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アメンボの不思議 どうやって浮く?実は空を飛ぶ?

2021/06/07 06:00 ウェザーニュース

梅雨の晴れ間に歩いていると、できたばかりの水たまりの上でアメンボが泳いでいるのを見ることがあります。このアメンボたちは、いったいどこから来るのでしょうか。

気になって注意してみると、これからの季節、町中の公園の池、田舎の小川や沼などでもアメンボの姿を見かけます。水の上で暮らすアメンボは、どのように移動し、何を食べて生きているのでしょうか。

小樽総合博物館の学芸員山本亜生さんに、アメンボの秘密を教えていただきました。

水のある場所を探して空を飛ぶ

稲や野菜の害虫で、イヤな匂いのするカメムシという昆虫がいます。アメンボは、カメムシの仲間なのだそうです。カメムシとは逆に、アメンボはいい匂いがするので、ちょっと不思議な気がします。

アメンボをつかまえて鼻を近づけると、かすかに飴のような匂いがすることから「飴ん坊」と呼ばれるようになったそうです。

「日本には約30種類のアメンボがいます。大きくて脚が長いナミアメンボは沼や池などの開放的な場所を好み、小型のヒメアメンボは山奥の湿原から道端の小さな水たまりまで幅広く生息します。地域にもよりますが、梅雨明けの水たまりで見かけるのは、ヒメアメンボか、本州では山間部に多い中型のコセアカアメンボだと思います。

また、水の上しか移動できないと思われがちですが、実はアメンボの背中には折り畳まれた翅(はね)があって、水があるところへ飛んでいきます。一般的に5月頃に卵から孵(かえ)って脱皮を繰り返し、夏には成虫になっています。アメンボを探すには、これからの季節が最適です」(山本さん)

アメンボが水に浮くしくみ

アメンボの脚の先端。水をはじくための短い毛が密生し、水面の揺れなどを感じる長い感覚毛が数本ある。太い鎌状のものは爪(画像提供/山本亜生氏)
アメンボには6本の脚があります。前の2本が短く、後ろの4本が長いのが特徴です。特に真ん中の2本は体長よりはるかに長く、これをボートのオールにように使って推進力をつくっているそうです。

水面に置いた6本の脚で体を支え、胴体は完全に水上に浮かせてスイスイ泳ぐ姿は、つい見とれてしまいます。アメンボはどうやって水に浮いているのでしょうか。

「アメンボの脚には、細かい毛が密集しています。この毛が水をはじくのです。ワックスのようなロウ状の成分が分泌され、それを脚に塗ることによって浮力を維持しています」(山本さん)

よくアメンボが脚をスリスリする姿を目撃しますが、これは分泌したワックスを脚に塗り付けているのだということがわかりました。

肉食で獰猛(どうもう)な餌のとり方

ところでアメンボは、何を食べて生きているのでしょうか。

「アメンボは完全な肉食で、水に落ちた小さな虫などを捕食しています。たとえばハエが水面に触れると、表面張力で水がくっついて動けなくなるのです。それを波動で感じて近寄り、針のような口で刺して体液を吸ってしまいます」(山本さん)

正確には「体外消化」といって、ストロー状になった口から消化液を出し、虫の体の組織を溶かして吸い出すのだそうです。かわいらしい姿に似合わない、獰猛な餌のとり方に驚かされます。

アメンボはいつ頃まで見られ、秋以降はどうしているのでしょうか。種類にもよりますが、基本的に1年1世代のアメンボは、秋が深まると落ち葉の下などで越冬します。春になると水辺に戻ってきて交尾し、産卵して一生を終えるのです。

目撃できるのは、交尾する春先から姿を隠す秋まで。交尾のときは水面に雌と雄が重なっても沈まないといいますから、水に浮く力は相当強いようです。

そんな不思議な昆虫、アメンボ。梅雨の晴れ間に水たまりを見つけたら、ユニークな生態をしっかり観察してみませんか。

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