旧暦五月の梅雨時に、清少納言がしたこと
以下は『枕草子』の原文です(現代訳は原文のあとにあります)。「五月」という言葉が出てきますが、これは旧暦で、現代でいうと、ほぼ六月に相当し、梅雨の時季にあたります。
五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉(くさは)も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとたたざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などの歩むに走りあがりたる、いとをかし。
左右(ひだりみぎ)にある垣(かき)にあるものの枝などの、車の屋形(やかた)などにさし入るを、急ぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いと口惜しけれ。
蓬(よもぎ)の、車に押しひしがれたりけるが、輪(わ)の回りたるに、近ううちかかりたるも、をかし。
五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。草葉(くさは)も水もいと青く見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとたたざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などの歩むに走りあがりたる、いとをかし。
左右(ひだりみぎ)にある垣(かき)にあるものの枝などの、車の屋形(やかた)などにさし入るを、急ぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いと口惜しけれ。
蓬(よもぎ)の、車に押しひしがれたりけるが、輪(わ)の回りたるに、近ううちかかりたるも、をかし。
「水が跳ね上がるのも、おもしろいね」
現代文にするとどうなるでしょうか。言葉を補って、少しポップに意訳してみます。
五月ごろ、山里に出かけるのは、すごくおもしろいよ。あたり一面、草木の葉っぱが生い茂っているところを、牛車でまっすぐ進んでいったの。そうしたら、下にはきれいな水がたくさんあってね。深くはないけれど、従者たちが歩くと、水が跳ね上がったの。とてもおもしろかったわ。
道の左右にある生け垣の枝が牛車のすき間から入ってくるのを、急いでつかんで、折ろうとしたの。でも、牛車は前に進んでいるから、スッと行きすぎてしまう。つかめないのよ。ほんとう、悔しいわ。
牛車を走らせていると、牛車がヨモギを押しつぶすでしょ。車輪が回ると、ヨモギがプンと香るの。これも趣があって、楽しいわね。
五月ごろ、山里に出かけるのは、すごくおもしろいよ。あたり一面、草木の葉っぱが生い茂っているところを、牛車でまっすぐ進んでいったの。そうしたら、下にはきれいな水がたくさんあってね。深くはないけれど、従者たちが歩くと、水が跳ね上がったの。とてもおもしろかったわ。
道の左右にある生け垣の枝が牛車のすき間から入ってくるのを、急いでつかんで、折ろうとしたの。でも、牛車は前に進んでいるから、スッと行きすぎてしまう。つかめないのよ。ほんとう、悔しいわ。
牛車を走らせていると、牛車がヨモギを押しつぶすでしょ。車輪が回ると、ヨモギがプンと香るの。これも趣があって、楽しいわね。
「それいけ、牛車!」と叫んでいた?
梅雨時も「雨って、イヤねー」などとありきたりなことを言わずに、牛車でのドライブを楽しんでいた様子がうかがえますね。
「行っちゃえ、牛車!」
「それいけ、牛車!」
今風に言うと、清少納言はこんなふうに叫んで、右手を突き上げていたのかも? もちろん、勝手な想像ですが、そうしたイメージを膨らませながら、古典文学を読むのも楽しいものです。
雨の日は腰が重くなりがちですが、小雨程度であれば、外に出て、雨天ならではの草花や町の様子を感じたり観察したりしてみるのも「いとをかし」かもしれませんね。
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「行っちゃえ、牛車!」
「それいけ、牛車!」
今風に言うと、清少納言はこんなふうに叫んで、右手を突き上げていたのかも? もちろん、勝手な想像ですが、そうしたイメージを膨らませながら、古典文学を読むのも楽しいものです。
雨の日は腰が重くなりがちですが、小雨程度であれば、外に出て、雨天ならではの草花や町の様子を感じたり観察したりしてみるのも「いとをかし」かもしれませんね。
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参考資料など
『枕草子 いとめでたし!』(著者/天野慶、監修/赤間恵都子、絵/睦月ムンク、朝日学生新聞社)、『枕草子 ビギナーズ・クラシックス』(編集/角川書店、角川書店)、『新版 枕草子 下巻』(訳注/石田穣二、角川書店)