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目はどっちから入れるのが正解? 縁起だるまの秘密と正しい作法

2022/01/08 05:05 ウェザーニュース

だるまは、ポピュラーな招福アイテムの一つですね。ウェザーニュースのアンケート調査では、だるまが家にあるという人は全体で18%。およそ5人に1人の割合で、だるまを飾っているようです。

また、地域別で詳しく見ると、だるまの産地として知られる群馬県や長野県では5割近くの人がだるまを所有していることが分かりました。
ところで、だるまはなぜ縁起が良いとされているのでしょうか? 『町田忍の縁起物のひみつ』(天夢人刊)の著者で、庶民文化研究の第一人者である町田忍さんに、一般的な観光土産のだるまと縁起だるまの違いについて、詳しく伺いました。

発祥は240年ほど前の江戸時代後期

簡単に言うと、縁起だるまは群馬県高崎市の少林山達磨寺に起源をもつだるまのことをいいます。

「今から240年ほど前、江戸時代の天明年間(1781〜89年)に少林山達磨寺の9代目住職・東嶽和尚が、大飢饉に苦しむ周辺の農民の生活を助けようと、農閑期の副業として張り子だるまを製作させたのが始まりです。姿は最初から、御利益の高い達磨大師の座像を表現したものでした」(町田さん)

鬚は亀、眉は鶴に見立てられる

観光土産のだるまとの相違点は、その様式にあるといいます。

「赤い体のお腹に大きく金文字で『福入』の二字(なかには『福』一字も)。左右の両肩に同じく金文字で『願』が入れられているのが決まり。この願には『家内安全』『商売繁盛』『大願成就』『目標達成』などがあり、お腹の縦線で達磨大師の衣が表現されています」(町田さん)

あまり知られていませんが、面白いのは鬚と眉。鬚は縁起のいい亀、眉はこれまた縁起物の鶴に見立てられているそう。ともに一対で、よく見ると確かにそんな感じがしてきますね。

「体が赤いのは赤が魔除け(破邪)の色だからです。これが伝統的な縁起だるまの様式ですが、最近のだるまには、『合格』などとお腹に『願』が墨書されたものや、ファンシーなカラーだるまもあります」(町田さん)

最初に入れる目は右(左目)

縁起だるまの最大の特徴は目。販売時、両目は白で目が入っていません。つまり、新たに購入した縁起だるまには、目入れの儀式が待っているのです。

「ここで迷うのが目を入れる順番。片目を入れて願いが叶ったら両目を開眼させる、白のまま飾り大願成就したら両目を入れる、最初に両目を入れる、などと、家庭によって入れ方はさまざまです。

どれも間違いではありませんが、本家の少林山達磨寺では、願をかけながら最初に右(左目を入れ、成就したら(あるいは1年を無事に過ごせたら)、左(右目)を入れるのが正しい作法としています。

これは選挙の当選風景でおなじみですね。もっとも江戸時代には、あらかじめ開眼された縁起だるまが売られていました。

なぜかというと、達磨大師のパワーは目力にあると信じられていたからです。最初から両目を入れたほうが、御利益や魔除けになるというわけです。

いずれにしても、1年が経ったら新しい縁起だるまを買い、家庭を守って福をもたらせてくれた古い縁起だるまは、お焚き上げ(どんど焼き)をしてしっかり供養してあげること、これが大切です。なぜならば、『御利益は感謝の気持ちと表裏一体のものとして得られる』といわれるからです」(町田さん)

仏壇、神棚、玄関、サイドボードの上など、縁起だるまを飾る場所にルールはありません。ただし、望ましいのは整頓されている場所で、いつも家族の目が届く場所。縁起だるまに見守られる空間づくりを心がけると、御利益も期待できるはず。

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参考資料など

『町田忍の縁起物のひみつ』(町田忍/天夢人)