春に花が咲き菊に似ていることが由来
冬が旬の食材なのに、なぜ「春菊」と呼ばれるのですか。
「春菊の由来は、春に花が開き、葉が菊に似ていることからです。俳句の季語でも『春』とされています。分類はキク科キク属、原産地はヨーロッパの地中海沿岸で、日本には戦国時代に明(みん=中国)から渡来したと伝わっています。
初めは関西で食材として用いられ、江戸時代から各地で栽培が始まったようです。1824(文政7)年の『武江産物志』という書物に、江戸近郊の農産物として練馬の蘿萄(ダイコン)、小松川の秋菜(ふゆな=コマツナ)や北沢の西瓜(スイカ)、内藤新宿の番椒(トウガラシ)や岩槻の牛蒡(ゴボウ)とともに、千住の春菊や水芹(セリ)、茄子(ナス)なども紹介されています。
春菊を食用にするのは日本や中国などの東アジア地域だけで、ヨーロッパでは観賞用の植物です」(北野さん)
「春菊の由来は、春に花が開き、葉が菊に似ていることからです。俳句の季語でも『春』とされています。分類はキク科キク属、原産地はヨーロッパの地中海沿岸で、日本には戦国時代に明(みん=中国)から渡来したと伝わっています。
初めは関西で食材として用いられ、江戸時代から各地で栽培が始まったようです。1824(文政7)年の『武江産物志』という書物に、江戸近郊の農産物として練馬の蘿萄(ダイコン)、小松川の秋菜(ふゆな=コマツナ)や北沢の西瓜(スイカ)、内藤新宿の番椒(トウガラシ)や岩槻の牛蒡(ゴボウ)とともに、千住の春菊や水芹(セリ)、茄子(ナス)なども紹介されています。
春菊を食用にするのは日本や中国などの東アジア地域だけで、ヨーロッパでは観賞用の植物です」(北野さん)
関西では「菊菜」と呼ばれるワケ
ウェザーニュースでアンケート調査を実施したところ、全国的には「春菊」と呼ぶ人の割合が約9割だったのに対し、関西では「菊菜」と呼ばれる割合が高いことが分かりました。どうして関西では呼び名が異なるのでしょうか。
「関西で春菊を菊菜と呼ぶのは、葉の形が菊の葉に似ていることからとか、葉茎(ようけい)を『菜(な)』として食べるからといわれています。
呼び名はいずれも菊にちなみますが、その他にも地域によってさまざまで、美濃(岐阜県南部)では『薩摩菊』、讃岐(香川県)では『りゅうきゅうぎく』、阿波では『おらんだぎく』、肥後(熊本県)では『きくなでしこ』や『ふだ草』とも呼ばれるそうです。
ほかにも『不断菊(ふだんぎく)』『はるぎく』『六月菊』、中国・朝鮮半島から渡来したので『高麗菊』の名もあります。一年中、発芽・成長することから『無尽草(むじんそう)』とも呼ばれます。
呼び名だけでなく、関東と関西では栽培される種類も異なるのです。春菊は千葉県、群馬県、大阪府、兵庫県、福岡県などの大都市近郊が主産地で、種類は葉の大きさによって大葉種、中葉(ちゅうば)種、小葉種に大別されます。全国的に栽培されているのは、葉が薄くて切れ込みが少ない中葉種です。
関東を中心に栽培される品種は『株立ち型』といい、株立ちした茎葉を順次摘み取って出荷するタイプです。葉の切れ込みが深めなのが特徴です。これに対し、関西で栽培される品種は『株張り型』といい、茎が立たず株が張る(広がり気味の形になる)ことが由来です。株ごと抜き取って出荷する根つきタイプで、葉が柔らかめなのが特徴です」(北野さん)
「関西で春菊を菊菜と呼ぶのは、葉の形が菊の葉に似ていることからとか、葉茎(ようけい)を『菜(な)』として食べるからといわれています。
呼び名はいずれも菊にちなみますが、その他にも地域によってさまざまで、美濃(岐阜県南部)では『薩摩菊』、讃岐(香川県)では『りゅうきゅうぎく』、阿波では『おらんだぎく』、肥後(熊本県)では『きくなでしこ』や『ふだ草』とも呼ばれるそうです。
