『鮭』は本来『フグ』と読み、河豚の古名でした。『鮭』のつくりの『圭』が『怒(いか)る』を表し、フグは怒るとマリのように腹が膨れる魚だからです。『サケ』の本字は『ナマグサ(生臭)』を意味する『鮏』で、『鮭』は俗字で後世の使用だといいます」(北野さん)
ちなみに、今の中国でサケは「三文魚」と表記されています。安っぽい魚のように聞こえますが、英語のsalmon(サーモン)から来ているそうです。
ちなみに、今の中国でサケは「三文魚」と表記されています。安っぽい魚のように聞こえますが、英語のsalmon(サーモン)から来ているそうです。
「シャケ」の語源はアイヌ語だった
北野さんがさまざまな文献を調べた結果、一つの結論に達したと言います。
「シャケの語源は、アイヌ語で“夏の食べ物”を意味する『シャケンベ』から来たというのが一番信頼できる説です。シャケは東北や北陸地方でも獲れましたが、一大産地といえば北海道です。江戸時代にアイヌとの交易でもたらされた『シャケンベ』が『シャケ』として流通していたと思われます」(北野さん)
旬の秋に獲れる鮭を「アキアジ」と呼ぶことがあります。この呼び名も、「秋の魚」を意味するアイヌ語の「アキアチップ」が転訛(てんか)したものだと北野さんが付け加えます。
「サケ」の地方名とされた「シャケ」が、実は「サケ」の本場の北海道の先住民族アイヌの「シャケンベ」が語源の可能性があるというのです。すると「サケ」という呼び名も、「シャケ」から来ているのかもしれません。
» その他のニュースをアプリで見る
「シャケの語源は、アイヌ語で“夏の食べ物”を意味する『シャケンベ』から来たというのが一番信頼できる説です。シャケは東北や北陸地方でも獲れましたが、一大産地といえば北海道です。江戸時代にアイヌとの交易でもたらされた『シャケンベ』が『シャケ』として流通していたと思われます」(北野さん)
旬の秋に獲れる鮭を「アキアジ」と呼ぶことがあります。この呼び名も、「秋の魚」を意味するアイヌ語の「アキアチップ」が転訛(てんか)したものだと北野さんが付け加えます。
「サケ」の地方名とされた「シャケ」が、実は「サケ」の本場の北海道の先住民族アイヌの「シャケンベ」が語源の可能性があるというのです。すると「サケ」という呼び名も、「シャケ」から来ているのかもしれません。
» その他のニュースをアプリで見る
参考資料など
『飲食事典』(本山荻舟/平凡社)、『たべもの起源事典』 (岡田哲編/東京堂出版)、『たべもの語源辞典』(清水桂一編/東京堂出版)、『魚へん漢字講座』(江戸家魚八/新潮文庫)