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秋こそ浴びたい!? 太陽光の3つのパワー

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2021/10/15 04:00 ウェザーニュース

東日本から西日本にかけて長く続いた暑さもようやく落ち着きを見せ、日照時間が短くなるにつれて本格的な秋の気配が漂ってきました。日照時間、つまり太陽光を浴びられる時間の減少は農作物などはもとより、私たち人間の体にも大きな影響を与えるといいます。

秋から冬にかけてこそ十分に浴びておきたい“太陽光がもつ3つのパワー”とその効用について、横浜鶴見リハビリテーション病院(横浜市鶴見区)の吉田勝明院長に伺いました。

(1)ビタミンDの生成

月あたり日照時間の平年値(1991~2020年)は東京でみると、8月の174.2時間に対して10月は129.4時間と大きく減少しています。このことが体に与える影響には、どんなものが考えられるのでしょうか。

「日照時間が短くなることで、日光に当たってつくられるビタミンDが不足する可能性があります。皮膚にUV-B(紫外線B波)が照射されるとビタミンDが皮下でつくられるのです。

ビタミンDはカルシウムの吸収を促進し、骨の形成や筋力を高める効果が広く知られていますが、その他にも感染症などの予防にも働いているといわれています。

例えば、インフルエンザが例年冬に流行するのは低温と乾燥が大きな原因ですが、ビタミンDが不足することも理由のひとつと考えられているのです。

日本ビタミン学会は、魚類などの食事やサプリメントからのビタミンD接種に加えて、免疫力を高めるために適度な日光浴を推奨しています。感染症が流行しやすい冬季は、皮膚の露出が少なくなることも考え、1日1時間程度を目安にしてください」(吉田院長)

(2)セロトニンの分泌

秋になると気分が落ち込んだり朝起きるのがつらかったり、昼間もだるさが続いたりといった傾向が生じる人も少なくないようです。

「秋から冬にかけての日照時間の減少が一因となって季節性うつ病を患う人がいます。

太陽光を浴びると“幸せホルモン”とも呼ばれる脳内物質、セロトニンの合成が盛んになり気分が高揚します。ところが昼間の時間が短く太陽光も弱くなる秋から冬にかけては、セロトニンの合成が低下して気分が沈んだりやる気が失われたりするのです。

一方で日照時間が延びる春になったとたん、元気を取り戻す人は少なくありません。

季節性うつ病治療用の光照射装置も市販されていますが、朝の散歩で太陽光を浴びることで大きな効果が生じます。朝日の照度は1万ルクス、曇った朝でも5000ルクスあり、セロトニンの分泌を促進するのに十分です。

落ち込んだ気分を引き上げたいなら、毎日、戸外で太陽の光を15分〜30分浴びることをオススメします」(吉田院長)

(3)生活リズムの向上

睡眠の質の低下や生活リズムの乱れにも太陽光の存在がかかわっているそうです。

「日照時間が短くなる秋は、不眠症を訴える人が増加する傾向にあります。人の体は朝、太陽光を浴びると体内時計がいったんリセットされ、およそ15時間後に“睡眠ホルモン”と呼ばれるメラトニンの分泌が高まって眠くなるようにできています。

目覚めた朝に太陽光を浴びることは、夜の寝つきをよくして眠りの質を高めるのにも役立っています。気分を引き上げるだけでなく、生活リズムを乱さないためにも、できるだけ朝の光を浴びるようにしてください」(吉田院長)

“浴び過ぎ”には注意

体の良好な働きに影響を及ぼす太陽光ですが、もちろん“浴び過ぎ”は禁物です。

「太陽光に含まれる紫外線を浴び過ぎるとシミ、そばかすなどの色素沈着を進ませ、肌の老化や皮膚がんの発生にもつながります。また、アトピー性皮膚炎の方や蕁麻疹が出ているときも、太陽光を浴びるべきではありません。メリットとデメリットを理解して、上手に付き合うようにしてください」(吉田先生)

季節外れの暑さも落ち着き、ようやく秋らしい気候となりました。これからインフルエンザなどの感染症が気がかりな時期となります。身体と気持ちに好影響を与える太陽光を適度に浴びながら、より快適に秋を過ごしましょう。
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