ほかにも『不断菊(ふだんぎく)』『はるぎく』『六月菊』、中国・朝鮮半島から渡来したので『高麗菊』の名もあります。一年中、発芽・成長することから『無尽草(むじんそう)』とも呼ばれます。
呼び名だけでなく、関東と関西では栽培される種類も異なるのです。春菊は千葉県、群馬県、大阪府、兵庫県、福岡県などの大都市近郊が主産地で、種類は葉の大きさによって大葉種、中葉(ちゅうば)種、小葉種に大別されます。全国的に栽培されているのは、葉が薄くて切れ込みが少ない中葉種です。
関東を中心に栽培される品種は『株立ち型』といい、株立ちした茎葉を順次摘み取って出荷するタイプです。葉の切れ込みが深めなのが特徴です。これに対し、関西で栽培される品種は『株張り型』といい、茎が立たず株が張る(広がり気味の形になる)ことが由来です。株ごと抜き取って出荷する根つきタイプで、葉が柔らかめなのが特徴です」(北野さん)
濃いめの味付けにオススメ
「関西では菊菜は鍋料理に欠かせない青野菜で、ほとんどすべての鍋に入れます。菊のような独特の香気を楽しむため、醤油や味噌などを使って濃いめの味付けをするすき焼き、鶏すき焼き、あんこう鍋や、野生肉がメインのぼたん(イノシシ)鍋や鴨鍋に入れると、よりおいしく感じられます。
さっと茹でて胡麻(ゴマ)や豆腐の和え物やお浸しにすることも多く、とくに関西の菊菜は葉が柔らかくアクが少ないので、生のままサラダにしてもおいしい食材です」(北野さん)
さっと茹でて胡麻(ゴマ)や豆腐の和え物やお浸しにすることも多く、とくに関西の菊菜は葉が柔らかくアクが少ないので、生のままサラダにしてもおいしい食材です」(北野さん)
栄養価は主役級?
春菊には、緑黄色野菜のなかではトップクラスの栄養成分が含まれているそうです。その点については、野菜ソムリエプロの吉田謹子さんに伺いました。
「春菊には抗酸化作用があり、体内でビタミンAに変わるβ(ベータ)カロテン、皮膚や粘膜の健康を保って風邪の予防にも大きな役割を果たすビタミンC、骨の形成に必要なカルシウム、貧血予防に役立つ鉄分、とくに妊娠初期の女性に大切な葉酸などが豊富に含まれています。
春菊の独特な香りの成分はペリルアルデヒドといい、免疫力を高めたり胃腸の調子を整えたり、咳(せき)を鎮めたりする効果さえあります。“春菊のクセは苦手”という方も少なくないようですが、栄養価に富んだ野菜なので積極的に食べてほしいと思います」(吉田さん)
春菊は鍋物に緑の彩りとワンポイントの苦味を加えるだけの“脇役”でなく、単独でもおいしく栄養価の高い食材であることがわかりました。旬を迎えた冬の時季、春菊をさまざまな形で味わってみてはいかがでしょうか。
» お天気ニュースをアプリで見る
「春菊には抗酸化作用があり、体内でビタミンAに変わるβ(ベータ)カロテン、皮膚や粘膜の健康を保って風邪の予防にも大きな役割を果たすビタミンC、骨の形成に必要なカルシウム、貧血予防に役立つ鉄分、とくに妊娠初期の女性に大切な葉酸などが豊富に含まれています。
春菊の独特な香りの成分はペリルアルデヒドといい、免疫力を高めたり胃腸の調子を整えたり、咳(せき)を鎮めたりする効果さえあります。“春菊のクセは苦手”という方も少なくないようですが、栄養価に富んだ野菜なので積極的に食べてほしいと思います」(吉田さん)
春菊は鍋物に緑の彩りとワンポイントの苦味を加えるだけの“脇役”でなく、単独でもおいしく栄養価の高い食材であることがわかりました。旬を迎えた冬の時季、春菊をさまざまな形で味わってみてはいかがでしょうか。
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参考資料など
『たべもの語源辞典』(清水桂一編/東京堂出版)、『日本の食文化史年表』(江原絢子 東四柳祥子 編著/吉川弘文館)、『飲食事典』(本山荻舟/平凡社)、『なにわ大阪 食べものがたり』(上野修三/創元社)、『食材図典』(小学館)